まずは下記のチャートを見て欲しい。これはある実在する投資信託の直近一年間の基準価額と純資産額の推移を示したものだ。実線が基準価額、青い面積が純資産額となっている。

投資信託,買い方

ご覧の通り、純資産額は1年前の2019年1月28日で2000億円を上回っているので、それなりに販売実績が上がった投資信託だ。ところがこの一年、純資産額は順調(?)に減り続け、足許では1700億円を大きく割り込んでいる。もし筆者がこの運用会社の社長だとしたら、間違いなく営業責任者と運用責任者を呼んで原因究明と対応策を検討させる。どこで何を間違ったのか把握し改善し、次の商品にも反映させるためだ。

なぜなら基準価額はこの間9750円程度から始まって順調に右肩上がりに上昇しているからだ。運用収益が上がっているのに、販売サイドが解約を容認している、或いは無策に放置しているのだとしたら、運用サイドはたまったものでは無い。なぜ、お客様はこの過程で売り逃げようとしているのか? パフォーマンスを上げて、それに伴って資金が純増すること、これがファンドマネージャーにとって最良のご褒美だからだ。

この1年間のパフォーマンスはどうだったのか?

投資信託,買い方
(画像=PORTRAIT IMAGESASIA BY NONWARIT / shutterstock, ZUU online)

この1年間、基準価額は9750円から1万0200円水準まで上昇している。騰落率で言えば約4.6%だ。この投資信託の信託報酬率を目論見書で調べると年率1.463%(税込)となっているので、実際に運用サイドが稼いだ投資収益は「4.6%+1.463%=6.063%」程度となる。

この期間の日経平均株価の騰落率は+12.37%、NYダウが+15.36%。ただTOPIXだと+8.71%となるので、もしリスク回避型のバランス型ファンドだったとしたら、極端にパフォーマンスが悪いと責めるのも運用サイドが気の毒な気もする。ただNASDAQなどは+24.59%にも達するし、筆者が主宰するFund Garageの国際分散投資「リスク中程度のモデル・ポートフォリオ」も同時期の騰落率が約20%になる。因みにFund Garageのそれはアセット・アロケーションをこの間に変更は何もしていない。

世界中殆どの株式市場が上昇(前述)し、代表的な長期金利の指標である米国10年国債も、2019年1月25日の2.78%から1年後の2020年1月27日には1.61%へと基本的に一本調子に低下している。金利が低下すれば債券投資も儲かる筈だ。にも関わらず、信託報酬控除前の運用収益で+6.063%しか稼げていないのは何故だろう?