昨年6月、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』が公表されました。いわゆる「老後2000万円問題」で話題となった報告書と言ったほうが分かりやすいかもしれません。当時はテレビや新聞等のマスコミがこぞって「老後2000万円問題」を取り上げましたが、この報告書で注目すべき点は他にもあります。たとえば、この報告書では「2035年には有価証券の5割を70歳以上の高齢者が保有(金融資産の高齢化)」するリスクについても言及しています。
実際問題として「金融資産の高齢化」は様々なリスクを内包しています。その一つが認知症リスクです。認知症になると金融機関等の口座等が凍結され、自由に動かせなくなるリスクが高まります。経済を人間の身体にたとえると、お金は血液のような役割を果たしていると考えられますが「認知症による口座凍結」で株式や不動産等の売買が出来なくなるケースが相次げば、日本経済に深刻な影響を及ぼすことにもなりかねません。
ちなみに、厚生労働省は2025年に認知症患者数が700万人前後に達し、65歳以上の約5人に1人を占めるようになると推計しています。「認知症で口座が凍結」されるリスク(認知症リスク)は誰にでも起こり得ます。それは富裕層であっても例外ではありません。たとえ金融資産を1億円以上保有していたとしても認知症リスクから逃れることは出来ないのです。
そうした中、高齢化社会の様々な問題を解決するための「金融ジェロントロジー」と呼ばれる研究も盛んです。金融審議会市場ワーキング・グループ報告書で浮き彫りとなった「金融資産の高齢化」。今回はこの問題にも関わる金融ジェロントロジーについてお届けしましょう。