「強い者、頭の良い者が生き残るのではない。変化するものが生き残るのだ」とダーウィンは言った。この進化論の哲学は今後、2020年以降の世界でも息づいていくだろう。
筆者は経営者だが、「経営者は変化し続けなければいけない」と感じさせられることが多々ある。今回は、経営者が変化し続ける必要性と実践が難しい理由、そして変化する方法を解説する。
変化することは経営者にとっての呼吸と同義
川の流れが止まることがあり得ないのと同じく、この世は一瞬たりとも動きを止めることはない。そしてビジネスの世界は、その傾向がより一層顕著である。高度なテクノロジーによるイノベーションと、グローバルに開かれた市場の影響でますます変化の速度を早めている。
ビジネスを運営する経営者にとっては、変化することは呼吸することと同義だ。変化を止めたものに待つものは「死」だけである。
筆者は田舎に住んでいるが、周囲の経営者をみるとビジネスの時が止まっている人が少なくない。数十年の星霜を重ね、その中で獲得した既存顧客からもたらされる売上で生活をしている。
変化しなくても売上が上がる、というと聞こえはいいかもしれない。だが、ライバルに奪われてしまうことがあるだろうし、顧客が引っ越しをしてサービスを継続できなくなることもあるだろう。
つまり、ビジネスとは穴の空いたバケツに顧客という水が入っているものと同義であり、新たに水を入れ続けなければ、水が枯渇するのはもはや時間の問題なのである。
変化が簡単でない理由
とはいえ、変化は簡単なことではない。人間は本質的に変化を嫌うホメオスタシスがある動物だ。ホメオスタシスとは恒常性を維持する機能で、体の状態を一定に保とうとする生体的働きだ。熱くなれば汗をかいて体温を保ち、寒くなれば体を震わせて体温を下げないようにする。これはホメオスタシスにほかならない。
また原始的な時代では、「変化は命取り」になり得た。見慣れない道を進めば崖から落ちるかもしれないし、見慣れぬキノコを食べれば毒キノコで死ぬかもしれない。
このように本質的に人間は本能レベルで変化を嫌う生き物なのだ。ゆえに、変化し続けることは容易ではないのである。
変化し続ける方法
DNAに刻まれた生存本能は、変化の早い現代では足かせになることがある。変化の重要性を理解しつつも、「どう変わればよいのだろうか?」「変わることができるだろうか?」と変化できない事に悩む経営者も少なくないだろう。
そんな経営者は、今いる環境を変えることをおすすめする。環境を変えることに高度な思考は必要ない。端的に言えば「優秀なビジネスマン」が集う場へ身を置くことである。そうすることで、周りの影響を直に受けることが可能なのだ。
例えば、落ちこぼれ学生がいるとしよう。彼が勉強できないのは、環境が悪いからだ。
筆者は底辺の工業高校出身で、高校時代はひどいものであった。「勉強」とはせいぜい、宿題をまじめにこなすことくらいの感覚で捉えられる。
だが、そんな学生が進学校の生徒が通う予備校へ行くとどうなるだろうか?間違いなく勉強に対する基準値があがる。周囲が平気な顔で10時間、12時間勉強をしている中にいれば、自分もそのくらいするものだと基準が変わるからだ。
筆者は米国の大学に留学をして会計学を専攻したのだが、周りの学生が常日頃から勉強することに仰天した。大学の図書館は夜中2時、3時でも多くの生徒が勉強していたのだ。
そんな環境に身を置けば自然とやる気が出るし「勉強とはこのくらいするのが普通」という基準値へとアップデートされる。そう、すべての変化は基準値の底上げから生まれるのだ。
ゆえに、ビジネスでは稼いでいる人と一緒にいればいい。稼ぐ人はこんなにも働くのか?こんなやり方で稼いでいるのか?と驚かされるはずだ。
かくいう筆者も仕組みで稼ぐことに慣れるまでは、時間を切り売りする労働集約的に働いていた。だが、億を稼ぐ経営者や投資家に出会い、完全に考え方が変わった経験がある。
変化をし続けるには勉強を続けて環境を変える
変化するためには、常に勉強することだ。情報や知識は力である。知らないことは想像できないし、チャンスも得られない。勉強といってもMBAを取りに行くような大層なことはいらない。
ビジネス界で流行っていることや注目されているものを調べ、学ぶだけでも変化の必要性が理解できるのだ。(提供:THE OWNER)
文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)