(本記事は、清水 久三子氏の著書『話しベタさんでも伝わるプレゼン 人見知り、心配性、アドリブが苦手な人でも堂々と発表できる!』翔泳社の中から一部を抜粋・編集しています)

新聞,情報,勉強
(画像=PIXTA)

説得力を生む一次情報と二次情報を探そう

まずは二次情報を探そう

メッセージやストーリーに説得力を持たせるためには根拠となるデータや情報が必要です。とはいえ、言いたいことにぴったりの情報は簡単には見つかりません。限られた時間や予算の中で探すには、情報の探し方を知っているかどうかがカギになります。

まず情報は、一次情報と二次情報があります。一次情報とは独自調査をして収集したオリジナルデータのことです。二次情報とは一次情報を加工や編集をして解釈したデータです。どちらが必要かは資料で伝えたいメッセージにもよりますが、集める時間や費用にも限りがありますので、闇雲に探し回っていてもなかなか見つからないということになってしまいます。社内にある情報以外では、以下のような公開情報を探すことになります。

よく使用する公開情報
・新聞、雑誌、書籍
・リサーチ会社やシンクタンクのレポートや白書
・大学や研究機関の論文
・政府機関や公益法人のレポート
・政府の統計情報

費用はインターネットや図書館で得られるものはほとんどが無料ですが、ニュース記事の一部や記事検索サービスなどは有料のものもあります。専門性の高い図書館などでの閲覧や複写なども有料です。かけられる費用の制約を踏まえて活用できる情報を探します。

〈主な二次情報の探し方〉

①Google検索
まずは思いつくキーワードで検索し、検索結果を眺めながらキーワードをさらに見直しながら繰り返します。大きく捉えてから、徐々にキーワードを絞ったり、逆にいくつか組み合わせたりすることで絞り込んでいきます。調査機関の報告書であればそのまま引用できますが、記事やブログなどから見つけ出したデータは必ず引用元のデータを参照しましょう。
〈Google〉 https://www.google.com
②新聞・雑誌の記事検索
一般紙、経済紙、業界紙などの記事検索は日経テレコンやG-Search、@nifty ビジネスなどがあります。これらは有料ですが、会社で契約している場合もありますので確認してみましょう。業界紙はかなり詳細な情報が入手できます。雑誌の場合には、バックナンバーを購入する他、定期購読していればWebで読むこともできます。
〈日経テレコン〉 http://telecom.nikkei.co.jp
〈G-Search〉 https://db.g-search.or.jp
〈@nifty ビジネス〉 https://business.nifty.com/
③国会図書館「リサーチ・ナビ」
どうしても欲しいデータが見つからない場合には国会図書館のリサーチ・ナビというサービスを活用してみましょう。キーワードを入れて検索結果を表示すると「調べ方」というタブが出てきます。これは国会図書館が調べ方のノウハウや情報源などをまとめたものです。
〈リサーチ・ナビ〉 https://rnavi.ndl.go.jp/rnavi
④Amazonで書籍検索
Amazonで調べたいワードを入力すると関連テーマを知ることができます。著者はそのテーマの見識者ですので、さらにネットで著者名を検索すれば見解を得ることができます。
〈Amazon〉 https://www.amazon.co.jp

一次情報も考えてみる

どうしても二次情報が見つからない場合には、独自調査で一次情報を集めます。以前はリサーチ会社にアンケートやインタビューなどを依頼すると数十万円の費用が必要でしたが、最近ではGoogleフォームやLINE、Facebook、Twitterなどで簡易アンケートが取れます。

またセルフ型リサーチサービスを使えば1万円程度である程度の母数のアンケート調査が可能です。アンケート設問設計、モニターへの周知、回収、集計・分析を自分でウェブサイト上で行うのです。1万円程度の費用が認められる場合でしたら、リアルな意見を短時間で回収できるので活用を検討してみましょう。

Survey Monkey、Questant、Fastaskなどが有名です。Survey Monkeyは無印良品が素早く顧客の声を集めるツールとして活用しています。10問で100サンプルまでであれば無料、制限なしの年間プランでも5万円とかなり安価なサービスですから会社として登録してもらってもよいでしょう。

無料調査で済ませるか、お金をかけて調査するのかは、そのプレゼンでの意思決定後にどれだけのヒト・モノ・カネ・時間などが投入されるかによって決まってきます。例えばある商品企画で検討候補に入れるかどうか判断するレベルであれば、お金をかけない簡易調査で済ませてもよいですが、本格的に商品化する、市場参入計画を立てるとなったら、投資が大きいため有料でも精度の高い調査をする必要があるわけです。

私もコンサルタントとして提案活動をしている際に、どうしても二次情報が見つからないときや、新しいテーマの仮説を立証したいときなどは独自調査を行いました。集計した数値だけではなく、生の声をそのまま資料に入れることでリアリティーを感じてもらうことができました。

やはりユーザーや顧客の生の声というのは資料に説得力が生まれます。ここぞという企画のときには独自調査も考えてみましょう。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
(画像=話しベタさんでも伝わるプレゼン)

〈セルフ型リサーチサービス〉

セルフ型リサーチサービス:独自にアンケート調査を行うときに使える機能を提供するサービス

リサーチサービス例
・アンケート設問の作成ツール
・SNSやホームページなどでの配信
・モニターの用意
・集計と分析ツール

安価なセルフ型リサーチサービス
Survey Monkey
アメリカ企業が提供するサービス。質問のテンプレートが充実している。10問までのアンケートなら無料プランで作成可能
https://jp.surveymonkey.com
Questant
マクロミルが提供するサービス。メールやSNSの他、QRコードでもアンケートが取れる機能がある
https://questant.jp/?Qcid=SL-MM
Fastask
「一太郎」で有名なジャストシステムによるサービス。回収状況をリアルタイムで確認できるのが特徴。オンライン上で見積もりを取れる
https://www.fast-ask.com

情報の一軍、二軍を決めよう

「あれもこれも……」はゼロ以下になってしまう

「いつも時間切れになってしまう」という方は自分が持つ情報の全てを伝えたいという気持ちが強いのだと思います。しかしそれは、「全部伝えておけば(私が)安心」という自分本位な考え方からきているか、もしくは「何が相手にとって重要かわからないから全部伝えよう」という考えで情報を取捨選択できないかのどちらかではないでしょうか?

たくさんの情報を説明すれば相手に全て理解してもらえるかというと実はそうではありません。私はスピーチ力向上の研修講師をしているのですが、自己紹介のワークを何度か繰り返していくと徐々に自信がついてきて、次第に自分についてたくさん話せるようになる方がいます。

一見成功しているようですが、「こういう仕事で、以前は……プライベートではあれとこれが趣味で……」と情報量が増えるにつれ、他の受講者の方からは「あまり印象に残らなかった」という反応が増えるのです。

自己紹介は自分を印象付けることが目的なのに、話しすぎるとかえって印象が薄くなってしまうわけです。自己紹介であれば「自分はこういう人間だ」という軸に沿った情報だけを選んで話す必要があります。

報告や説明でも100伝えると、10くらいしか伝わらないか、むしろ「よくわからなかった」とゼロ以下になってしまうかもしれないのです。

情報の一軍と二軍を決める

そうならないために、まずは伝えるべき情報を必須の一軍と、時間があれば伝える二軍に分けます。一軍と二軍の判断はピラミッドで考えた主張と根拠だけが一軍で、それ以外の関連情報は二軍です。根拠を厳選することが一軍と二軍を分けるということになります。

分けたら一軍は資料の本編に入れ、二軍は参考資料として別添えにします。一軍は持ち時間より10〜15分少ないくらいの分量にします。質問を受けたり、討議をしたりする時間を確保するためです。1時間の報告で1時間ぎりぎりに言い終わるくらいの目一杯の情報量では必ず時間切れになります。時間が余ることを心配されるかと思いますが、説明がかなり上手い人以外たいていは時間オーバーになるので大丈夫です。相手が特別に興味を持ったときに限り、二軍の情報を使って「補足ですが、〇〇の詳細はこちらです」と説明します

二軍の情報は相手から問われない限りは特に話さないと決めておきましょう。特に結論が出てから、「そういえば……」「実は他にも……」「また別の観点では……」などと別の情報を出すのは相手を混乱させてしまいます。「今決めたことは何だったのか?」「他に検討すべきことがあるのか?」と、せっかくいたった結論に不安が生まれてしまいます。もし時間が余ったのであれば、結論を最後に繰り返してしっかりと認識してもらうとよいでしょう。重要なメッセージは何度か繰り返して伝えてもよいのです。余計な一言は相手を混乱させるだけだと考えましょう。

話しベタさんでも伝わるプレゼン
(画像=話しベタさんでも伝わるプレゼン)
話しベタさんでも伝わるプレゼン
清水 久三子
株式会社AND CREATE代表取締役社長。1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの新規事業戦略立案・展開プロジェクトをリード。2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティングサービス&SI事業の人材開発部門リーダーとして5000人の人材育成に携わる。2013年に独立。執筆・講演を中心に、年間4冊を超えるビジネス書の執筆や全国での講演・講師活動を行う。2015年6月にワーク・ライフバランス、ダイバーシティの実現支援を使命とする株式会社AND CREATEを設立。ビジネススクールや大手銀行系の研修提供会社で講師をつとめ、創造性と生産性を向上させるスキルアップのプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。

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