消費税や社会保険料などの支払いは増える一方で、収入は横ばい状態が続き、将来の見通しが立たない昨今。老後に向けて、どんな対策をしたら良いか分からない……そんな漠然とした不安はありませんか。今後、必要となる家計資産や今からできる老後資金づくりについて考えていきます。

老後は2,000万円不足する?

じぶん銀行
(画像=PIXTA)

先日、金融審議会市場ワーキング・グループがまとめた報告書が発表され、「老後は30年で2,000万円の資金取り崩しが必要となる」という内容であったことが話題となりました。2,000万円の根拠となる数字は、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の実収入20万9,198円に対して実支出が26万3,718円となっており、毎月5万4,520円の赤字が発生することから計算されています。(5万4,520円×12ヵ月×30年=1,962万7,200円)

しかし、生活費の内訳を見ると住居費が約1万3,000円となっていますので、老後に住宅ローンの支払いが残っていたり家賃の支払いがあったりする場合は、さらに赤字が膨らむことが想定できるでしょう。また、2018年の総務省統計局の「家計調査」によると、2人以上の勤労世帯の実支出は約41万8,000円でした。

金融庁が発表した報告書にあるように老後の実収入20万9,198円で生活をまかなうなら、老後は支出を2分の1程度に減らして生活をする必要があるようです。20~30代世代が老後を迎えるころには、もらえる年金が少なくなるなど、さらに厳しい環境となると予想されるので、老後資金として2,000万円準備できたとしても十分ではない可能性が考えられます。

20~30代の老後はどうなる?

100歳まで生きる人が半数といわれている20~30代の老後を例として考えてみましょう。2019年6月11日に行われた経済財政諮問会議では、老齢年金の繰り下げ受給年齢を70歳以降にも選択できるように(現状では70歳まで)議論が行われ、年金の受け取りは65歳ではなく70歳が常識となる日が来るかもしれません。

その代わり、在職老齢年金制度の廃止も検討されています。在職老齢年金とは、年金を受け取りながら厚生年金の被保険者として働いている場合に、ある一定の金額を超えると年金の一部または全部が支給停止になる制度です。現役時代に資産を増やすことも大切ですが、できるだけ長く働くことで家計の赤字を食い止めることも重要になるかもしれません。

企業の退職金は、厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、2008年に大卒の定年退職者(勤続20年以上かつ45歳以上)の退職金が2,280万円だったのに対して2018年には1,983万円と約300万円減っています。退職金制度がない企業も約2割あることから、自助努力が求められるようになっています。

老後にどう備える?具体的な対策は?

ここまでは、統計をもとに「平均的な」数字を解説してきましたが、「自分の」プランを立てることが大切です。「住宅ローンを65歳までに完済するために、繰り上げ返済用の貯蓄をする」「月に1万円を捻出して、老後用の資金に回す」など、具体的な目標を立てて家計を見直す必要があります。老後に必要な生活費が人それぞれです。

車の有無でも支出はずいぶんと違います。まずは、老後にどんな生活をするか、「未来の家計簿」をつけてみると良いですね。仮に現35歳の人が65歳から90歳まで生きると仮定して2,000万円不足が発生するとなれば、今から年間66万円を貯めていく必要があります。(2,000万円÷30年≒66万円)また、お金を貯めることだけでなく「収入を減らさないこと」を目標とすることも対策の一つといえるでしょう。

年金や貯蓄だけに頼らず、スキルアップや健康維持をして働き続けることも、資産づくりの一つです。最近では、ベンチャー企業だけでなく大手の老舗企業も副業を認める動きになっています。実際に副業を始める人は、まだ少ない傾向ですが20~30代のうちに副業スキルを身につけられると良いですね。現状を悲観することなく、冷静にシミュレーションしていくと、道は見えてきます。

人生100年時代といわれる今、20~30代の方は人生の序盤にいます。これからの人生のほうが長いのです。老後の問題を先延ばしにせず、今からできることを始めてみてはいかがでしょうか。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャルプランナー)

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