(本記事は、鈴木颯人氏の著書『最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす』KADOKAWAの中から一部を抜粋・編集しています)

反対意見を言いたいときほど「遠回りクエスチョン」が効く

クエスチョン
(画像=Rasdi Abdul Rahman/Shutterstock.com)

会議で皆の意見がバラバラ。自分と相手の意見が正反対。

そんなとき、ついストレートに「それには反対です」「ダメです」「賛成できません」といった言葉を伝えたくなりますが、リーダーが反対意見をストレートに伝えてしまうと、相手がショックを受けたり、発言するモチベーションを一気になくしたりしてしまうかもしれません。

そこでおすすめなのが、「遠回りクエスチョン」

相手の出したアイデアのメリットとデメリットを答えてもらうことで、自然な形で結論へと導く方法です。

先日、私の会社のスタッフのIさんと、セミナーの運営方法について打合せをしていました。その中で、「質問のタイミング」に議論が及びました。

セミナーでは通常、来場者の質疑応答は最後に行われます。しかし、気づいたときにその場で質問できたほうが、疑問がその場で解消できて良いよね、という話になったのです。

するとIさんはすかさず、「セミナー中にグーグルフォームを使ってその場で質問をシェアしてもらうのはどうか」というアイデアを考えてくれました。

これを聞いて、私の中では即座に「NO」の文字が浮かびました。

セミナー中、参加者がスマートフォンを見ると、注意が散漫になりやすく、話に集中しづらくなってしまうからです。

しかしそれをそのまま伝えると、Iさんの意欲を削ぐだけでなく、チャンスの芽を摘むことにもなります。

そこで私は「そのやり方だと、たしかにすぐ質問できるよね。じゃあ逆に、デメリットって何があるかな?」と聞いてみました。

するとIさんは、「セミナー中にスマホをいじることですかね……」と答えてくれました。私もその通りだと思ったので、続けて「そのデメリットを克服するにはどうしたらいいと思う?」と尋ねました。

彼の答えは「セミナーの休憩時間に入力してもらえばいいんじゃないですか?」。「ナイスアイデア!」と思った私は、その方法を取り入れることにしたのです。

最初にIさんがアイデアを出してくれたタイミングで「NO」を突きつけていたら、どうなっていたでしょうか。

おそらく、最終的なグッドアイデアにたどり着くことはなかったでしょう。

それどころか、Iさんはせっかくのアイデアを否定され、やる気を失っていたかもしれません。

メンバーにアイデアを求めると、一人では思いつかないようなアイデアが集まってきます。前例がないと、つい「NO」と言いたくなる気持ちもよくわかります。

しかし、そこで頭ごなしに否定するのはナンセンス。

集まったアイデアのメリットはもちろん、デメリットを埋める方法を一緒に考えることで、リーダーの中にある「思い込み」を手放すことができます。

結果として、自分では思いつかないようなアイデアを取り入れることができ、進めている仕事が今以上にやりやすくなるかもしれません。

アイデアのデメリットを克服する方法を聞いてみて、その場で答えが出なければ後日の宿題にするのも良いでしょう。

大切なのは、お互いが目指すゴールに近い方法を見つけることです。

頭ごなしに否定してしまっては、せっかくのアイデアの種も花開くことはできません。

反対意見が出たときほど、「そのメリットとデメリットは何だろう?」と冷静に尋ねること。一見遠回りに見える質問が、相手のアイデアを、より良いものに高めていきます。

二流のリーダーは冴えない意見をすぐ否定する
一流のリーダーは否定する前にデメリットを聞く

手強い相手には「なりきりクエスチョン」が効く

職場には、アイデアをどんどん出してくれるタイプの人もいれば、マイナス面にばかり言及したり、文句ばかり言ったりするタイプの人もいるかもしれません。

「デメリットは何ですか?」と聞いても、要領を得ない可能性があります。

そんなときにおすすめなのが、「なりきりクエスチョン」

「もしあなたがリーダの立場だったらどうしますか?」などと、相手に自分と同じ立場に立って、考えてもらうのです。

たとえば、職場に早く帰る人と、そうでない人がいるとしましょう。

最近では働き方改革の風潮もあり、世代間で価値観のギャップが見受けられます。

「会社は定時に上がって、終業後は自分の時間を楽しみたい」という人もいれば、「残業は当たり前。困っているメンバーがいたら手を貸す」という価値観の人もいます。そんな中、会社として残業しない方針に転換した場合、仕事が遅いメンバーに手を貸してほしいと思っても、リーダーとしては頼みづらいと思います。

ではどうすれば、皆が気持ち良く協力してくれるようになるでしょうか。

まずは、シンプルに意見をあおぎます。

「早く帰るためには、どうしたらいいと思う?」と問いかけ、アイデアを「一緒に考える」状況を作ります。難なくアイデアが出た場合は、先ほどの項目で紹介した「そのアイデアのデメリットはどんなところ?」という遠回りクエスチョンも併用し、リーダーも納得できる形でアイデアを実用化できると最高です。

相手が文句ばかり言ってなかなか協力してくれないタイプのときは、「なりきりクエスチョン」の登場です。

「××さんがリーダーの立場だったらどう思う?」

と投げかけ、ロールプレイングしてもらいます。

「そんなこと、急に言われてもわかりません」

と言われた場合でも、「じゃあ次回の打合せまでにちょっと考えてみてくれないかな」と宿題を投げかけることで、アイデアを待つのも効果的です。

ふだん、「どうせ××さんは文句を言ってばかりで動かないだろう」と周りから思われている人でも、実は様々なアイデアを持っているケースがあります。相手が意見を言いやすいように、どんなアイデアでも受け止める空気を作ることは大切です。

仮に相手の答えた内容がいまいちでも、「なるほど、そういう考え方もあるよね」と、まずは受け止めてください。そのうえで、「そのアイデアを実現するには、どうすれば良いと思う?」と、さらに問いかけましょう。

自分と違う意見を受け止め、大切にしようという意識を心がけるだけで、少しずつ人間関係は良くなっていくはずです。

二流のリーダーはすぐに意見を求める
一流のリーダーは意見が出てくるまで待つ

最高のリーダーは「命令なし」で人を動かす
鈴木颯人(すずき・はやと)
1983年、イギリス生まれの東京育ち。脳と心の仕組みを学びながら、勝負所で力を発揮させるメソッドを構築。金メダリストから学生アスリートまで、野球、サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、そのコーチングによってパフォーマンスを激変させるアスリート、チームが続出中。スポーツ指導者や選手の親へのコーチングも好評で、「70歳の教え子を昇段させた」など、うれしい報告が続々届いている。15万人を超えるTwitterフォロワーに日々メッセージを発信中。

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