(本記事は、西井 敏恭氏の著書『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』翔泳社の中から一部を抜粋・編集しています)

サブスクリプション
(画像=PIXTA)

サブスクリプションは月額定額制ではない

サブスクリプションはなぜ失敗するのか

さまざまな業種の企業がサブスクリプションに取り組んでいて、成功しているサービスもあれば、1年も経たずに撤退を選ぶサービスもあります。サービスを閉じた理由は、「会員数が伸び悩んだ」「ターゲットが違っていた」などいろいろと考えられますが、サブスクリプションにはある誤解がもたれているのではないでしょうか。

何だと思いますか?

それは、サブスクリプションとは月額定額制のサービスである、という誤解です。

実際にサブスクリプションと名乗る多くのビジネスが、その企業がすでにもっている商品やサービスを、月額ないし年間の定額料金で使い放題にしたモデルで展開しています。なので、サブスクリプションは定額利用や定期販売ビジネスだと思われている方が多いと思うのです。

しかし、「定額利用・定期販売=サブスクリプション」ではありません。

結論からいいますと、サブスクリプションとよべるのは、定期的な利用があり、かつデータが活用されている商品・サービスのみです。都度利用はサブスクリプションではないことは、おわかりいただけると思いますが、定期的な利用があってもデータが活用されていないものは、サブスクリプションではありません。

サブスクリプションで売上の壁を超える方法
(画像=サブスクリプションで売上の壁を超える方法)

その理由を、定期販売ビジネスの歩みとともにお話しします。

定期販売は、新聞や雑誌の定期購読、健康食品などの定期通販、毎月違った品物が届く頒布会(はんぷかい)といったものに代表される、昔からあるビジネスモデルです。これらが支持されていた主な理由は、同じ物を何度も注文する手間が省けるからでした。

さらに、単品定期通販(1商品や1ブランドの商品だけをあつかう通販のこと)であれば、年間契約をすると、毎回個別に購入するよりも価格が下がるという、お得感もあります。しかしそのメリットは、電話やハガキ、FAXで注文をしていた時代の話です。ECが当たり前となり、買い物はとても便利になりましたし、消費者は買う前に検索し、似たような商品や価格を比べます。

そうすると、ほしいときに1クリックで注文できるだけでなく、オフィシャルショップや年間契約で買うよりもずっと安い価格でよそから買うことができるようになったのです。

次第に顧客は、決まった間隔で同じ商品が繰り返し送られてくるだけの定期販売に、メリットを感じにくくなりました。また、商品を使い切っていなくても次の商品が届きますし、ライフスタイルが変わって違う商品に変更したいと思っても、商品のバリエーションが決まっているため、自分に合ったものを選ぶことができません。

顧客は、定価より数パーセント安いだけの定期販売になんとなく不満をもち続け、ある日ふと解約をしてしまうのです。

なので、たとえ紙のカタログをウェブサイトにのせて、購入方法を電話からネット申込みに変えても、定期販売モデルを続けているだけでは顧客数が伸び悩んだり、業績を落としてしまいます。実際に、そんな企業も多いのではないかと思います。

つまり、今までの定期販売モデルには、顧客が商品やサービスを使い続けたいと思う要素が少ないのです。

理由
(画像=Getty Images)

広告の限界

ここまでの話を読んで、「顧客が減ってしまうなら、広告で新規顧客を増やせばいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。でも広告は、見られなくなっているだけでなく、そもそも顧客への影響度も下がっているんです。

うなずいている方もいるのではないでしょうか。広告をどうしていくかは、マーケターの悩みともなっていますね。

広告が効きにくくなった理由はいくつかありますが、大きくは商品・サービスの差別化が難しくなったからでしょう。企業にとって一番良いのは、広告を打たなくても商品・サービスが売れることです。そのようなものには、他社がマネできない独自性や利用するメリットがあります。そうでなくても、商品・サービスが差別化されていれば、広告でその独自性を訴求することができました。

しかしテクノロジーが進化したことで、製造・生産にも変化が起こり、すぐに似たり寄ったりの商品・サービスが生まれやすくなりました。画期的な機能や価値をもつものが、あっという間にコモディティ化してしまうのです。

たとえば、ユニクロのヒートテックが売れると、各社似たような保温性の高い衣類を販売しました。また、スマートフォン決済サービスもさまざまな種類が乱立していますが、機能そのものは似通っています。これが、商品・サービスのコモディティ化です。

すると、広告だけでは商品・サービスの違いがわからないため、顧客は何を買ったらいいかわからない。さらに顧客は、企業からの一方的な広告を信頼しなくなりました。ネットで比較し、SNSや友人からの口コミを信頼するのです。このことは、マーケティングの定義をお話ししたときにもふれました。

そもそも、広告を打って1回買って終わりの顧客を増やしても、ビジネスへの貢献はそ のとき限りでしょう。売上の土台は、商品を買い続ける、サービスを使い続けてくれる顧客からつくられます。

ECの場合は新規顧客の50%が翌年も継続していないと、ある一定の規模を超えたときから売上が伸びなくなってきます。

とくに、ECや資料請求、各種の申込みなど、オンライン上で顧客に何かのアクションを求めるサービスは、商品やサービスを1件注文・契約するときのコスト(CPO)を重視します。

たとえばCPOが1万円のとき、その顧客が1年かけて何度か利用し、1万円以上の利益を出して翌年も継続するのであれば、広告を出す意味はあります。逆に、利益を得られなければ、広告はコストでしかないんです。

ちょっと強い言葉になってしまいましたが、私は「広告がだめだ」という話をしているのではありません。重要なのは、「差別化を伝えるだけの従来の広告は限界にきている」ということであって、ファンとよべる一定の顧客層に支えられたサービスであれば、広告の力は健在です。

ファンがいる商品・サービスは広告に信頼感が生まれやすく、まだ利用していない人への認知に効果があると思っています。

逆にいうと、ファン層ができていない状態で広告を実施しても認知されづらいですし、まだ利用していない人に「使ってみたい」と思ってもらえることもなかなか難しい。実際に私が支援している企業においても、ファン層のある・なしで、広告の効果が2〜5倍くらい違っています。

サブスクリプションで売上の壁を超える方法
西井 敏恭
1975年5月福井県生まれ。WEBの面白さに惹かれて2003年頃からEC企業にてマーケティングに取り組む傍ら、旅行を続けて訪問した国は140か国以上。世界一周したデジタルマーケティングのプロとして、ad:techをはじめ全国での講演、メディア掲載なども多数。
株式会社シンクロでは代表として、主に大手企業のデジタルマーケティングや、スタートアップ企業のサブスクリプションなどをサポート。マーケティングの教育事業「Co-Learning(コラーニング)」なども展開。オイシックス・ラ・大地では執行役員としてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当。2019年より、ロボットベンチャーGROOVE X株式会社のCMOも兼務。主な著書に『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』(翔泳社)がある。

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