(本記事は、清水 久三子氏の著書『話しベタさんでも伝わるプレゼン 人見知り、心配性、アドリブが苦手な人でも堂々と発表できる!』翔泳社の中から一部を抜粋・編集しています)

商談,接客,笑顔
(画像=PIXTA)

たった一言で場の空気を緩めて話しやすくする

本題に入る前に話すべきことがある

ピーンと張り詰めた空気の中で話す……考えただけで私でも緊張してきます。話しはじめる前に場の空気を温めておくことでグッと話しやすくなります。

落語やお笑い番組の収録などで前座(ぜんざ)と呼ばれる人がいます。これは主役が出る前に軽いトークをして客席の雰囲気を良くする役割を果たしています。仕事のプレゼンで前座の人を用意するのは無理かもしれませんが、自分で場を和ませてから本題に移るとグッと話しやすく、自分自身の緊張もほぐれてきます。場の空気に圧倒されて頭が真っ白になってしまう人も多いので、まずは場を温めてから話すことを心がけてみましょう。

やり方としては、本題に入る前に簡単な世間話を相手に振ってみるとよいでしょう。例えば下記のように、たった一言でよいのです。

〈本題に入る前に場を和ませる話の振り方〉

【社外プレゼンの場合】
「今朝はひどい雨でしたね。いつも以上に混んでいませんでしたか?」
「こちらのオフィスはとても洗練されていますね。皆さん働きやすいのではないですか?」
「〇〇プロジェクトは佳境に入ったと聞きましたがいかがですか?」

【社内会議や1人の相手に説明する場合】
「昨日のサッカーの試合は良かったですね!」
「今朝のニュースは驚きましたね」
「昨日のA社のプレスリリース、かなり反響があったみたいですね」

質問に対する回答ゼロへの対策

このように相手を気遣うような質問や話を振ることで、相手も答えやすく場が温まり、自分も話を切り出しやすくなってきます。

相手が大勢の場合、「質問して誰も返事をしてくれなかったらどうしよう……」と心配になるかもしれませんが、その場合には自分で答えを言ってしまえばよいのです。例えば、「昨日の台風は帰宅時間に直撃したのでお帰りが遅くなった方もたくさんいたようですね。(シーン)でも今日は皆さんに無事お集まりいただき、良かったです」など、回答がない場合でもそれを受けた自分の感想などにつなげれば大丈夫です

また、声には出さなくてもうなずいている方もいます。うなずいている人が多ければ「やはり多くの方がお困りだったようですね」、少なければ「それほど皆さんは被害に遭われなかったようですね。良かったです」など様子を見て自分の感想などにつなげてみましょう。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
(画像=話しベタさんでも伝わるプレゼン)

最も緊張する魔の3分間を乗り切ろう

開始3分間の準備で成否が決まる

場が温まっていてもいざ本題となるとまた緊張スイッチが入り、頭が真っ白になることもありますね。

緊張は開始から3分間が最も高まると言われています。この「魔の3分間」は、頭が真っ白になり、周囲が見えにくくなったり、顔が赤くなったり、汗がブワッと吹き出たり、手足が震えたりと緊張症状もピークに達します。この魔の3分間で緊張症状に翻弄されてしまうと「ああ、何を話していいのかわからない。もう無理だ〜」とすっかり敗北の気持ちになり最後までなかなか払拭できません。逆に捉えれば、この魔の3分間を乗り切ることができれば自分の中に落ち着きが生まれ、最後までそれを持続することができます。魔の3分間を乗り切るために、場を温めることに加え、どんな状況になっても3分間は絶対に話せるよう反復練習をしておきましょう。

私は仕事柄、初めての方の前で話すことが多いので、たいてい自己紹介から入ります。最初の1分間は相手を気遣う問いかけを行い、次の2分間で自己紹介を行うのですが、事前に最低3回練習してから場に臨みます。そうすれば、たとえ頭が真っ白になっても確実に話せるのです

自己紹介がいらない相手であれば、「今日お話しすることは……」とその日に伝えたいことを要約して話します。「これだけ伝えればOK」ということを徹底的に反復しておけば、その後もラクになります。

魔の3分間を落ち着いて話すための練習方法

できるだけ様々なシーンで反復練習してみてください。例えば朝起きてすぐにベッドで、鏡の前に立ってニッコリ笑顔で、通勤途中に歩きながら小声で、空いている会議室で、同僚の前で……などすき間時間を見つけて反復練習します。マイクを使うプレゼンが控えている方はカラオケボックスがおすすめです。講師や営業の方などカラオケボックスでリハーサルをしている方は実は結構います。

様々な状況で自分の中に定着させておくことで、「どんな状況でも確実に言える!」という自信が生まれ、プレゼン本番でもセリフが自然と出てくるようになるからです。自宅のみで練習していると、状況が変わると出てこない……ということにもなりかねません。

特にカラオケボックスや会議室などで歩きながら練習しておくのは効果的です。場に慣れることにもつながりますし、興味を引くことが目に飛び込んできたり、つまずいたりしても出てくるようになり、緊張で頭が真っ白になっても確実に魔の3分間を乗り切れます。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
(画像=話しベタさんでも伝わるプレゼン)

緊張対策グッズの準備と身だしなみに気を配ろう

緊張対策:持ち物編

緊張は良いものだと認識を変えても、汗が出るなどの緊張症状が全て収まるわけではありません。ただし、緊張症状への対策をすることで心の落ち着きが変わってきます。人前で話す機会が多いプロも緊張対策をしています。次に挙げている緊張対策グッズで、自分に合うものを準備してみましょう。プレゼンが少し待ち遠しくなるかもしれません。

〈緊張を防ぐためのお役立ちグッズ〉

  • ハンカチ
    汗をよくかく⼈は2枚準備しておくと安⼼です

  • クールタオル
    熱中症対策用の商品で、特に顔が⾚くなる⼈におすすめです

  • ミニカイロ
    私は緊張で指先が冷たくなるのでポケットに忍ばせています


  • 話す前に⼝を潤しておきましょう

  • 喉スプレー
    冬場は特に乾燥するので洗⾯所などでひとスプレーしましょう

  • クリッカー
    パワーポイントを操作できるリモコンです。棒状のものよりも指輪状のものの方が、震えもわかりにくいのでおすすめです

  • アロマグッズ
    ローズマリーやラベンダー、オレンジなどのアロマオイルをハンカチなどに含ませておくと鎮静効果があります

緊張対策:服装編

服装の緊張対策には「自信が持てる服を着ること」「清潔感を心がけること」「脇汗対策」の3つがあります。

自信が持てる服とは単におしゃれをするということではありません。英ハードフォードシャー大学のカレン・パイン教授の研究で「何を着るかで、どれだけ自信を持てるかに大きな影響がある(*1)」ということが証明されています。自信が持てる服装とそうでない服装でテストを受けたところ、点数に大きな差が出たそうです。自信が持てる服はスーツだったり、普段よりも上質な素材の服だったり、好きなカラーだったりと人によって違います。自信が出る服を用意しておきましょう。

2つ目の清潔感ですが、いくら自信が持てる服装でも汚れやシミがついていれば相手に与える印象が悪いのはもちろん、プレゼン中に気付いたら自信を失いかねません。服装は明るいところでチェックしてください。

3つ目は脇汗対策です。できるだけ汗染みが目立たないものを選びましょう。また、薄いグレーなど汗染みが目立つジャケットやシャツは、脇汗パッドをしておくとよいでしょう。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
(画像=話しベタさんでも伝わるプレゼン)

(*1)出所:カレン・パイン『Mind What You Wear』(Kindle)

話しベタさんでも伝わるプレゼン
清水 久三子
株式会社AND CREATE代表取締役社長。1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人の人材育成に携わる。2013年に独立。執筆・講演を中心に、年間4冊を超えるビジネス書の執筆や全国での講演・講師活動を行う。2015年6月にワーク・ライフバランス、ダイバーシティの実現支援を使命とする株式会社AND CREATEを設立。ビジネススクールや大手銀行系の研修提供会社で講師をつとめ、創造性と生産性を向上させるスキルアップのプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。

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