M&Aを検討している企業にとって、心強い味方となる存在が「M&A仲介会社」だ。しかし、業者ごとにサービス内容が異なるため、業者選びで迷っている経営者は多いだろう。そこで本記事では、特に押さえたい仲介会社と比較ポイントを徹底的にまとめた。

M&A仲介会社とは?タイプ別の特徴や選び方のポイント

実績豊富なM&A仲介会社
(画像=PIXTA)

M&A仲介会社とは、主に会社・事業を売却する売り手のM&Aを総合的にサポートしてくれる業者だ。サービス内容は仲介会社ごとに大きく異なり、買い手側のM&Aをサポートする業者もいれば、売り手に特化したサービスを提供する業者も存在する。

仲介会社がサポートするのは、M&Aの相手探しだけではない。業者によっては企画・立案の検討段階から、クロージングまでを幅広くサポートしてくれるため、M&Aの経験が乏しい経営者でもスムーズに各工程を進められる。デューデリジェンスをはじめ、専門的なサポートを受けられる点も大きな魅力だ。

M&A仲介会社のタイプ

そんなM&A仲介会社は、サービス体系によって大きく以下の2タイプにわけられている。

M&A仲介会社のタイプ概要
アドバイザリー型売り手、もしくは買い手から依頼を受け、どちらか一方の希望条件を満たすためにサービスを提供する業者。 どちらの立場になっても、納得できる形でM&Aを進められる。
仲介型売り手と買い手の間で、中立的にM&Aをサポートしてくれる業者。成約を重視する業者が多いため、成約までのコストを抑えやすい。

また、M&A仲介会社を選ぶ際には、上記のタイプ以外にも意識したいポイントがいくつかある。特に押さえておきたいポイントとしては、以下の点が挙げられるだろう。

○M&A仲介会社選びのポイント
・料金体系(着手金の有無や成功報酬の金額など)
・これまでの実績
・対応している地域や業種の傾向
・社内に専門家がいるかどうか など

料金体系については言うまでもないが、より納得できる形でM&Aを進めるには、ほかのポイントにもこだわる必要がある。各仲介会社には得意ジャンルがあるため、「自社に寄り添ったサービスを提供してくれるかどうか?」は強く意識しておきたい部分だ。

より納得できる形でM&Aを進めるために、上記でまとめた選び方のポイントを参考にしながら、実際のM&A仲介会社の情報をチェックしていこう。

M&A仲介会社がやってくれることとは?

M&A仲介会社が提供するサービスについて、もう少し詳しく解説していこう。

M&A仲介会社は、M&Aの計画を立てる段階から相手先との交渉まで、幅広い工程をサポートしてくれる。実際のサービス内容は業者によって異なるが、具体的には以下で挙げるような業務を任せられるケースが多い。

  • M&Aスキームの構築
  • M&Aの候補先の提供や、相手探しのサポート
  • 相手先との交渉
  • 売却側の企業価値の算定
  • デューデリジェンスの支援
  • 契約書類の作成

上記はいずれも専門知識が求められる業務なので、中小企業が自力でM&Aを進めることは容易ではない。特に契約関係は難しく、仮に知識がない状態で契約書類を作成すると、必要な条項が漏れることで不利な立場になってしまう恐れがあるため、中小企業の多くはM&A仲介会社などの専門家を頼っている。

また、依頼先によっては「M&A後の統合業務(PMI)」がサポート内容に含まれている点も、事前に理解しておきたいポイントだ。専門家がPMIをサポートしてくれるだけで、M&A後の事業はぐっと安定しやすくなる。従業員や取引先の不安を払しょくすることにもつながるので、業者選びでは「PMIのサポートが含まれているか?」についても重視しておきたい。

1.日本M&Aセンター

士業専門家や専門チームを用意することで、課題の発見からアフターフォローまでM&Aを手厚くサポートしてくれる仲介会社。さらに顧客により多くの情報を提供するために、日本全国の銀行や会計事務所と連携を結んでいる。

会社の価値だけではなく、経営者の想いや背景を意識したマッチング支援を行っているため、会社に特別な思い入れのあるオーナーも安心して利用できるはずだ。

会社名株式会社日本M&Aセンター
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系着手金+成功報酬
成功報酬はレーマン方式を採用
実績等・成約実績…累計5,000件超
・年間支援数…770件
主な特徴・専門家が成約後までサポートしてくれる
・9割の地方銀行、899の会計事務所と連携
・日本全国に加え、アジア全域にも対応
公式ホームページhttps://www.nihon-ma.co.jp/

シンガポールに拠点を構えている点も、日本M&Aセンターの大きな特徴のひとつ。地域にこだわりがない場合は、海外企業も候補に加えることで相手企業の選択肢をぐっと増やせる。

2.M&A総合研究所

豊富な実績を持つ公認会計士や弁護士と連携し、フルサポート体制でM&Aを手助けしてくれる仲介会社。さまざまな業種・規模に対応しており、さらに完全成功報酬型の業者であるため、スムーズかつ低コストでM&Aを進められる点が魅力的だ。

価格面での交渉にも力を入れており、2019年の最新実績では希望価格から平均1.2倍ほどの譲渡価格を実現している。

会社名株式会社M&A総合研究所
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系完全成功報酬型
成功報酬はレーマン方式を採用
実績等・成約率…70%
・相談実績…年間3,600件
・成約までの期間…平均3ヶ月~6ヶ月
主な特徴・日本全国、さまざまな業種に対応している
・専門家による手厚いサポートを受けられる
・希望価格以上の譲渡価格を期待できる
公式ホームページhttps://masouken.com/

譲渡企業のオーナーにとって、特に譲渡価格に関する実績は心強い。「少しでも高く売却したい」「正当な評価を受けたい」と考えている場合は、ぜひ検討しておきたい選択肢だろう。

3.ストライク

株式会社ストライクは、最先端のマッチングシステム「M&A市場SMART」を、国内でいち早く導入した仲介会社だ。このシステムによって、あらゆる地域・業種からマッチング相手を探せるので、相手探しにかかる時間を大きく節約できる。

また、日本全国にネットワーク・拠点を有しているため、地方企業でも気軽に相談しやすい。

会社名株式会社ストライク
仲介会社のタイプ仲介型
報酬体系未公開(相談料は無料)
実績等成約実績…2019年は月間8件~10件ほど
譲渡案件数…121件
主な特徴・公認会計士が主体の仲介会社
・地域や業種をこえてマッチング相手を探せる
・地方企業でも相談しやすい環境が整えられている
公式ホームページhttps://www.strike.co.jp/

同社のマッチングシステムでは、売却情報を掲載するだけで多数の買い手にアピールできる。手間をかけずに相手企業の選択肢を増やしたい売り手企業は、ぜひ検討しておきたい業者だろう。

4.M&Aキャピタルパートナーズ

2010年頃から着実に実績を積み重ね、2020年現在では東証一部上場を果たしている仲介会社。社内外の専門チームと連携をとりながら、中小企業に寄り添った形でサービスを提供し続けている。

中間報酬や成功報酬はあるものの、相手企業と基本合意を結ぶまで一切のコストが発生しない点も、中小経営者にとっては嬉しいポイントだ。

会社名M&Aキャピタルパートナーズ株式会社
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系中間報酬+成功報酬
成功報酬はレーマン方式を採用(株式譲渡対価のみが対象)
実績等・成約件数…2019年9月期で累計596件
・メディアでの紹介実績が多数
主な特徴・東証一部上場の信頼感がある
・中小企業に寄り添ったサービスを提供している
・負債総額や有利子負債が成功報酬の算出に含まれない
公式ホームページhttps://www.ma-cp.com/

専任コンサルタントが各案件を担当してくれるなど、初めてのM&Aを安心して任せられる環境が同社には整っている。実績も豊富であるため、「安心できる仲介会社を選びたい」と考えている経営者にぴったりだ。

5.M&Aネットワークス

売り手企業を専門的にサポートしている、完全成功報酬型の仲介会社。経営者利益の最大化に加えて、潤沢なネットワークを巧みに活用することでスピーディーな成約も実現している。

また、検討段階での財務サポートから経営統合(PMI)まで幅広くサポートしてもらえる点も、M&Aネットワークスならではの大きな魅力だ。

会社名株式会社エスネットワークス
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系完全成功報酬型
成功報酬は、譲渡対価を基準として算出
実績等・M&Aに限らず、幅広い経営課題に対して実績あり
・中小企業やベンチャー企業を、約20年サポートし続けている
主な特徴・売り手に寄り添ったサービスを提供している
・公認会計士などの専門家に、PMIまで幅広くサポートしてもらえる
・ベトナムを起点に、アジアにも拠点を構えている
公式ホームページhttps://es-ma-networks.jp/

M&Aの相手探しに限らず、経営面でさまざまな課題を抱えている売り手企業にとって、同社は非常に心強い存在といえるだろう。

6.山田コンサルティング

1億円未満から1,000億円以上まで、あらゆる規模の案件に対応している仲介会社。M&Aを一時的なイベントにしないために、統合支援からシナジー創造まできめ細やかなサポートを提供している。

小売や建設、医療法人、学校法人と、さまざまな業種の実績を積み重ねている点も利用者の安心感につながっているポイントだ。

会社名山田コンサルティンググループ株式会社
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系手数料+成功報酬
実績等・M&A実績…累計1,200件以上
・コンサルティング実績…累計15,000件以上
主な特徴・あらゆる規模、業種の案件に対応している
・相手探しだけではなく、成約後のサポートも丁寧
・法規制や商慣習まで考慮した提案をしてくれる
公式ホームページhttps://www.ycg-advisory.jp/

何よりも「クライアントの納得感」にこだわった業者なので、質の高いM&Aを求めている場合はぜひ検討しておきたい。

7.クラリスキャピタル

あらゆる業種に対応している、中堅中小企業専門のM&A仲介会社。親身なスタッフによる迅速な対応も嬉しいポイントだが、特に大きな魅力はリーズナブルな料金体系だ。

コストを抑えやすい業者であるため、取引価格1億円未満の小規模案件であっても気軽に相談できる。

会社名株式会社クラリスキャピタル
仲介会社のタイプ仲介型
報酬体系完全成功報酬型
取引価格が1億円以下の場合は、報酬金額が固定
実績等成約実績…2019年8月までで23件
主な特徴・利用コストを抑えやすい
・無料の個別相談会を随時開催している
・株式譲渡や事業譲渡など、さまざまなタイプのM&Aに対応
公式ホームページhttps://clarisc.co.jp/

小規模案件の仲介を依頼する場合、予想以上にコストが膨らんでしまうケースは珍しくない。その点、同社は業界内でもリーズナブルな報酬体系を実現しており、1億円以下の取引価格であれば料金が固定であるため、コスト面に不安を感じることなく依頼できるだろう。

8.インターリンク

特別な顧客を一切持たず、すべての顧客に対して公平なサービスを提供し続ける「顧客至上主義」の仲介会社。社内には経験豊富なスペシャリスト集団が存在しており、これまでに培ったノウハウを活かしながら最適な形でM&Aをサポートしてくれる。

着手金は発生するものの、デューデリジェンスなど専門家が必要になる工程もサポートしてもらえるため、専門家を探す手間も省けるだろう。

会社名インターリンク株式会社
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系着手金+成功報酬
(※成功報酬の中に、手数料が含まれる形)
実績等成約実績…上場企業や海外企業に関する実績あり
主な特徴・常に公平なサービスを受けられる
・専門的な工程もサポートしてもらえる
・成約に力を入れている(成功重視主義)
公式ホームページhttp://www.interlink-ma.co.jp/index.html

同社では、企画・立案からクロージングまでのトータルサービスを提供しているため、「実はM&Aについてあまり知らない…」と悩んでいる経営者に最適な選択肢だ。

9.MAパートナーズ

仲介事業に加えて、アドバイザリーや調査、監査、企業価値評価書の作成など、M&Aに関するあらゆるサービスを提供している仲介会社。これまで培ったノウハウを活かして、大学や上場企業の役員向けに講習会なども開催している。

M&Aの成功報酬は別途必要だが、コンサルティング料は固定金額(月額50万円)であるため、事前にコストを予測しやすい点も魅力的なポイントだ。

会社名株式会社MAパートナーズ
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系M&Aは完全成功報酬型(レーマン方式)
コンサルティング料は月額50万円
実績等・成約実績…累計80件以上
・中国や欧州など、海外案件の実績あり
主な特徴・M&Aに関するあらゆるサービスを提供している
・月額50万円でコンサルティングを受けられる
・デューデリジェンスの実施もサポートしてくれる
公式ホームページhttp://www.ma-partners.co.jp/index.html

規模はそれほど大きくないが、さまざまな地域・業種の実績を積み重ねているため、特殊な案件も相談しやすい仲介会社といえるだろう。

10.インテグループ

中堅・中小企業のM&A支援において、豊富な実績をもつ完全成功報酬型の仲介会社。独自のネットワークと情報力を活かすことで、専門性の高い案件も多々こなしている。

基本的には3ヶ月~6ヶ月でのM&A成立を目指しているので、特にスピード感を求めている経営者には最適だ。もちろんM&Aの質にもこだわっており、金融機関や会計事務所と連携することで、常にベストな相手先の候補を提供している。

会社名インテグループ株式会社
仲介会社のタイプアドバイザリー型
報酬体系完全成功報酬型
成功報酬の最低額は500万円
実績等・売上規模1億円~150億円まで、さまざまな規模の案件をこなす
・IT系をはじめ、専門性の高いM&A実績も多数
主な特徴・企業から直接ニーズを聴取するなど、情報収集に注力している
・3ヶ月~6ヶ月でのM&A成立を目指している
・売り手のメリットを最大化させるサービス体系
公式ホームページhttps://www.integroup.jp/

インテグループは完全成功報酬型であるため、着手金や中間金、月額報酬は一切発生しない。つまり、株式譲渡や事業譲渡が実行されるまでコストが発生しないので、費用面に不安を感じている経営者でも安心して相談できるはずだ。

自社に一番あった仲介会社を探すポイントは?

自社に最適なM&A仲介会社を探すには、いくつかポイントを押さえる必要がある。そこで以下では、中小企業が特に押さえておきたいポイントを3つまとめた。

業者探しに向けて動き出す前に、以下のポイントをしっかりとチェックしておこう。

1.仲介会社が得意とする業種・規模を確認する

M&A仲介会社が得意とする業種・規模は、業者ごとに大きく異なる。M&Aは業種や案件の規模によって、求められる専門知識が全く変わったものになるため、自社と同じ業種・規模の案件を多く取り扱っている仲介会社を選ぶことが重要だ。

たとえば、大企業のM&Aを多く取り扱っている業者でも、中小企業のM&Aを得意とするかはわからない。一方で、中小企業間のM&A実績が豊富な業者は、中小企業ならではの不安や悩みを熟知している可能性が高いため、各仲介会社の実績は細かく確認をしておこう。

2.必要なサポート範囲を事前に考えておく

前述でも紹介した通り、M&A仲介会社のサポート範囲は業者によって異なる。たとえば、サポート範囲が広い仲介会社を選べば、M&Aの立案から実行まではもちろんのこと、税金対策やPMIなどの工程でも大きな力になってくれる。

したがって、仲介会社に任せたい業務や、「どの工程までのサポートが必要になるか?」については、事前に細かく想定しておきたい。なお、サポートが充実するほど費用は高くなる傾向にあるため、予算との兼ね合いも忘れないようにしよう。

3.自社のM&Aに必要な知識と専門家ネットワークを、ある程度把握しておく

M&Aをスムーズに進めるには、M&A自体の専門知識に加えて、その業界の専門知識やノウハウも必要になる。つまり、ただM&Aに詳しいだけでは成功に導くことは難しいので、当事者となる企業は「自社のM&Aに必要な専門知識」をあらかじめ把握しておくことが必要だ。

求められる専門知識の内容が分かれば、必要になる専門家ネットワークにも目星がつく。たとえば、新たな法律問題が浮上しそうであれば弁護士のネットワーク、税金問題が気になる場合には税理士のネットワークを有した仲介会社を選ぶと、安心してM&Aに取り組めるだろう。

M&A仲介会社が独自に築いているネットワークは、その業者の得意分野にも影響してくる。したがって、自社のM&Aに関する情報を整理した後には、時間をかけて各仲介会社のネットワークを調査しておきたい。

最適な仲介会社を選ぶには、経営者自身にも基礎知識が必要!

本記事でまとめた情報を見てわかる通り、M&A仲介会社にはさまざまな比較ポイントがある。実績豊富な業者に依頼をすれば安心できるかもしれないが、必ずしも最適な形で成約できるわけではない。

自社に寄り添ってくれる仲介会社を見極めるには、「どんなサービスが必要になるか?」「どんな形でのM&Aを求めているか?」をしっかりと考えておくことが重要だ。経営者自身もM&Aに関する基礎知識を身につけたうえで、条件に合致した仲介会社を選んでもらいたい。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部