がんに対する備えといえば以前は保険が一般的でした。しかし最近は「がん団信+不動産投資」と比べて選ぶ人が増加傾向のようです。そこで今回は「そもそも団信とは何か」「がん保険とがん団信を比べたときのメリット・デメリットは何か」について解説します。

がんになった人の半数以上が「収入が減った」と回答

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(画像=A_stockphoto/Shutterstock.com)

はじめに、がんが人生に及ぼす影響を確認しましょう。国立がん研究センター「最新がん統計」によると2014年度における生涯のうちに、がんになる確率は男性62%、女性47%でした。このデータを見る限り「日本人の2人に1人は一生に一度はがんにかかる」といっても過言ではありません。がんで死亡した人数は2017年度で年間37万3,334人です。

日本の人口でたとえると、長野市(37万6,056人:2019年12月1日時点)や奈良市(35万6,027人:2020年1月1日時点)といった中核都市の人口に近い人数が毎年亡くなっているということになります。がんには生命の危機という影響もありますが、それ以外に「収入が減り治療費がかかるため家計が厳しくなる」という深刻な問題もあるのです。東京都福祉保健局が2014年5月に公表した「がん患者の就労等に関する実態調査」によると56.8%の人が「がんになった後、収入が減った」と回答しています。(アンケートは2013年10~11月に実施)

Incomepress編集部
出所:東京都福祉保健局「がん患者の就労等に関する実態調査」

がんは罹患(りかん)リスクが高く罹患後の収入への影響が大きい傾向です。このリスクに対する備えは「がん保険」が主流でしたが、最近では「がん団信+不動産投資」の利用も広がっています。

そもそも「がん団信」とは?

「がん保険は、おおまかな内容について知っているけど、がん団信はよく分からない」といった人多いのではないでしょうか。そこでここでは両者を比較する前に基本情報を確認していきましょう。

団信とは契約者が死亡時にローン残債なしになる仕組み

団信(団体信用生命保険)は、マイホームや不動産投資のローン契約者が亡くなったときに残債をすべて支払ってくれる制度です。一般的な月額支払いの保険と異なり例えばローン金利に0.1%上乗せするなど団信分の金利を上乗せする形で保険料を支払うのが主流ですが、なかには上乗せ金利がないケースもあります。

いずれにしても不動産投資の場合は、団信に加入している契約者が亡くなったらローン残債なしの賃貸物件が相続人へ相続されるのです。相続後、「毎月の家賃収入を家計の助けにする」「物件を売却してまとまった額を得る」といった選択もできます。つまり団信には個人年金や生命保険のような機能があるのです。

がんや生活習慣病になったときに残債を0円にしてくれる団信も

団信の中でも契約者が亡くなったときに加えて、病気で働けなくなったときにローン残債が0円になる疾病団信も人気を集めています。対象の病気は加入するそれぞれの団信で異なり、がんを対象にしたタイプや生活習慣病を対象にしたタイプなどさまざまです。一般的にがん団信といえば、がんになったときにローン残債が0になります。

「がん団信+不動産投資」のメリット

「がん保険」と「がん団信+不動産投資」の違いを比較していきましょう。両者を比べたときに、がん団信のメリットは次の3つが考えられます。

保障額が大きい

がん保険でロングセラーのA社のスタンダードプランは、がんと診断されたときの補償が100万円しかありません(診断給付金+特定診断給付金)。一方、がん団信は仮に2,000万円の賃貸マンションを購入しローン残債1,000万円のときにがんと診断された場合、保険からローン残債分となる1,000万円が支払われます。

継続的な収入が得られる

一般的な掛け捨て型のがん保険を選択した場合は給付金をもらえるものの、生活を継続的に助けてくれるわけではありません。この部分を補うには、毎月一定金額が給付金として支払われる収入保障保険の加入が必要でしょう。「がん団信+不動産投資」の場合は、残債0円に加えてその後の家賃収入が家計の助けになり続けます。

資産運用にもなる

「がん団信+不動産投資」は、がんに対するリスクに備えつつ資産運用にもなるという攻めと守りをあわせ持つ選択です。がんと診断された場合は団信からの保険金で残債が相殺されるため家賃収入は私的年金の代わりにもなります。がん保険を選択した場合は資産運用の機能がないため、がん保険とは別に収入保障保険や個人年金など別の商品の組み合わせを検討することが必要です。

ただし月払いの個人年金や保険に複数加入しすぎると家計の支出が増えるため負担が重くなりやすい点は注意する必要があるでしょう。

「がん団信」のデメリット

がん団信のデメリット(がん保険のメリット)としては以下の2つが考えられます。

先進医療の保障

がん保険の内容は会社やプランで異なりますが、先進医療や抗がん剤治療などをフォローしてくれるものが目立ちます。例えばロングセラーのA社がん保険では、先進医療にかかった技術料の自己負担分の2,000万円まで(通算)が支払い対象です。一方、がん団信の場合は先進医療に対してのフォローがない金融機関の商品もありますので注意が必要です。

そのため先進医療などを検討する際は、がん団信にどのような特約が付帯しているのかを確認することが大切です。金融機関によっては、先進医療や入院特約などがん団信でがん保険に匹敵する保障をしてくれる商品もあるようです。

入院保障

一般的ながん保険には日額の入院給付金がありますが、がん団信には入院時のフォローないものも少なくありません。例えばA社のスタンダードプランのがん保険では入院1日あたり1万円の給付金があります。厚生労働省の2020年1月に発表した「病院報告(令和元年10月分概数)」によると2019年10月の平均在院日数は27.1日ですので、1ヵ月程度の入院による給付金は約30万円となります。

入院保障があれば安心につながりますが、心配な人はがん団信に入院時のフォローがあるかを確認しておくとよいでしょう。

「がん団信」と「がん保険」どちらを選んだら良いのか?

がん団信とがん保険のどちらを選ぶか迷ったときにはどのように判断したらいいのでしょうか。がん団信が向いているのは、がんと診断された後の保障額の大きさや収入減少リスクを抑えることを重視する人といえるのではないでしょうか。特に「配偶者や子どもがいる」「将来的に家族を持ちたいと考えている」という人にはメリットが大きいでしょう。また不動産投資などの資産運用に取り組みたいと考えている人にも向いているといえるでしょう。

逆に「先進医療の保障を重視する」「入院保障を手厚くしたい」という人は從來の「がん保険」のほうが向いているのかもしれません。どちらを選択するにしても自分の現在の状況や将来のプランも合わせて慎重に検討することが大切です。(提供:Incomepress


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