(本記事は、鈴木颯人氏の著書『最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)

相手がどの感覚を大切にしているか、会話から探る

最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす
(画像=Webサイトより※クリックするとAmazonに飛びます)

「自分の話が相手に伝わっていない気がする」
「メンバーと話しても、いまいち会話が盛り上がらない」

こんなふうに、ふだんメンバーとの人間関係に悩んでいる人に、ぜひ意識してもらいたいことがあります。

それが、「感覚のギャップ」です

人にはそれぞれ、大切にしている感覚があります。

中でも顕著に表れやすいものが3つあります。それは、視覚、聴覚、触覚です。

相手と良好な関係を築くには、相手がこれらのどの感覚を大切にしているのかを知ること。会話や態度を観察しながら探っていくことが、回り道のように見えて、実は一番の近道なのです。

あるリーダーがチームメンバーのAさんとマンツーマンで話をすることになったとしましょう。リーダーはAさんに役立つ(であろう)情報を伝えています。

ところがAさんは、うなずきはするものの、メモも取らず、リーダーの話に耳を傾けているだけ。この態度を見るかぎり、リーダーの話に興味はなさそうです。

もしリーダーが「人の話を聞くときはメモを取る」という信念を大切にしていたら「Aさんはなぜメモしないんだろう」「私の話はあまり響かないのかな」などと、話の内容とは違う部分が気になり始めます。

そして、「なんでメモを取らないの?」などと言ってしまうでしょう。

しかし、Aさんから明確な回答はありません。

やがてリーダーの中で、Aさんに対する違和感が徐々に大きくなります。「どうせまたAさんは私の話を聞く気がないのだろうな」などと思い込み、接し方にまで影響が出始めます。結果として、関係がギクシャクしてしまうというわけです。

ここでのポイントは、「メモを取ること」の捉え方です。

リーダーはメモを取ることを常識と考えていますが、Aさんはそうは考えていません。つまりここが「感覚のギャップ」というわけです。

先ほどの話を踏まえ、リーダーとAさんのタイプについて考えてみましょう。

リーダーは、人の話を聞くときメモを取る習慣があるということでした。メモを取る行為は「視覚」に近いため、「視覚」優位タイプと言えそうです。

Aさんはどうでしょうか。メモは取らないものの、うなずいていました。これは、言葉や音を重視して物事を理解する、「聴覚」優位タイプと言えそうです。

このようにリーダーが、Aさんの大切にするタイプを事前に知り、意識できていれば、コミュニケーションの仕方は変わってきたはずです。

では、リーダーはAさんに対し、どう接すれば良かったのでしょうか。

たとえば、「私はいつもメモを取って人の話を覚えるのだけど、Aさんはメモしなくても覚えられるタイプ?」と最初に確認したり、「もし話を聞きながら、覚えていられるかどうか不安だったら、メモを取るといいよ」と伝えたりするのも良さそうです。そのうえで、「自分はメモしないほうが話に集中できるんです」と返ってくれば「あ、Aさんは自分と違う感覚なのだな」と認識することができます。

これでAさんとの違いに関する情報を一つ得られたので、次回以降、Aさんと会話をするとき、不必要に違和感を覚えずに済みます。

会話をするときのポイントはまず、相手が大切にしている感覚を想像してみること。必ずしも、その感覚が当たっている必要はありません。「この人とは合わない」とあきらめるのではなく、想像力を働かせて相手の情報を集める意識が大切です。

二流のリーダーは「自分の感覚」を大切にする
一流のリーダーは「相手の感覚」を大切にする

「言葉の連想ゲーム」で相手の大切にしていることがわかる

「もっと手っ取り早く相手の傾向がわかる方法を知りたい」という場合は、「言葉の連想ゲーム」がおすすめです。

たとえば「ディズニーランド」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

試しに、あなたが思い浮かべることを5つ以上挙げてみてください。

私がセミナーで同じ質問をしたところ、次のような回答が寄せられました。

夢の国、カップル、花火、ホスピタリティ、人混み、舞浜、クラブ33、ポップコーンの良い匂い、パレード、ミッキー、ウォルト・ディズニー、シンデレラ城、デート、非日常のワクワク、行列、たくさん歩くなど

いかがでしょうか。「それは思いつかなかった」「自分が思いついたのと一緒だ」など、色々な発見があったことと思います。

ここでもう一つ考えてみてほしいことがあります。

今、あなたが「ディズニーランド」と聞いて思い浮かんだ答えに共通するものは何だったかということです。

ある人は、「人混み」「行列」「にぎやか」「パレード」と答えました。その場合、「目に見えること」と「耳で聴こえること」を重視していることがわかります。

またある人は、「ミッキー」「シンデレラ城」「夢の国」「舞浜」と答えました。この人の場合は「情報」を重視していることがわかります。情報重視の人も、基本は目に見えることを大切にしていると言えるでしょう。

人間心理とコミュニケーションに関する学問・NLPでは、人が大切にしているバランスを「視覚タイプ」「聴覚タイプ」「身体感覚タイプ」の3つに分けて説明しています。

「視覚タイプ」の人は、何かをイメージするときに「目で見たもの」を重視。視覚的な表現を大切にします

「聴覚タイプ」の人は、何かをイメージするときに「音」を重視。「言葉」で表現する情報を大切にします

「身体感覚タイプ」の人は、何かをイメージするときに「自分の身体で体感したこと」を重視。感覚的な表現を大切にします

この3つのタイプの人それぞれが「ディズニーランド」と聞くと、たとえば次のようなものを思い浮かべる傾向にあります。あなたがメンバーとやりとりするときも、このタイプ分けが使えます。

視覚タイプ:シンデレラ城、夢の国、ミッキーマウス、パレード など
聴覚タイプ:音楽、人混み、にぎやか など
身体感覚タイプ:楽しい、アトラクション、デート、ワクワク など

人はそれぞれ、同じことを聞いても受け止め方が異なります。このような「感覚のギャップ」が、相手とのコミュニケーションに大きな影響を及ぼすのです。

もともと人は、「人の話を聴くときは相手の目を見るべき」「自分から質問しないのはやる気がないからだ」といった“自分ルール”を抱えています。

ところが、他の人が同じようなルールを抱えているとは限りません。

リーダーは常に自分ルールを疑い、メンバーにそのルールを押し付けてしまっていないかを振り返る必要があります。

そしてふだんから、相手が「どの感覚を優位にして物事を考え、表現しているか」を探ること。目の前の人が大切にしている感覚を知ることができれば、伝え方や接し方も変わってきます。コミュニケーションの質も、格段にアップするでしょう。

二流のリーダーは「自分ルール」にこだわる
一流のリーダーは相手の「自分ルール」を知ろうとする

最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす
鈴木颯人(すずき・はやと)
1983年、イギリス生まれの東京育ち。脳と心の仕組みを学びながら、勝負所で力を発揮させるメソッドを構築。金メダリストから学生アスリートまで、野球、サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによってパフォーマンスを激変させるアスリート、チームが続出中。スポーツ指導者や選手の親へのコーチングも好評で、「70歳の教え子を昇段させた」など、うれしい報告が続々届いている。15万人を超えるTwitterフォロワーに日々メッセージを発信中。

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