不動産を子どもなどに贈与したい場合に、問題となるのが贈与税です。資産額によっても異なりますが、税率だけを見比べると相続税率のほうが贈与税率より低いケースが多いため、「不動産を受け渡すなら贈与よりも相続で」と考えるのが一般的です。しかし、贈与税の負担を軽減しつつ不動産を贈与する方法はいくつかあります。

不動産に関わる相続税と贈与税の違い

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(画像=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)

不動産の贈与にかかる贈与税は高い

相続税と比べて贈与税が高い理由は、基礎控除額の差です。相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。基礎控除額が大きいため、ある程度の評価額の財産を相続したとしても、相続税がかからないことがあります。

これに対して贈与税は、基礎控除額が年間110万円で、税率は最高55%。このため、高額な資産である不動産を贈与しようとすると、どうしても贈与税の負担が大きくなります。例えば、評価額2,000万円のワンルームマンションを贈与しようとすると、一般贈与(子供や孫以外への贈与)の場合で約695万円もの贈与税が発生します。

これは、贈与された人にとっても大きな負担です。さらに贈与で不動産を取得した場合は、不動産取得税も発生します。

安く売却しても贈与税はかかる

「タダであげると贈与税がかかるなら、安く売却すればいいのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、そううまくはいきません。不動産を売却した場合でも、それが「著しく低い価額での取引」だと「みなし贈与」として扱われ、贈与税の支払い義務が生じるからです。

例えば、評価額2,000万円の物件を500万円で売却した場合、差額の1,500万円は贈与したものと見なされて、その分に贈与税がかかってしまうのです。

贈与税を抑えて不動産を生前贈与する具体的な4つの方法

不動産を贈与することは現実的ではないのかといえば、そうとも言い切れません。条件によっては、贈与税を抑えつつ不動産を贈与する方法があります。

①配偶者なら最大2,000万円の控除がある

例えば、配偶者への贈与です。婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産や不動産購入資金の贈与が行われた場合は、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円までの配偶者控除が利用できます。居住用不動産とは、贈与を受けた人が住むための不動産を指します。

「夫婦間で居住用不動産を贈与したい」といったケースはあまり多くないでしょう。しかし、現在夫の名義となっている不動産の一部を妻に贈与し、夫婦の共有名義にするといったケースではこの特例が活用できるでしょう。ちなみに、この特例が利用できるのは、一組の夫婦につき一生に一度です。

②相続時精算課税制度を使う

生前に不動産を引き継ぐ際、現実的に使えるのが「相続時精算課税制度」です。簡単に言うと、子どもや孫などに生前贈与した場合、2,500万円までは贈与税がかからない(2,500万円を超えた分の税率は一律20%)という制度です。

ただし贈与者が亡くなった時は、「相続時精算課税制度」を使って贈与した財産が相続財産として加算され、改めて相続税の計算をすることになります。平たく言えば、「贈与した時は贈与税を払わなくていいから、将来相続財産として再計算して相続税を払ってね」という制度です。

この制度を使えば、贈与税の支払いを抑えつつ不動産を生前贈与することができます。これは、高齢者から若者への財産移転を促すための仕組みと言えます。

③毎年110万円ずつ不動産購入資金を贈与する

直接不動産を渡すのではなく、不動産購入資金を少しずつ贈与する方法もあります。贈与税には年間110万円の基礎控除があるので、この基礎控除を超えないように、不動産購入資金を毎年分割して贈与していくのです。10年続ければ1,100万円ですから、中古の投資用ワンルームマンションなら買えるかもしれません。

ただしこの方法は「定期贈与(約束した年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたもの)」と見なされて贈与税がかかる場合があるため注意が必要です。

④「住宅取得資金等の贈与税の非課税の特例」を使う

マイホームの購入資金を贈与する場合は、「住宅取得資金等の非課税の特例」という有利な制度があります。父母や祖父母などから子や孫へマイホームの新築や購入資金を贈与する場合、最高3,000万円までが非課税になるという特例です(非課税限度額は下記の表を参照)。ただし、贈与を受ける者は20歳以上であること、所得が2,000万円以下であることなどの条件があります。

非課税限度額

住宅用家屋の新築等にかかる契約の締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
2019年4月1日~2020年3月31日3,000万円2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日1,500万円1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日1,200万円700万円

情報を整理して活用しよう

贈与税にも様々な特例があり、賢く活用することで負担を軽減することができます。きちんと情報を整理し、ご自身の状況に適した方法で資産を引き継ぐことをおすすめします。(提供:相続MEMO


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