黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

昨今、プログラミングを活用した「フリーランスエンジニア」で稼ぐことが活況だ。雇われ時代は年収400-500万円ほどだったのが、フリーランスに転じて一気に1,000万円を超えることも少なくない。また、開発業務だけでなく「フリーランスエンジニアを養成する」と教育ビジネスとして手掛ける人も出てきており、景気のいい数字が踊り並ぶデータを目の当たりすることもある。

筆者はプログラミング言語ではなく、自然言語を扱う「英語教育ビジネス」を手掛けている。両者を俯瞰してそれぞれのビジネスにおける良し悪しを取り上げたい。

変化の速度が激しいプログラミング

起業,教育分野
(画像=Elle Aon/Shutterstock.com)

プログラミングの世界には、非常に多くの言語が存在する。各言語には向いている、もしくは使えるシステムに差がある。

たとえば、Webサイトを作る上では「HTML」「CSS」などが向いているが、「C++」を取得しても活用できない。

逆にiPhoneアプリを開発するなら、「Swift」の取得が求められる。言語によって取得の難易度や求人数、年収も違い、国によっても人気のある言語が異なるのだ。

ゆえに、かつては主流だった言語も、テクノロジーの進展で廃れてしまったり、新たな技術が登場してくる。また、今後はAIの台頭でダイレクトに影響を受ける分野でもあり、将来の強い需要は見込めても、キャッチアップ出来るかどうかに不安を覚えるプログラマーは少なくないだろう。

起業してプログラミングのコーディングをする、プログラミングスクールを運営するなら市場規模、需要、流行りなどを常に把握しておかなければいけないのだ。ビジネスを仕掛ける側は、ユーザーに価値提供ができる技術を持っておく必要がある。

変化の速い業界故に、取り残されないための肉食的な強さが求められるのだ。本質的な知性の高さとプログラミングへの適性があれば、大きく稼ぐことができるだろう。しかし、そうでない場合はついていくだけでもかなり大変であると推測する。

自然言語の英語は変わらない

その一方、「英語」というコンテンツについてはどうだろうか?

筆者は英文を読むことで力をつける「英語多読」というワザを使って、日本から出ず英語を完全に独学でマスターした。「言語の学習には終わりはない!」とお叱りを受けてしまいそうなので、ここで定義を明確化しておく。

筆者がいう「極めた」と言うのは「英検1級」「TOEIC985点」「米国大学留学(語学留学ではなく)」という実績をもって「学習者ではなく、ビジネスとして価値提供しても良いだけのラインにたった」という意味合いである。そのノウハウを商業出版し、オンラインスクールで提供するビジネスを手掛けているのだ。

筆者が英語多読を知ったのは、明治時代の偉人たちである。当時は現代ほど語学留学や、英会話スクールが充実しておらず、YouTubeなどもなかった。そんな時代に、海外大学留学や諸外国との交渉、学術分野の研究で英語を使いこなすためには「英文を多読する方法」を持って英語力を身に着けた人たちがいると知った。筆者もそのやり方を踏襲することで身につけたのだ。

明治時代といえば、1868年から始まったのだから、実に150年前である。150年前の手法を踏襲して実績を出し、2020年にビジネスとして通用するのだから実に息が長い。YouTubeなどもマルチメディア化も著しいし、英語にもAIの波は押し寄せているものの「英語をリーディングする」という基本的な学習形態が覆ることはないだろう。

変化が止まっている業界はビジネスチャンスがある

常に技術やライバルの台頭があるプログラミングと、変化が止まっている英語という自然言語とでは、どのようにビジネスチャンスが違うだろうか?

筆者が英語教育ビジネスを手掛けて、スタートから7ヶ月目で月3ケタの収益を生み出すようになった。その理由は「悩み解決」というジャンルや、「日本人の英語熱」「グローバル化の需要拡大」など追い風が吹き続けているからである。

売れるビジネスは「悩み解消」である。英語における悩みは深い。日本人ならほぼ全員が義務教育で英語学習を受けており、多くは解消されないまま社会人となっている。会社で働く上で将来への不安を覚え、再び英語を身につけるべく学習法を模索するビジネスマンは少なくない。

このパイの大きさと、需要の深さが売れるビジネスに繋がる。また今後の日本は人口減少と少子高齢化の進展で、ますます諸外国の取引が求められる。食品メーカーも縮小する国内のマーケットだけでなく、海外のフロンティアを開拓しに行っている。

そうなると、必然的に英語が必要となるのだ。さらには、インバウンド需要の高さも大きい。つまりは「英語ビジネスはボーナスタイム」が到来しているということなのだ。確かに英語教育を販売するライバルはとてつもなく多い。しかしその中でも差別化を図り、信用を獲得すればこの分野で生き残ることは難しくないと感じている。

プログラミングと異なり、一度技術を獲得すれば一生それを教えるだけでいい。「appropriate」という単語が「適切な」という意味以外を持ったり、活用法が変わることは100年後もないだろう。

「テクノロジーの進展により、一度身につけた技術だけで一生食べていける分野はない」と言われてきたが、英語については例外と感じている。また、英語は組み合わせが無限大であり、「英語と会計」「英語と投資」「英語と法務」など専門分野をかけ合わせることで、専門性を深めた教育ビジネスを展開できるだろう。今後はビジネスの専門性も深化するので、いくらでも分野は作れるし容易に差別化できてしまう。

市場変化のスピードによってビジネスチャンスの期待値が変わる

筆者はプログラミングより、英語の方が「取得が簡単で、自然言語として停滞しているのでビジネスとしても楽である」という意味でチャンスがあると感じている。(提供:THE OWNER

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)