(本記事は、西井 敏恭氏の著書『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』翔泳社の中から一部を抜粋・編集しています)
従来型組織とサブスクリプション型組織の違い
従来型組織ではサブスクリプションは難しいか
サブスクリプションの話もクライマックスになってきました。この章では、売上の壁を超えるには欠かせないサブスクリプションを成長させる組織づくりについてお話しします。
これまでの話からわかるように、サブスクリプション・マーケティングは、マーケティングチームだけでは対応できません。
LTVを伸ばすために、顧客と丁寧なコミュニケーションをとりながら、商品・サービスを改善し続け、顧客の成功に伴走します。そうすると、必然的に商品開発や営業、カスタマーサポートなどの他部署と関わることが増えてきます。 従来型の組織は、大量生産・大量消費を前提としたトップダウンモデルでした。企業によって違いはあると思いますが、経営層が予算と販売目標数を決定し、それに伴う業務が組織下部へと流れてくる。
リサーチと研究、開発を担う商品開発、広告とPRを担うマーケティング、販売戦略とコミュニケーションを担う営業があって、間に顧客をはさみ、販売後はカスタマーサポートが顧客対応をするというように、役割が分かれていたと思います。
このような組織体制は「モノを売る」ことに特化しています。でも、部署ごとに独立した目標があるため、目標が共有できない他部署とは、そもそも連携が難しい体制となっています。
また、LTVを伸ばすための課題や顧客が離脱する原因が明らかになり、商品・サービスの変更が求められたとしても、従来型の組織では、「もう実装段階なので、今さら変更は無理です……」となってしまいがちです。
顧客からすれば、改善がなされないものは使いたくありません。3か月経っても改善されずにそのままのサービスは、使うのをやめてしまいますよね。
つまり、従来の一般的な縦割りの組織体制では、サブスクリプションを成長させる打ち手が実行しづらいのです。
サブスクリプション型組織は円形
一方、サブスクリプション型の組織は、顧客を中心に据えた円形の組織体制を敷きます。真ん中に顧客が立ち、そのまわりをぐるりとサービス進化、商品開発、マーケティング、営業、カスタマーサポートといった各部署が囲む、円い形をイメージすると良いでしょう。これをカスタマーセントリックとよびます。
またサブスクリプション型組織では、求められる職種のスキルも異なってきます。
カスタマーサポートは解約を最前線で食い止めるプロフィットセンターです。
そうすると、顧客とのコミュニケーションスキルも従来のカスタマーサポートで求められるそれとは、異なるものになります。
顧客の声を傾聴する姿勢は従来のカスタマーサポートの仕事と変わりませんが、顧客のそのときの課題を単に解決するだけでなく、顧客がまだ気づいていない課題を発見することが求められます。顧客の隠れた心理を探り、顧客の求めている成功は何なのかを考えます。
場合によっては、他社のサービスを使った方が顧客は嬉しいかもしれません。そのときは素直に案内しつつも、いつでも自社のサービスに戻ってこられることもお伝えできると良いでしょう。
また、マーケターと同じくらいに業務の内容が変わるのは、営業です。旧来の営業は売るまでが仕事でした。一方、サブスクリプションの営業は売ってからが勝負です。
とくにBtoBのクラウド型サブスクリプションの営業は、導入後の使い方の支援はもちろん、使い勝手の調査や改善、他部署への展開や関連サービスの提案、時には仕事の仕組みの見直しまでにも関わったりと、徹底的に顧客の成功に伴走します。これらの業務は、カスタマーサクセスとよばれる領域です。
さらにマーケティングと営業は、顧客のLTVを伸ばし続ける目標を共有します。顧客獲得からサービスの定着までをマーケティングが、それ以降の顧客との関係づくりをカスタマーサクセスとして営業が担うと良いでしょう。
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