富裕層が実践する子供の教育についてプロの執事(バトラー)に聞く本特集。第3回は子供や家族と過ごす普段の生活の中から垣間見える、富裕層の教育マインドや独自のノウハウについて伺った。一般家庭とは似ているようで異なる、富裕層ならではのやり方とは?(取材・大岡雅弘/写真・森口新太郎)

新井直之さん
フォーブス誌世界大富豪ランキングトップ10に入る大富豪、日本国内外の大富豪・超富裕層を顧客に持つ日本バトラー&コンシェルジュ株式会社の代表を務める傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上に関する講演・研修、コンサルティング、アドバイザリー業務を行なっている。ドラマ版・映画版・舞台版『謎解きはディナーのあとで』、映画版『黒執事』では執事監修、主演の櫻井翔さん、北川景子さん、水嶋ヒロさん、DAIGOさん、西山茉希さんの所作指導を担当。Amazonランキング1位(経営)総合3位を獲得した『執事だけが知っている世界の大富豪58の習慣』(幻冬舎)をはじめ、著書多数。

富裕層や成功者は子供とどう過ごす?

富裕層が実践する子供の教育#03
(画像=森口新太郎、ZUU online編集部)

――富裕層の、特に父親がお子さんと接する機会というのは一般の人よりも多いのでしょうか、少ないのでしょうか?

多いと思いますよ。なぜなら時間の自由がきく方が多いからです。普通の方は仕事に追われたり、ときには単身赴任したりといったことがありますよね。しかし富裕層は事業家の方も多いですし、時間を作ろうと思えば作れるという人が多い。時間はお金で買えるものですので、普通の方よりもお子様と一緒に過ごす時間は長いと言えます。

それに、自ら事業を立ち上げていらっしゃる方だと公私混同ができます。長期の海外出張があるときには、お子様を含めて家族全員を連れて行くことも可能です。

――家族との時間を大切にされている方も多いのでしょうか?

そう感じますね。基本的に、成功している方というのは他者への思いやりがあります。普通、人間は自分のことで精一杯になってしまう部分があると思うのですが、富裕層の方は人一倍他者への思いやりがあり、特に家族への思いは大きいと感じます。親御さんへの感謝の気持ちや、お子様への愛情を強く持っています。

とはいえ、普段の家族との過ごし方は基本的に一般家庭とそれほど変わらないんですよ。違うところを思い浮かべてみると……そうですね、例えば小さい頃からゴルフ、テニスをやらせるご家庭は多いですね。どちらも社交性のあるスポーツですからでしょう。遊びで子供をゴルフの打ちっぱなしに連れて行くような光景は見かけますね。

――コースに連れて行くことは?

小学生くらいのお子様ならあります。4歳くらいで打ちっぱなし、小学生でコースに出るという感じです。テニスなら自分のコートを持っていらっしゃる方もいますので、家族でプレイするわけです。コミュニケーションを兼ねて家族でスポーツをする機会は多いですね。

富裕層の家庭がテレビを見ない理由

――今どきの子供はスマホでゲームをすることもあると思いますが、そのあたりはいかがでしょう。

普通のお子様と同じで、やりますよ。時間制限はあったりはしますが、富裕層のお子様だからやらないということはありません。ただ、一つ特徴的なのは家族全員、あまりテレビを見ないことですね。リビングに一台テレビが置いてはあるのですが、基本的に見ない家庭が多いです。

――テレビでニュースも見ないのですか?

見ないですね。ニュースはネットで見る方がほとんどです。テレビは時差があるとおっしゃいます。経済ニュースなどは夜8時に起きたことがネットでは8時10分にニュースになりますが、テレビだと9時になるまで見られなかったりします。すでに知っている話をなぜわざわざテレビで見るのかという話になってしまうようです。

その結果、家族そろってリビングでテレビを見るということは少ないですし、それぞれの個室にテレビは無いことが多いです。テレビをつけるのはYou Tubeを見るか、24時間型のニュースチャンネルを見るときくらいです。

叱らず褒めるのがしつけの基本

――家庭の中でのしつけ方の特徴のようなものは感じられますか?例えば子供に対して怒ったりするのでしょうか。

富裕層の家庭では親御さんがお子様に対して怒るという場面が圧倒的に少ないです。お子様に対してイライラして声を荒らげて怒るようなこともまずありませんね。

これは私なりの分析ですが、人の上に立つ方は人を動かすときに「怒る」という行為があまり効果的ではないとわかっているのではないでしょうか。怒るよりも自己承認欲求を満たしてあげるほうが効果的です。褒めるということですね。

――お子さんを褒めてしつける人が多いのですか?

褒める、あるいは行動をやめさせる代わりに何かを頼むといったやり方ですね。「ゲームばかりしてちゃだめよ」ではなく、「お手伝いをしてちょうだい」という言い方をします。

否定はしないというのが根本にある気がします。これは別に甘やかしているのではなく、どうやったら人は動くのか、協力的になってくれるのかというノウハウが身についているのではないかなと感じます。

――では、お子さんが家事を手伝うシーンなどもよくあるのでしょうか。

ありますね。お子様が我々バトラーやメイドの手伝いをしてくださる機会はけっこう多いですよ。親御さんから手伝いをさせてくれと頼まれることもあります。箸や食器を並べたり、食べ終わったものを下げたり、掃除も一緒にやってくださったりします。

子供には「考えるプレゼント」を与える

富裕層が実践する子供の教育#03
(画像=森口新太郎撮影)

――富裕層の家庭のクリスマスの過ごし方も気になります。

一般家庭とそれほど大きな違いはないように思います。クリスマスの飾り付けやイルミネーションが立派だったり、ケーキを自宅で作ったり、大人になってもプレゼントを交換するといったことはありますが……。

そういえば、クリスマスに限らず頻繁にプレゼントを贈る習慣はありますね。お子様に対してはちょっと考えるようなプレゼントを用意するケースも見られます。

――どのようなプレゼントですか?