東京株式市場は波乱気味の展開が続いています。新型コロナウイルスが世界的な大流行(パンデミック)となる可能性が膨らみつつあり、世界的な株安が進んでいるためです。日経平均株価は2月に8.9%下落しましたが、3月第1週(3/2~3/6)も下落基調が続いています。

相場全般の下落局面では、投資家が買い付けた後にすぐ、その銘柄が値下がりしてしまうことも多くなります。そのため、どうしても多くの投資家の投資スタンスは慎重になってしまうと考えられます。ただ、中長期スタンスで投資チャンスの到来を待ち構える投資家にとっては、現状は買いチャンスと映っているかもしれません。特に災害や病気等が原因で下がった株式相場は、相場下落の原因になった災害・病気等に対する懸念が後退すると、大きく戻ることも多いようです。

ちなみに、3月末は多くの企業で株主優待や配当の権利が確定します。3月末に株主優待の権利が確定する銘柄数は826で、全体の54%を占め、月別ではもっとも多くなっています。また、東証1部上場企業の予想配当利回りは2.2%(3/5現在)で、歴史的に高水準となっています。これらの事情を背景に、3月は株主優待や配当の権利確定を狙った買いが入りやすく、その分需給が締まりやすいため、「高値づかみ」に注意が必要になってきます。ただ、全般的な株安で、その分は需給が緩みやすくなるため、株主優待や配当の権利確定を狙う投資家にとっては、稀有なチャンスと言えるかもしれません。

そうした中、今回の「日本株投資戦略」では、20万円未満で買え、好業績・期末配当に期待の3月株主優待銘柄の抽出を行ってみました。株主優待の魅力は、株主としての権利さえ確定させれば、無償または有利な価格で商品や金券、サービス等の提供を受けることができることです。株主優待と配当という株主としてのメリットを着実に享受することで、投資に対する総合的なリターンを高めることが可能と思われます。また、中には、その企業の商品やサービスを体験できるものもあり、その企業自体の理解につながることも期待されます。100株保有から株主優待の権利が獲得できる銘柄も多く、分散投資がしやすくなっていることも魅力と考えられます。

20万円未満で買え、好業績・期末配当に期待の3月株主優待銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

今回の「日本株投資戦略」では、東証1部上場銘柄の中から、3月に権利が確定し、株主優待について投資家の人気が高く、業績が堅調で期末配当も期待できる銘柄を20銘柄選んでみました。投資家の皆さんがリスクを分散するための、パッケージ投資がしやすいように、20万円未満で株主優待の権利が確定する銘柄に絞ってみました。

(1)東証1部上場銘柄(広義の金融を除く)であること
(2)3月決算銘柄で3月末(権利付き最終日は3/27)に株主優待の権利が確定する予定の銘柄であること
(3)最低投資金額が20万円未満で株主優待の権利が確定する銘柄であること
(4)株主優待の権利を獲得するために、別途継続保有期間の条件がない銘柄であること
(5)3月期末配当が見込まれる銘柄であること
(6)会社予想純利益に対して未達に終わるリスク、または下方修正に終わるリスクが相対的に小さいとみられる銘柄であること

上記のすべての条件を満たす銘柄について、SBI証券の株主優待検索ページにおいて閲覧回数の多い順(3/5現在)に20銘柄を並べたものが表1となっています。

表1の銘柄は株主優待の権利が確定する最低投資単位について、明星工業(1976)のみ200株で、他の銘柄は100株となっています。また、銘柄により、株主優待の権利を得るために最低の継続保有期間について条件が付いている銘柄もありますが、ここで選ぶ銘柄は、そうした条件がない銘柄にしています。

(5)については、資料作成時点で期末配当が支払われる予定(会社予想)であることを意味しています。会社予想配当が未定の場合は、前年度に支払い実績があり、第3四半期累計の純利益が増益の銘柄は抽出対象にしています。

また、(6)については第3四半期累計純利益の増益率(前年同期比)が通期純利益の会社予想増益率(前期比)よりも高い銘柄、または第3四半期累計純利益の通期予想純利益(会社予想)に対する進捗率が75%以上の銘柄であることを意味しています。なお、第3四半期累計の純損益が赤字の銘柄は除いています。

日本株投資戦略特選「20万円未満で買える3月株主優待銘柄」とその優待内容
(画像=SBI証券)

表1 日本株投資戦略特選「20万円未満で買える3月株主優待銘柄」とその優待内容
コード / 銘柄 / 株価(3/5) / 3月優待確保最低投資単位での株主優待内容の概要
<2531> / 宝ホールディングス / 839 / 商品詰合せ等1,000円相当
<2001> / 日本製粉 / 1,624 / 指定商品優待価格販売他
<1780> / ヤマウラ / 882 / 3,000円相当の地場商品
<1976> / 明星工業(200株) / 752 / JCBギフトカード1,000円相当
<1384> / ホクリヨウ / 707 / たまごギフト券(100円)×5枚
<2802> / 味の素 / 1,887.5 / 商品詰合せ等1,000円相当
<3023> / ラサ商事 / 875 / クオカード500円相当
<4246> / ダイキョーニシカワ / 595 / クオカード500円相当
<5909> / コロナ / 932 / クオカード500円相当
<9831> / ヤマダ電機 / 527 / 優待割引券(500円)×2枚
<3167> / TOKAIホールディングス / 897 / 天然水(500ml)等から選択
<3863> / 日本製紙 / 1,580 / 自社グループ製品詰合せ
<4611> / 大日本塗料 / 877 / クオカード1,000円相当
<5976> / 高周波熱錬 / 664 / クオカード1,000円相当
<8935> / エフ・ジェー・ネクスト / 947 / カタログギフト1,500円相当
<8772> / アサックス / 655 / クオカード2,000円相当
<7942> / ジェイエスピー / 1,620 / クオカード3,000円相当
<4732> / ユー・エス・エス / 1,693 / クオカード500円相当(選択)
<7421> / カッパ・クリエイト / 1,306 / 3,000円分のポイント付与
<3371> / ソフトクリエイトホールディングス / 1,410 / クオカード500円相当

※会社公表データ、SBI証券株主優待検索ページ等をもとにSBI証券が作成。明星工業は株主優待の権利が得られる最低投資単位200株を投資した場合の株主優待内容の概要。その他の銘柄は100株を投資した場合の株主優待内容の概要。いずれの銘柄も、株主優待内容のすべてを記載した訳ではありません。株主優待内容の詳細については会社発表の情報をご確認ください。

主要ご紹介銘柄の株主優待内容

表1では抽出された銘柄について、株主優待の権利獲得に必要な最低投資単位(明星工業以外は100株)で投資した場合の株主優待内容の概要を記載しています。必ずしも、その銘柄の株主優待の内容について、すべてを記載できている訳ではありませんのでご注意ください。保有する株数や期間に応じ、株主優待の内容が異なるケースも少なくありませんので、各社WEBサイトや、SBI証券の株主優待検索ページでご確認されることをおすすめします。なお、予定されている株主優待や配当について、変更されることもありますので、併せてご注意ください。

なお、表1をご覧いただいてご理解いただけるように、クオカードやJCBカード等の金券を贈呈している企業が多くなっています。これらの金券は、全国のほとんどの小売店や外食チェーンで使え、利便性が強いので、投資家に人気となっています。金券に関しては説明の必要は少ないので、以下ではおもに金券以外の株主優待を提供する銘柄について、その優待内容や配当政策等についてご説明したいと思います。

■宝ホールディングス(2531)

焼酎のトップ企業で、子会社にタカラバイオ(4974)を有しています。権利付き最終日(3/27)に100株以上を保有する株主に対し、自社グループ商品詰合せ(酒類または調味料から選択)1,000円相当が贈呈されます。1,000株以上保有の株主に対しては3,000円相当の商品となります。配当は期末のみで、1株20円が予定され、3/5終値での予想配当利回りは2.4%と計算されます。

■日本製粉(2001)

製粉事業(国内第2位)と加工食品を主力にしています。保有株数にかかわらず、全株主は自社グループ会社指定商品(アマニ油・サプリメント・ワイン等)の優待価格販売を受けることができます。また、権利付き最終日(3/27)に100株以上を保有する株主は「ジュンコ・フローラ・スクール」の小麦粘土でつくる 『パンの花』1日体験レッスン&プレコース(初心者向け短期講座)の無料受講及び入会時の入会金無料ご優待のサービスを受けることができます。さらに、権利付き最終日(3/27)に500株以上を保有する投資家には、3,000円相当の自社商品詰合せ(パスタ等)が贈呈されます。配当は中間期末に1株16.0円、期末に同18.0円で年間34.0円の計画で、3/5終値での予想配当利回りは2.1%と計算されます。

■ヤマウラ(1780)

長野県が地盤の中堅ゼネコンです。権利付き最終日(3/27)に株式を保有する株主に対し、3,000円相当の地場商品が提供されます。提供個数は100株以上で1つ、300株以上で2つ、1,000株以上で3つになっており、複数商品から選択可能です。配当は中間期末に1株2.5円、期末に同2.5円で年間5.0円の計画です。

■明星工業(1976)

権利付き最終日(3/27)に200株以上を保有する株主にJCBギフトカード1,000円相当、500株以上で2,000円相当、1,000株以上で3,000円相当が贈呈されます。500株以上を2年以上継続保有の場合は1,000円追加となります。配当は中間期末に1株10.0円、期末に同10.0円で年間20.0円の計画で、3/5終値での予想配当利回りは2.7%と計算されます。

■TOKAIホールディングス(3167)

権利付き最終日(3/27)に100株以上を保有する株主は、(1)天然水500ml入り12本、(2)天然水宅配サービス1本、(3)クオカード500円、(4)自社グループ食事券1,000円相当、(5)自社グループ会員サービスポイント1,000ポイント、(6)自社モバイルデータ通信サービス利用料5,100円相当割引、の中から選んで株主優待を受けることができます。300株以上、5,000株以上保有ではさらに増額されたサービスを受けることができます。配当は中間期末に1株14.0円、期末に同14.0円で年間28.0円の計画で、3/5終値での予想配当利回りは3.1%と計算されます。

ご紹介銘柄(表1掲載銘柄)の株価・配当データ
(画像=SBI証券)

表2 ご紹介銘柄(表1掲載銘柄)の株価・配当データ
コード / 銘柄 / 予想期末1株配当(円) / 3Q累計増益率(A) / 通期予想増益率(B) /  進捗率(C)
<2531> / 宝ホールディングス / 20.0 / -7.3% / -17.4% / 96.5%
<2001> / 日本製粉 / 18.0 / 0.1% / 6.4% / 76.0%
<1780> / ヤマウラ / 2.5 / -21.6% / -22.8% / 96.9%
<1976> / 明星工業 / 10.0 / -15.9% / -30.9% / 85.3%
<1384> / ホクリヨウ / 10.0 / -60.3% / 95.4% / 77.7%
<2802> / 味の素 / 16.0 / 3.7% / -39.4% / 128.7%
<3023> / ラサ商事 / 19.0 / 17.6% / 0.1% / 66.5%
<4246> / ダイキョーニシカワ / 15.0 / -37.5% / -42.3% / 81.2%
<5909> / コロナ / 14.0 / -24.9% / -60.0% / 358.6%
<9831> / ヤマダ電機※ / 13.0 / 92.3% / 81.7% / 92.9%
<3167> / TOKAIホールディングス / 14.0 / 28.6% / 5.9% / 62.0%
<3863> / 日本製紙 / 30.0 / 黒転 / 黒転 / 80.0%
<4611> / 大日本塗料 / 25.0 / -5.1% / -12.5% / 80.8%
<5976> / 高周波熱錬 / 9.0 / -56.7% / -5.4% / 80.1%
<8935> / エフ・ジェー・ネクスト / 22.0 / 12.6% / 7.1% / 54.8%
<8772> / アサックス / 15.0 / -8.1% / -7.5% / 75.3%
<7942> / ジェイエスピー / 25.0 / -15.6% / -11.8% / 87.0%
<4732> / ユー・エス・エス / 29.8 / -1.1% / -1.7% / 72.8%
<7421> / カッパ・クリエイト※ / 5.0 / 150.7% / 526.8% / 118.1%
<3371> / ソフトクリエイトホールディングス / 10.0 / 10.2% / 4.2% / 104.3%

※会社公表データをもとにSBI証券が作成。予想期末1株配当は会社予想。ただし、※印の銘柄は未定であるものの、前期実績で配当支払いを実施している上、第3四半期累計の純利益が前年同期比増益であるため、今期の配当実施の可能性が大きいとみられ、前期の1株配当を記載しました。冒頭のスクリーニング条件(6)については、個々の銘柄において、(A)が(B)よりも大きいか、または(C)が75%以上であることを満たせば、この条件を満たしたことになります。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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