土地や家屋を所有すれば税金がかかる。それは駐車場も同じで、法人で駐車場を持っている場合は、固定資産税が収益を圧迫することになる。所得税のような累進課税ではないため、利益などに関係なく、毎年一定の税額が徴収される。つまりどれだけ赤字になっていようとも、この税金から逃れることはできないのだ。今回は固定資産税について、大きく4つのポイントに分けて解説する。
【ステップ1】固定資産税とは何か
固定資産税は地方税の一種で、文字通り固定資産を持っている個人や法人に課される。賦課期日は毎年1月1日となっているため、その時点の所有者が納税義務者ということになる。厳密には、登記簿や台帳に所有者として登記または登録されている者だ。納期は原則として4月、7月、12月、2月の4回とされているが、市町村でこれと異なる納期を定めることもできる。
支払い方法は、基本的には現金か口座振替である。現金であれば、納付書を各自治体の窓口や郵便局、金融機関などに持参し、そこで支払いをする。口座振替であれば、事前に登録した口座から自動的に引き落とされる。近年はクレジットカード払いに対応する自治体も増えているが、別途手数料がかかってしまうので注意が必要だ。
このあたりは自治体によってもばらばらなので、インターネットで確認するか、窓口に問い合わせるといいだろう。
固定資産税の課税標準の基礎となる価格は、市町村に設置されている固定資産評価員によって評価され、それに基づいて市町村長によって決定される。評価額は、3年間据え置かれる。この評価額に、標準税率である1.4%を掛けた数値が、納入すべき金額として算出される。市町村が税額を計算し、納税義務者に通知し、納税者はそれに基づいて納税をする。以上が納付までの大まかな流れだ。
なお、固定資産税には免税点が設けられており、土地であれば30万円、家屋であれば20万円を下回る評価額の場合は非課税になる。たとえば評価額がそれぞれ22万円の土地と家屋を所有していた場合、土地の部分は免税され、家屋の部分は課税されることになる。
土地や家屋の他に、償却資産も課税対象となる。償却資産とは土地や家屋以外のもので、取得額が10万円を超える資産である。たとえば駐車場を所有する時に、新しく精算機などを設置したり、アスファルトで舗装したりした場合、これらは償却資産として扱われることになる。
償却資産も土地や家屋と同様に免税点が設けられており、評価額が150万円未満であれば非課税になる。償却資産の評価額は取得額の約7~8割になるので、取得額が150万円以下であれば基本的には免税となる。
償却資産の評価額は、具体的には、
1年目=取得額×(1-減価率×1/2)
それ以降=前年度の評価額×(1-減価率)
によって求められる。減価率は償却資産の耐用年数に対応しており、たとえば耐用年数が10年の場合、減価率は0.206となる。
それでは、この公式を使って具体的な数値を計算してみる。たとえば取得費用1,000万円、耐用年数2年の資産を購入した場合、減価率は0.684になるので、
1年目の評価額=1,000万円×(1-0.684×1/2)=658万円
2年目の評価額=658万円×(1-0.684)=207万9,000円(千円未満は切り捨て)
よって評価額の合計(課税標準額)は、658万円+207万9,000円=865万9,000円となる。150万円以上なので課税対象になり、
865万9,000円×1.4/100=12万1,200円(100円未満は切り捨て)
これが、固定資産税の税額となる。
ここまで固定資産税について見てきたが、都市計画税についても少しだけ触れておこう。固定資産税と併せて課されるのが都市計画税である。都市計画事業や土地区画整理事業を行う自治体において、その事業に要する費用に充てるため、市街化区域内にある土地や家屋に対して課されるものだ。市街化区域とは、すでに市街地となっている既成市街地と、今後優先的に市街化していくべき区域の両方を指す。
住まいが市街化区域内にあるかどうかは、各自治体の窓口に問い合わせることで確認できる。これは都市計画税に限った話ではないが、何か分からないことがあった時は、ただちに役所や不動産屋に問い合わせて、情報を得ておくことが望ましい。
都市計画税自体は戦前から存在していたが、シャウプ勧告により一旦廃止される。1956年に復活して以降、様々な批判や議論を経て現在に至っている。
都市計画税の税率は0.3%を上限として、各市町村の条例によって定められている。固定資産税と同じで、土地や家屋の評価額に税率を掛けて算出される。なお、固定資産税が免除されている土地や家屋については、都市計画税を課することはできない。都市計画税が、あくまでも固定資産税とセットで課されるのだ。
【ステップ2】駐車場の固定資産税は住宅用地よりも高い
住宅用地に認められている減免措置
土地は、住宅用地とそれ以外(雑種地)に大きく分けられる。ここでは、住宅用地に認められている減免措置について見ていく。住宅用地には、固定資産税に関する様々な減額要件がある。たとえば小規模住宅用地(住宅やアパート等の敷地で200平方メートル以下の部分)の固定資産税は6分の1に軽減され、一般の住宅用地(200平方メートルを超える部分)は3分の1に軽減される。
新築住宅であれば、床面積120平方メートルまでについては、固定資産税が2分の1に減額される。新築から10年以上が経過した住宅であっても、一定のバリアフリー化を施した場合、固定資産税が3分の1に減額される。
重要なところを簡単にまとめると、新築は3年間税額が半分になり、その土地の税額は住宅がある限り1/6になるということだ。
都市計画税も固定資産税と同じように、土地を住宅用地として使用する場合、いくつかの減免措置を受けることができる。200平方メートルまでの部分については3分の1に、それを超える部分については3分の2に軽減される。なお、都市計画税には住居に関する減免措置が存在しないので注意したい。
このように、住宅用地には税額を軽減する特例が複数あり、これによって合理的な節税ができる。特に昨今は地方の人口減少が叫ばれていることもあり、自治体によってはプラスアルファの優遇があるところもある。自治体のホームページなどをよく確認してほしい。
駐車場の場合はどうか
住宅用地には上記のような減免措置があるが、駐車場は住宅用地ではないため、基本的に減免措置が適用されることはない。つまり、駐車場の固定資産税は住宅用地よりも高くつくのだ。
駐車場はアパート経営などと違って建築費用が発生しないため、利回りが高いように思える。しかし駐車場には固定資産税の減免措置がないので、土地あたりの税額は割高になってしまう。「小規模住宅用地の税額は6分の1に減額される」ということは、「駐車場の固定資産税は小規模住宅用地の6倍になる」ということだ。これについては、次のステップで詳しく解説する。
【ステップ3】固定資産税の計算方法
具体的な計算方法
前述のとおり、固定資産税額は資産の評価額に税率(標準税率は1.4%)を掛けた数値だ。税率は各市町村によって異なるが、ほとんどの自治体は標準税率を採用しているため、以下のモデルケースにおける税率は標準税率を前提とする。
評価額の決定は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて行われる。なお、これはあくまで固定資産の評価額なので、時価とは異なる。
実際に固定資産税を計算してみよう。まずは、住宅地について。1,500万円で買った200平方メートルの土地に、3,000万円をかけて木造住宅(120平方メートル)を建てたケースで考える。なお、今回は都市計画税は考慮しないものとする。
土地の評価額は、時価の約6~7割、木造住宅の場合は約5割だ。土地の評価率を6割、家屋の評価率を5割とすると、この土地と家屋の評価額は、それぞれ900万円と1,500万円になる。これらの評価額に標準税率を乗じた数値が税額となるので、土地の固定資産税は、
900万円×1.4/100=12万6,000円
家屋の固定資産税は、
1,500万円×1.4/100=21万円
となり、合計で33万6,000円が課されることになる。ただしこれは減免措置がない場合であり、固定資産税の減額を行うと、土地は2万1,000円(12万6,000円×1/6)、家屋は10万5,000円(21万円×1/2)となる。つまり、合計で12万6,000円になる。
減免措置がない場合と比べてみると、実に21万円もの節税になるのだ。具体的な数値を見てみると、いかに減免措置が重要であるかがわかる。
次に、駐車場の場合で考えてみよう。先ほどと同様に、1,500万円で200平方メートルの土地を買ったとしよう。未舗装の駐車場の場合、建築物や償却資産などの費用は一切かからないため、課税対象となるのは1,500万円の土地だけだ。評価額を900万円として、先ほどと同様に計算してみると、この土地の固定資産税は、
1900×1.4/100=12万6,000円
となる。先ほどの「土地に木造住宅を建てるケース」の税額と同じになるのだ。もちろん実際の計算はこれほど単純ではないが、これを見てわかるように、減免措置の効果はかなり大きい。会社として駐車場を所有する際は、これらをしっかりと留意した上で、適切な収益モデルを考えていく必要がある。
実際にどのくらい固定資産税がかかり、具体的にどのような計算が行われているかは、固定資産税の納税通知書を見ることで確認できる。納税通知書には土地や家屋の価格や計算方法が明記されているため、必ず手元に残しておき、いつでも確認できる状態にしておきたい。
納税通知書を紛失してしまった場合は、固定資産課税台帳を確認するか、各自治体の役所で「固定資産税評価証明書」を発行してもらうことで対応できる。いずれも納税義務者や所有者しか確認できず、手数料を取られることを覚えておきたい。
固定資産税に関するモデルケース
ここからは、駐車場にかかる固定資産税のモデルケースを見ていく。先ほどは単純計算に留まったが、駐車場は多種多様であり、更地のような駐車場から大規模な立体駐車場まである。このような駐車場の性質は、固定資産税を考える上で重要なファクターとなるので、様々なケースを想定しておくことが望ましい。以下で、3つの例を確認していくことにする。
1.まずは未舗装の駐車場である。土地の評価額が5,000万円の場合、固定資産税は、
5,000万円×1.4/100=70万円
になる。
2.次に、土地の評価額が5,000万円で、さらに精算機やゲートなど評価額の合計が750万円の設備を揃えた場合。土地に関する固定資産税は、1.の場合と同じで70万円になる。設備などの償却資産は、評価額が150万円以上であれば課税対象になる。償却資産税の計算は複雑なので省略するが、仮に耐用年数を10年とすると、年間の税額は約3万7,000円となり、合計で73万円7,000円の固定資産税がかかる。
3.最後に、アスファルト処理を施した駐車場である。土地の評価額が5,000万円で、100万円でアスファルト舗装をしたとする。土地の固定資産税は、1.や2.と同様70万円。アスファルト舗装によって償却資産税がかかるように思えるが、価格が免税点を下回っているため、この償却資産は非課税となる。よって固定資産税は合計70万円だ。
上記からわかるように、仮にアスファルト舗装や券売機などを設置しても、それらの評価額を150万円未満に抑えることができれば、固定資産税は未舗装の駐車場のケースと同じになる。逆に言えば、償却資産の評価額が150万円以上になった場合は、土地の固定資産税に加えて償却資産税も徴収されることになる。
大規模な駐車場を考えているのであれば話は別だが、償却資産の取得を検討している場合は、できる限りその評価額を150万円未満に抑えることが望ましい。
【ステップ4】節税の方法
一括償却資産として処理する
先ほどから述べているように、土地自体の固定資産税は減額できない。しかし様々な工夫によって、全体の税額を減らすことはできる。たとえば償却資産税を減らすことで、全体の固定資産税を抑えることができるのだ。
その一つに、取得した資産を一括償却資産として処理するという方法がある。一括償却資産とは、1つあたり10万円以上20万円未満の資産で、個別に減価償却をせず、費用を3年に振り分けて経費として計上するものだ。たとえば1つ10万円の電灯(耐用年数5年)を20個購入した場合、取得費用は300万円なので、通常であれば償却資産税(固定資産税)がかかる。
しかし、この300万円を3年間で100万円ずつ費用計上することによって、免税措置を受けることができるのだ。このように、資産の評価額が150万円を超えても、それを一括償却資産として処理できるのであれば、節税をすることができるのだ。
駐車場を住宅用地とつなげる
一括償却資産について説明したが、次はそれとはまったく違うアプローチだ。駐車場を住宅用地とつなげて、住宅用地の減免措置を受けるという方法である。ここで重要なのは、「住宅用地が何を指しているか」である。
東京都の「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」を見てみると、住宅用地の例として「住宅用家屋(専用住宅・アパート等)の敷地、住宅用家屋の敷地と一体となっている庭・自家用駐車場」と書かれている。つまり、自家用駐車場であれば住宅用地という扱いになるため、減免措置が受けられるのだ。駐車場は本来雑種地として扱われるが、住宅用地とつなげることによって、住宅用地として認められることがあるのだ。
大規模な駐車場であれば難しいかもしれないが、小さくて設備も少ないような駐車場であれば、検討してみる価値は大いにある。たとえばアパート経営と組み合わせて、小規模の駐車場を所有するという案は一考の余地があるだろう。
税制を隅々まで理解していくということ
現代社会はかなり複雑化しており、何か1つの仕組みを理解しようとするだけでも骨が折れる。しかし税制を隅々まで見ていくことによって、持続的な収益モデルを考え出すことができる。駐車場は初期投資が少額で済むだけに、いかに税額を抑えるかが重要になる。免税点や減免措置などを正しく理解し、常に現在のモデルを改良しようとする、慎重かつ合理的なマインドが不可欠と言えるだろう。(提供:THE OWNER)
文・THE OWNER編集部