令和元年12月12日に自由民主党・公明党から令和2年度税制改正大綱(以下、大綱)が発表され、同12月20日に閣議決定されました。今回は大綱の中から、確定拠出年金やつみたてNISAに関する事項を取り上げ、みなさんの今後のライフプランにどういった影響があるのか、ご説明していきます。

企業型DC、iDeCoともに加入可能期間が延長へ

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(画像=PIXTA)

今回の大綱により、企業型DCは厚生年金被保険者であること、またiDeCoについては国民年金被保険者であること、がそれぞれ加入の条件となります。

これまで、企業型DCは同一事業所で継続して使用されている65歳未満の厚生年金被保険者であることが加入の条件になっていましたが、継続して使用されているかに関わらず、70未満の厚生年金被保険者という条件に変更になりますので、加入可能期間、つまり積立期間が伸びることになります。

また、iDeCoについてもこれまでは60歳未満の国民年金被保険者という条件でしたが、今後は、60歳以降でも国民年金被保険者であれば加入可能になります。つまり、サラリーマンなどの国民年金第2号被保険者の方でしたら、65歳未満であれば継続できるようになるわけです。一方、自営業者などの国民年金第1号被保険者や、サラリーマンなどの被扶養配偶者である第3号被保険者は、60歳以降で国民年金に任意加入(年金納付済み期間が40年(480月)に満たない等の条件を満たす方が対象)している期間は継続できるようになります。

人生100年時代と言われ、今後も寿命が伸びていくと予想されていますので、このように加入可能期間が延長されて、より使いやすい制度になるのはいいことだと思います。

確定拠出年金の受給開始上限年齢を70歳から75歳に5歳引き上げ

さらに企業型DC、iDeCoともに、これまでは原則、拠出終了後の60歳~70歳の間に、一時金、年金、もしくはそれらの組み合わせという形で受給を開始するというルールになっていましたが、この受給開始を選択できる期間が75歳までと5年間延長されることになります。

資産運用をするのはいいけど、自分が受け取る時期にリーマンショックみたいなものが来たらどうなるんだ?!というご懸念をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。今回、受給開始時期の選択期間が75歳までと15年間になれば、市場環境の回復を待つという選択肢がさらに広がりますので、リスクが下がると考えられるのではないでしょうか。

サラリーマンのiDeCo加入が容易に

これまでも、企業型DCに加入されている方がiDeCoに加入することは一部可能ではあったのですが、労使合意に基づく規約がある場合といった条件があったため、実際に加入できる方はかなり限定的でした。それが今回の改正により、企業型DCに加入されている従業員本人が希望すれば、規約の定めなしにiDeCoに加入できるようになります。

老後に向けて私的年金の積立額を増やしておきたいという方にとっては、税制上有利なiDeCoも利用できるようになるわけです。

退職・制度変更に伴う資産移換(ポータビリティ)の選択肢拡大

一般的に、ある年金制度の年金資産を別の年金制度に移換できることを年金のポータビリティと呼んでいます。どの年金制度からどの年金制度へ移換できるかは、法律で定められているわけですが、今回その移換先の選択肢が拡充されることになります。

具体的には、確定拠出年金に関連して、次のような2つの移換が可能になる予定です。

確定給付企業年金制度(DB)の終了時に、その制度からiDeCoへの移換
企業型DCに加入していた方が退職等される際に通算企業年金制度への移換

このような資産移換を利用する機会は人生でそれほど多くはないかもしれませんが、選択肢が拡大するというのはいいことですね。

つみたてNISAの積立可能期間が5年間延長

これまで確定拠出年金制度についてご説明してきましたが、最後につみたてNISAについても確認しておきたいと思います。

これまでつみたてNISAを利用しての積立が行えるのは2037年(令和19年)までと定められていましたが、今回の大綱により、5年間延長されて2042年(令和24年)までになります。つまり、今からつみたてNISAを始める方であっても、非課税枠である800万円(40万円/年 × 20年間)を最大限に利用できることになります。

なお、つみたてNISAと並んで利用されている一般NISAについても同様に5年間延長されますが、制度の内容は見直され、新NISAとして生まれ変わることになっています。

最後に

今回は、令和2年度の税制改正大綱の中から、確定拠出年金やつみたてNISAについてご説明致しました。特に、確定拠出年金についての今回の変更は、まさに人生100年時代を見据えた年金制度の変更と言えるのではないでしょうか。

現役引退後、セカンドライフの期間が長期化していく中で、20年、30年といった長期的なライフプラン、そしてそのライフプランを実現するためのマネープランの重要性がますます高まっていくと考えられます。税制優遇のある確定拠出年金やつみたてNISAといった制度を上手に利用しながら、人生100年時代に備えていって頂ければと思います。

財務省 – 税制改正の概要

(提供=auアセットマネジメント)