(本記事は、清水 久三子氏の著書『話しベタさんでも伝わるプレゼン 人見知り、心配性、アドリブが苦手な人でも堂々と発表できる!』翔泳社の中から一部を抜粋・編集しています)

疑問,質問
(画像=PIXTA)

質問は攻撃ではなく理解を深める機会と考えよう

質疑応答もプレゼンの一部

「質疑応答は苦手」「質問を受け付けずにプレゼンを終わらせたい」……そのように質疑応答を考えている人は多いと思います。これは質問=攻撃や非難と考えているからではないでしょうか? 私がこれまでお会いした外国人スピーカーたちは、質問がないととてもがっかりしていました。つまり「質問は興味の証し」だと考えているのです。

実際、私たちがある商品を購入しようかと迷っているときには、いろいろな疑問が出てきて調べたり聞いたりしますよね。逆に興味がなければ話を聞いてもあまり疑問は湧かないでしょう。質疑応答の役割は、相手の理解を深めて、プレゼンのゴールに近づけることです。

質疑応答を乗り切る4STEP

ただし、質問に即興で答えるのは難しいものです。相手に納得してもらえる回答の仕方を知っている必要もあります。質疑応答を実りある時間にするためのステップをご紹介しましょう。

STEP1 質疑応答の時間を決める
説明と質疑応答の時間の黄金バランスは2:1です。例えば30分が持ち時間であれば「説明時間20分+質疑応答時間10分」という時間配分が目安です。長すぎると思うかもしれませんが、質問だけでなく意見交換、ディスカッションの時間も入れるとちょうどよいでしょう。
STEP2 質疑応答の準備をする
実はプレゼンが上手い人も質問と回答は入念に準備しています。当日の質問が思い浮かばない方はあらゆる質問を洗い出してみてください。たとえ悪意がなくても、答えにくい質問もありますので、そういったときの対応も準備しておきましょう。
STEP3 質問を仕分ける
ここからは質問への回答の仕方です。まずは答えるべき質問と流すべき質問を見極める必要があります。流すべき質問に時間を取られたり、うっかり言わなくてもよいことを話してしまったりすることにもなりかねません。質問の仕分け方や、わかりにくい質問への対処法も考えておきます。
STEP4 回答して理解浸透させる
疑応答では回答しておしまいではなく、相手が納得してくれたのか、理解をしてくれたのかを確認します。プレゼンのゴールに導くことを意識しましょう。

この4つのステップですべきことが明確になれば、当日までの準備もはかどり、自信が湧いてきて自然と緊張もやわらぐでしょう。

〈4STEPでゴールに近づける〉

  • STEP1 質疑応答の時間を決める
  • STEP2 質疑応答の準備をする
  • STEP3 質問を仕分ける
  • STEP4 回答して理解浸透させる

20個の質問シミュレーションで乗り切れる

想定質問の準備もプレゼン準備のうち

「本来答えるべきなのに答えられない……」この失敗はできるだけなくさなくてはいけません。想定外の質問をなくすには、まずはどんな質問がくるのかを想定しなくてはいけません。しかし、話しベタな人は話す内容には力を入れても、質問対策まではなかなか気が回らず、想定外の質問にあたふたしてしまうことが多いのではないでしょうか?

質問対策は時間があったらやるということではなく、実は必ずやるべきことです。理由は質問と回答を考えることはプレゼン本編の内容を深めることにもつながるからです。プレゼンでは相手の疑問をしっかりと解消しなければ説得することはできません。相手の質問を考えられないということは相手の疑問を解消できない可能性が高いのです。プレゼンは相手の疑問を解消するものだと考えると想定質問の準備は必須だと言えます。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
(画像=話しベタさんでも伝わるプレゼン)

「5つのタイプ×4つの質問」で想定質問を用意する

私はコンサルタントとして提案や報告を行う際には、プロジェクトメンバーと相手の方がしそうな質問や、こういう疑問を持つのではないかということをできるだけたくさん洗い出しました。

大規模なプレゼンのときは100個くらいの質問リストを作り、回答を準備しましたが、普段はそこまで質問を考えなくても大丈夫です。質問は5つのタイプに分けることができます。タイプごとに最も気になりそうなことを4つずつ、合計20個の質問を考えておきましょう

この5つのタイプで考えておくことで、想定外の質問を洗い出しやすくなります。自分視点だけだと盲点ができてしまうからです。

1つ目は「意味を確認する」タイプの質問です。これは説明内容について理解できないことを聞くためにされます。この質問は理解できないことを確認するための質問ですから、できるだけ単純化して答える必要があります。単に説明を繰り返すのではなく、できるだけ単純に一言で回答しましょう。

2つ目は「根拠を求める」タイプの質問です。主張に対しての理由や根拠を求めるときにされます。また、説明した根拠に納得できない際にもさらなる根拠を求めて聞かれます。具体的な数値や情報を提示して根拠の確かさを伝えます。権威ある人の説得力のある発言などを参照してもよいでしょう。

3つ目は「具体例を引き出す」タイプの質問です。主張や説明が曖昧でイメージが湧かないときに具体例を聞いて納得するためにされます。イメージをしっかりと伝えてリアリティーを感じてもらうのがポイントです。シーンが目に浮かぶような描写や相手の立場に置き換えた例などを話しましょう。

4つ目は「別の角度から検証する」タイプの質問です。主張が正しいかどうか判断できないときに違う状況だとどうなるのかを検証するためにされます。様々な角度で検証することが求められています。違う角度で見たときに違いがあるのかないのか、共通していることは何なのか、当てはまるのか当てはまらないのかを明確に回答します。

5つ目は「意義を問う」タイプの質問です。主張自体の意義や価値を問われる質問です。企画や提案全体の価値を問われています。誰にとってどういう価値があるのかを一言で答えられるようにしましょう。表に質問の例と答え方のイメージを挙げているので参考にしてください。

〈よくある質問と答え方の例〉

意味を確認する
【質問】
「〇〇という概念の意味を説明してください」
「このやり方を説明してください」
「このデータはどういう傾向ですか?」
「〇〇機能の使い方が理解できません」

【答え方】
「一言で言うと〇〇です」
「簡単な表現にするならば〇〇です」
根拠を求める
【質問】
「〇〇と言える理由は何ですか?」
「どうしてその結論になったのですか?」
「その主張の背景にある根拠は?」
「根拠が弱いので、その点を補足説明してください」

【答え方】
「具体的には〇%という結果が出ています」
「〇〇調査によると顧客の意向は前年と大きく変わっており、これはこのケースでも当てはまります」
「〇〇部門の業務担当者に確認したところ、〇〇が最も課題であるとおっしゃっていました」
具体例を引き出す
【質問】
「具体的にはどういうことですか?」
「例えばどういうことですか?」
「抽象的なので具体的に説明してください」
「具体的な進め方を教えてください」

【答え方】
「まず顧客には〇〇をしていただき、その後……」
「この企画では業務が〇〇になる状態を目指しています」
「初めの1か月では〇〇を行い、その結果にしたがい、3つの進め方から1つを選択します。2か月目以降は……」
別の角度から検証する
【質問】
「〇〇は□□だけでなく、△△とも考えられないでしょうか?」
「△△の観点で考えると〇〇はどう理解すればいいですか?」
「その企画案はこれまでと同じように感じます。新規性は何ですか?」
「〇〇とは何が違うのですか?」

【答え方】
「その観点で考えると〇〇は共通ですが、△△の点は異なります」
「△△のケースではこの考え方は当てはまりません」
「これまでの企画と比較した新しさは〇〇です」
意義を問う
【質問】
「この企画の価値は何ですか?」
「この案は顧客にどう役立ちますか?」
「この報告にはどういう意味があるのですか?」
「メリットは何ですか?」

【答え方】
「お客さまにとっては〇〇の課題を解決できます。そして、わが社にとってこの企画を実行することは〇〇の価値があります」
「この報告は〇〇プロジェクトでどのような成果があったのかをお伝えするものです。当部門にとっては〇〇の点で大きな改善が見られました」

質問をスライドに仕込んでリハーサルをする

ここまでに洗い出してきた5つのタイプの質問は、想定される回答を考えて、質疑応答リストにしておきます。また、説明中に質問されそうな場合は、関連するスライドのノート部分にも書いておくと慌てずに回答できます。バタバタとリストを確認しなくても回答しやすくなるのでおすすめです。

質疑応答は即興で行うものではありません。落ち着いて答えられるように想定問答を準備した上で、できればリハーサルで誰かに質問してもらい、答え方を確認しておきましょう。私も重要な提案や報告会の前には、上司や同僚にお客さま役になってもらい、質疑応答のリハーサルをしました。そこまでやっておくと自信を持ってプレゼンに臨めます。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
清水 久三子
株式会社AND CREATE代表取締役社長。1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人の人材育成に携わる。2013年に独立。執筆・講演を中心に、年間4冊を超えるビジネス書の執筆や全国での講演・講師活動を行う。2015年6月にワーク・ライフバランス、ダイバーシティの実現支援を使命とする株式会社AND CREATEを設立。ビジネススクールや大手銀行系の研修提供会社で講師をつとめ、創造性と生産性を向上させるスキルアップのプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。

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