不動産投資を始めると給与収入以外の所得が発生するため、確定申告を行う必要があります。確定申告の際に減価償却費という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。減価償却費は、不動産投資においては非常に重要な経費であり、減価償却費がないと多額の税金が発生する可能性があります。今回は、この減価償却費の仕組みや節税効果について解説します。
減価償却費の仕組みと計算方法
まず、減価償却費の基本的な概念から解説します。減価償却費は、購入した建物の価値が経年により減価していく金額を費用として計上するものです。実態の経年劣化のスピードと税務上の耐用年数は異なりますが、構造別の経済的耐用年数は以下のように定められています。
・構造別の経済的耐用年数
RC造:47年
重量鉄骨造:34年
軽量鉄骨造:19年
木造:22年
例えば、新築のRC造のマンションを購入した場合、1年あたりの減価償却費は、建物価格×1年÷47年(耐用年数)となります。また、新築の場合は、耐用年数を基に減価償却費を算定しますが、中古物件の耐用年数は以下の数式で求めることが可能です。
・本来の耐用年数-(経過年数×0.8)=中古物件の耐用年数
1つ例を出すと、築20年のRC造中古物件を購入した場合の耐用年数は、以下の通り求められることになります。
・47年-(20年×0.8)=31年
また、建物は減価償却費を計上することができますが、土地は時間の経過による価値の減少がないという税務上・会計上の考え方により、土地に対しての減価償却費はありませんのでご注意ください。したがって、物件総額が4億円だとすると建物価格が2億円の場合と、2億円の場合ではその後、経費計上できる減価償却費の金額は異なります。
減価償却償却費は節税のポイント
次に、減価償却費と節税についてです。購入した建物の金額については、上記の通り、税務上一定期間損金として費用計上することができます。つまり、実際のキャッシュアウトを伴っていないのに、損金算入することで、利益を圧縮する効果があり、減価償却費は節税効果があると捉えられています。ただし、減価償却費は多ければ多いほど良いということではありません。
確かに、1年間ごとの減価償却費を増やすことは、その年の税金を減らすことにつながるという意味で節税効果があります。しかし、減価償却費を多くとるということは、その分税務上の建物価格が減少していくスピードが早くなるということです。売却時には売却価格から簿価を引き、その差額に対し譲渡所得税が発生します。
つまり、物件保有中に多くの減価償却を引き、簿価が低くなればなるほど、売却価格との差額が大きくなる傾向があるのです。そのため、将来売却する際に計上される売却益も大きくなり、将来の売却時に支払う税金が多くなる場合もあります。また、将来的に銀行からの借り入れを増やし、事業規模を拡大していきたい場合もあるでしょう。
その場合は、減価償却費を多く計上していることによって、毎年赤字になっていると金融機関に対する印象が悪くなる可能性があります。融資の条件が悪くなったり、融資承認がとりにくくなったりすることもあるため注意が必要です。したがって、減価償却費は将来的な出口戦略や規模拡大のスピードなどを考慮して、金額を決めたほうがよいでしょう。
減価償却費はいったん耐用年数を決めてしまうと、そこから変更することは難しいです。そのため、初期設定時は専門家からアドバイスをもらいながら決定していくのがよいでしょう。(提供:ユニバーサルトラスト)
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