遺言では自身の死後に「誰にどの財産を相続させるか」などさまざまな遺産分割の方法を記すことが可能です。「相続分の指定」を行うこともできますが今回はどのような方法で指定をするのかなど概要について解説します。
相続分の指定とは
遺言書では「甲にA土地を相続させる」「乙に有価証券を相続させる」といった特定の相続人などに特定の財産を相続させる旨を記載することが可能です。また「甲・乙・丙それぞれに遺産の3分の1を相続させる」「甲に50%、乙に30%、丙に20%の財産を相続させる」といった法定相続分の割合とは異なる相続分の割合を指定することもできます。相続分の指定を第三者に委託する旨の遺言を作成することも可能で、民法第902条2項では、相続人全員の相続分の指定がされなかった場合、指定されなかった相続人の相続分は法定相続分となるということが定められています。
相続分の指定がされなかった相続人の遺留分が侵害されている場合には、遺留分侵害額の請求を行うことが可能です。
“民法
第九百二条 被相続人は、前二条の規定(※法定相続分と代襲相続人の相続分に関する規定です)にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める”
出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)
債務がある場合はどうなる?
相続分の指定がされた場合、その割合に従って財産を相続しますが相続債務についてもその割合だけ相続することになります。ただし債権者に対してはこの相続分の指定の効力はなく各相続人に対して法定相続分に応じて請求することが可能です。これは債権者の権利の保全を目的としたものです。なお債権者が指定相続分に応じた債務の承継を認めた場合にはこの限りではありません。債権者はどちらかの方法で債権を回収することができます。
“民法
(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
第九百二条の二 被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない”
出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)
実際に遺言書を作成する場合には
相続分の指定がされた場合には、各相続人が相続する財産の割合は決まっていますが、具体的にどの財産を相続するかは決まっていません。この時点で相続財産は各相続人共有の状態となっています。
“民法
(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する”
出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)
このような遺言書がある場合には、各相続人は指定相続分に応じて遺産分割協議を行うことが必要です。そのため財産の内容によっては指定相続分通りに分割することが難しく話し合いがまとまらない可能性もあります。円滑な相続が行われない可能性があり相続人間の争いのもとになるため、実際に作成される遺言ではこのような相続分を指定する内容で作成されることはあまりありません。
実際には特定の財産を特定の相続人に相続させる旨を記した「特定財産承継遺言」が作成されることが多く、そのほうが相続人へスムーズに財産を承継できる可能性が高くなります。遺言書の書き方によっては残された相続人間の遺産分割に影響してきますので注意が必要です。(提供:相続MEMO)
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