2019年の海外ニュースでは「香港」というキーワードは毎日のように目に入ってくるほどたくさんの報道がありました。2019年12月時点で香港情勢は刻一刻と変化を続けていますが、情勢が落ち着く気配は見られません。いったい香港で何が起きていて香港情勢が長期化することによってどんな影響が出るのでしょうか?
そこで本記事では、すでに香港だけでなく世界を巻き込むこの問題を投資家目線で知っておきたいポイントについて解説します。
香港で何が起きているのか?
香港の問題は2019年が初めてではなく2014年の「雨傘革命」など以前から民主化を求める民意はくすぶり続けていました。2019年に起きたデモの直接的な発端は、逃亡犯条例という香港の法律にあたる規則の改正案です。逃亡犯条例改正案では香港で逮捕された容疑者を中国本土に移送することができるようになります。
そのため「中国共産党による作為的に条例の濫用が起きるのではないか」という懸念から条例案の撤回を求める大規模なデモに発展しました。その後、条例改正案は正式に撤回されます。しかし香港警察の行き過ぎた取り締まりなどもあって市民の不満は増大し「五大要求」という香港民主化の5項目にわたる要求を掲げたデモ活動は続きました。
双方の行動がエスカレートする形で警察官がデモ隊の一人を銃撃するなど暴力的な衝突まで勃発します。中国共産党と香港政府、香港民主派、さらには香港人権法という法律を成立させたアメリカなど当事者も多いのが特徴です。事態が混迷を深めるにつれて同時に世界有数の金融センターとしての地位を確立している香港の今後と影響が懸念されています。
香港デモ発生後に見られる主な影響
香港の主たる産業は「金融」です。世界の有力銀行が軒並み店舗を構え、IPO(新規株式公開)による資金調達額が2018年1~9月で約2,400億香港ドル(約3兆4,000億円)となり世界一になるなど高い地位を誇ります。香港は中国の領土であり中国の一部ですが、イギリス統治時代から発展を続けてきた金融産業を武器に世界的な知名度を持つ国際都市でもあるのです。
これだけの高い経済価値を持つ香港ですが、2019年はたび重なるデモや暴力的な衝突の影響を受けてしまい経済はリセッション(景気後退)に入っています。2019年第3四半期の経済成長率は前期比マイナス3.2%であり、これまで好調を維持してきた香港経済に暗い影を落としているのです。世界一の調達額を誇っていたIPOについてもデモ影響から遅延が相次ぎ資金調達先として香港以外の都市を検討する企業が増加することは避けられません。
香港情勢が世界経済のリセッションを引き起こす可能性
香港がこれまで果たしてきた役割や国際的な地位を考えると香港経済のリセッション入りやIPO遅延は香港だけの問題にとどまらず世界経済への悪影響が懸念されます。また一連の事態で当事者でもある中国とアメリカは貿易戦争の真っただ中です。また2019年11月27日にはアメリカで香港人権法が成立し、中国はこの動きに対して「内政干渉である」と反発をしています。
この対立が先鋭化するほど世界経済は不安定になり投資マネーはリスクオフに流れるでしょう。「リスクオフになると株安と円高になる」という相関関係が長らく続いているため、香港情勢がこうした動きの引き金になることは否定できません。
世界は香港情勢を注意深く見守っている
2019年11月24日に香港では区議会議員選挙が行われ民主派の圧勝に終わります。興味深いのは、選挙後の翌日のハンセン指数(香港の株価指数)が1.5%上昇したことです。それまで香港情勢でネガティブなニュースが流れるたびにハンセン指数や香港ドル相場は下落していました。そのため選挙結果を受けてのハンセン指数の上昇は「世界の投資家は香港の自由民主化を求めている」というメッセージとも解釈できます。
今後も香港では目まぐるしく情勢が変化してくことが予想されるでしょう。投資家がしっかりと押さえておきたいのは「ポジティブなニュース=株高・リスクオン」「ネガティブなニュース=株安・リスクオフ」という大きな相関関係です。日頃から情勢の変化に留意し臨機応変に対応できるように準備しておくことが大切ではないでしょうか。(提供:Incomepress )
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