(本記事は、細入 徹氏の著書『将来の年金不安を解消したいなら今すぐiDeCo・つみたてNISAをはじめなさい』自由国民社の中から一部を抜粋・編集しています)

プロなら市場を出し抜けるの?

将来の年金不安を解消したいなら今すぐiDeCo・つみたてNISAをはじめなさい
(画像=TMLsPhotoG/Shutterstock.com)

■ あなたはプロの腕に託しますか、市場の動きに委ねますか?

投資信託は大きく分けると、インデックスファンド(「パッシブファンド」とも呼ばれています)とアクティブファンドとに分かれます。

インデックスファンドとは日本株式で言えば、日経平均とかTOPIX(トピックス、東証株価指数)のような株式市場の推移を示す指数と同じ値動きをするようにつくったファンドです。日経平均は大ざっぱに言うと一部上場企業約2000銘柄中の代表的な225銘柄の株価の平均を示しています。トピックスはその約2000銘柄の時価総額(それぞれの銘柄の株価と株数をかけて時価を出し、それを総合計したもの)の推移を示しています。

インデックスファンドはプロが苦労して値上がりしそうな銘柄を探し出しているのではなく、市場の銘柄の構成をそのまま模倣しているだけなので、当然費用が安くなります。

一方、アクティブファンドは運用のプロの力でこれから成長しそうな銘柄や割安な銘柄を探し出し、市場を出し抜いた運用を目指すファンドです。エコノミスト、運用戦略を立てるストラテジスト、企業調査の専門家であるアナリスト、そしてそれらの情報を背景に運用を担当するファンドマネージャー等の総力の結晶として高度な運用力を発揮しようとしています。高い運用成果を期待できるかもしれませんが、プロが絡むので当然、コストが高くなります。

■ プロでもなかなか市場を出し抜けない!

さて、図表7−6は、左が日本の株式市場、右が外国の株式市場で、二十銘柄前後のアクティブファンドをランダムに引っ張り出し、リーマンショックを挟んだある期間の推移を市場の指数(インデックス)と比較したものです。

どれも市場と全く同じ動きをしています。プロに任せれば、市場が低迷してるときに市場とかけ離れた動きで一人、市場を出し抜いた運用をしてくれるなどといことは考えにくいのが現実です。

ましてアクティブファンドは費用が高くなるので、左右どちらの図でも分かるように、市場に負けているケースが多いのも事実です。

ところで、左の日本株式のグラフで図中ではグラフが重なり合って判別できないのですが、この間、かなり頑張ってインデックスファンドにくっついているファンド(Aファンドと仮称します)があり、次項でこのファンドに焦点を当ててみます。

いいファンドならずっと勝ち続けられるの?

■ 日本株式市場で頑張ってきたアクティブファンドの場合は?

図表7-7は前項の日本株のAファンドの推移です。左のグラフの赤い太線がAファンドで、○印がインデックスファンド、その下の7本ほどがアクティブファンドです。2000年以降のITバブルの崩壊時に頑張って僅かな落ち込みで乗り越えた効果が後々まで活かされています。

右上のグラフはその約5年後の2005年にスポットで運用を始め出した場合の推移でアクティブファンドは18本、右下は2010年に始め出した場合でアクティブファンドは25本描かれています。

いずれも、他を出し抜くような急激なスタートダッシュがかかるわけではなく、他のアクティブファンドと同じような動きの中に収まっている様子がうかがえます。

ところで、右下の図では随分たくさんのファンドが描かれているのに、年代をさかのぼるたびに段々数が少なくなっているのは、日本の投資信託の歴史がそれほど長くないからです。2010年に存在していたファンド25本中で2005年に既に存在していたのは18本、それが2000年までさかのぼると僅か7本しか残っていませんでした。

■ 名ファンドといわれた外国株式ファンドの場合は?

図表7−8で、名ファンドと言われた外国株のBファンドを採りあげてみました。

このファンドも前項のAファンドと同様に出だしで非常に好成績を収めましたが、5年後、10年後から始め出した場合は、その他のアクティブファンド群と一緒になってしまいました。それでも、インデックスに非常に近い動きになっていて、Aファンド同様に頑張ってきたファンドには違いありませんが。

ちなみに、「インデックスと同じ成績だったらインデックスファンドと変わらないじゃないか」と思うかもしれません。確かにインデックスファンドはインデックスと同じ動きをさせていますが、当然ながら商品としてのコストがかかりますから、インデックスファンドはインデックスそのものより若干低い推移を示さざるを得ません。

■ いいファンドなのに、なぜ頑張り続けられないの?

例えば名ファンドと言われたBファンド。非常に目利きのいい運用会社が、1万以上の銘柄の本来あるべき価格を割り出して、あるべき価格の70%以下の割安になっている銘柄を30前後拾いだし、やがて歪みが埋まって価格が100%に戻ったら売るような運用で断トツの成績を挙げました。

当然、みんなが注目し、お金がどんどん集まってきます。そうなったら、自分が買い付けているだけでも値段がどんどん釣り上がってしまいますし、そうそう歪みの大きな銘柄は掘り出せません。結局は、ファンドが大きくなると多くの実例が示すように段々に、インデックスに近づいていかざるを得ない訳です。

こうしてみると、私達が長期で年金づくりをしていくのに目先で好成績な銘柄を追いかけ続けたとしても、長期の成果にどれだけ反映できるのか疑問だと思いませんか?

こうしたことから最近の日経新聞の調査(2017年4月16日(日)のトップ記事)では、日本で買われている投資信託の8割はインデックスファンドで占められているとのことです。

将来の年金不安を解消したいなら今すぐiDeCo・つみたてNISAをはじめなさい
細入 徹
1級DCプランナー、中小企業診断士。一般社団法人確定拠出年金アドバイザリー協会代表理事、細入事務所代表。大学卒業後エレクトロニクス、出版を経てFP業界で大手中堅生保各社を対象にソフト開発に従事。平成10年に事務所開設。平成29年11月に社労士、公認会計士等と一般社団法人を設立し、中小企業向けの確定拠出年金の普及と確定拠出年金加入者の8割・9割が堅実に運用を始め出すライフプラン・投資教育の普及、及び退職金・企業年金制度の総合サポートに注力中。広く講演活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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