2019年5月に金融庁のワーキンググループが発表した老後資産に関する資料(「高齢社会における資産形成・管理」)は、私たちに衝撃を与えました。現状を鋭く分析しているだけでなく、多くの人が「老後資金2,000万円不足」に陥るという結論は、年金財政への不安をさらに煽ることになりました。

しかしそこに書かれている内容は、私たちが取り組むべき課題そのものです。今後はさらに高齢化が進むため、誰もがマネーリテラシーを身に着ける必要があると言えるでしょう。本稿では、マネーリテラシーと資産管理の基本について考えていきます。

高齢化が金融に与える影響

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(画像=safriibrahim/Shutterstock.com)

日本では少子高齢化が進んでおり、「少子化による生産年齢人口の減少(担い手の減少)」と「高齢化による年金受給者の増加(支えられる側の増加)」という2つの理由で財政的に厳しくなることが予想されています。神輿に乗る人は増えているのに、神輿の担ぎ手は少なくなっているのです。

現役世代が年金受給世代を支えている現行の「賦課方式」は、その屋台骨が崩れつつあります。この先、短期間で状況が好転することは考えにくいため、年金財政の抜本的な見直しが必要になるでしょう。

高齢者に焦点を当てると、認知症患者の増加も懸念されています。金融資産を適切に管理するためにも、マネーリテラシーの向上が求められているのです。

高齢社会における資産管理の基本

今後さらに厳しさを増す日本の高齢社会において、私たちはどのように資産管理を行っていけばいいのでしょうか。大切なのは、自分自身で適切に対処していくことです。そのポイントとして、「ライフステージごとの支出と収入を把握する」「退職金の使途を計画する」「資産形成に関する知見を向上させる」の3点が挙げられます。それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。

ライフステージごとの収入と支出を把握する

ライフステージとお金について考えるとき、最初に検討しておきたいのは「老後資金」です。老後資金がどのくらい必要かを計算し、そのうえで収入と支出のバランスを整えていけば、計画的な資産管理ができるようになります。老後資金から逆算して、結婚資金や出産・子育て、住宅購入、教育資金など、ステージごとに必要になるお金についてもある程度の目途をつけておきましょう。

退職金を計画的に投資する

まとまった収入となる退職金については、使途を明確にしておく必要があります。ローン返済の一部に充当する人も多いと思いますが、より豊かな老後生活を実現するためには、計画的に投資していくことも検討すべきです。比較的リスクが少ない債券や投資信託で運用することで、リスクを抑えつつお金を増やすことができます。年金財政が厳しい現状を考えると、ローン返済や貯蓄に回すより、積極的に投資するほうがいいかもしれません。

押さえておきたい資産形成の要点とは

退職金を含めた老後の資産状況と、ライフステージごとの収入と支出を把握しておけば、日常的なお金の使途も見えてきます。20代や30代のうちからコツコツと積立投資を続けていけば、複利効果を得ながら資産を育てられます。最近では「つみたてNISA」「iDeCo(イデコ)」など、税制上優遇される金融サービスが提供されています。それらを活用し、資産形成に関する知見を高めていきましょう。

社会の変化に合わせた適切な資産管理を

社会の変化に合わせて、資産管理に対する姿勢も変えていかなければなりません。日本で少子高齢化が進んでいることは明らかなので、今からできる準備を始めなければなりません。資産を適切に運用できるマネーリテラシーを身に着けておけば、将来の不安を解消することにもつながります。日常生活の中でお金について学びながら、資産運用・管理を実践しつつ、マネーリテラシーを高めていきましょう。(提供:Wealth Road