富裕層の教育事情について探ってきた本特集。将来的に巨額の資産を子供に引き継がせるために必要な教育の要素を整理すると、人脈の構築と金融感覚が重要で、さらに親の声掛けなどの習慣にも「子供を叱らない」という共通点がある。また、留学生を受け入れるといった教育手法はグローバル教育にも通じるだろう。
そこで、本記事ではこれら4つの視点から参考になる書籍をピックアップした。子育てはもちろん、自身が教養を身に付けるという観点でも役立つはずだ。
人脈――『世界NO.1執事が教える“信頼の法則” 「信じていい人」「いけない人」の見分け方』(新井直之、KADOKAWA)
最初に、新井さんの書籍を紹介する。本書は教育書籍ではなく、「信頼」に関して執事の目線で語られているものだ。しかしこの内容は、インタビューで新井さんが語っていた「人脈」を形成するうえで大切なエッセンスであると言える。多くの人からの信用・信頼を得なければビジネスでの成功はもちろん、多額の資産を得ることも適切に運用することもできないからだ。
新井さんは「大富豪になるための第一歩は“信頼”」としている。大富豪同士は独自のネットワークを持っており、その枠組の中に入り込むには信頼を勝ち取っていくことが第一の術になるからである。そしてその大富豪に深くかかわる仕事である執事という仕事も信頼がなければ成り立たないからこそ、新井さんは「信頼」を獲得する術を語ることができるのだ。
本書は「どんな人物なら信頼されるのか」、というイメージを具体的なエピソードによって浮き彫りにしている。「信頼」というと漠然としたテーマに思えるが、例えばビジネスにおける営業のワンシーンやメールのやり取りなどが引き合いに出されているため、場面は非常に想像しやすい。
エピソードを読んでいくと、いかに信頼が小さな配慮と行動によって積み上げられていくものなのかもよく分かる。信頼に一発逆転のテクニックは存在しないからこそ、人脈形成を考えるうえで自分のためにも子供のためにも押さえておきたいノウハウだ。
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金融――『お金の教育がすべて。7歳から投資マインドが身につく本』(ミアン・サミ、かんき出版)
ミアン・サミ氏は個人資産10億円の元外資系ディーラーで、「お金の科学者」として国際的に活躍する人物だ。4男の父親でもある同氏は、人生の幸せを「安心」と「自由」のバランスであると定義し、そのために子供に「お金」について学ばせるべきとしている。
本書は読者自身にどの程度金融マインドがあるのか、また投資経験の有無などによって読み始めるべき章を区切っており、冒頭から読み進めれば、お金の基礎知識やお金の教育がなぜ重要なのか理解できるようになっている。読者にとって必要な知識を与えたうえで、家庭内でどのようにお金の教育を施すべきなのか、具体的な実践方法を紹介する構成だ。
実践方法としては、家庭内の損益計算書や貸借対照表を作り、資金を確保して投資をすべきとしている。その中で親は子供にどういった心構えで接するべきか、日常生活の中で子供にどのようにお金について触れてもらうべきか、といったテクニックが紹介されている。
本書は親が子供に金融について説明することを前提としているので、かなりやさしい語り口で執筆されている。すでに金融に精通している場合でも、誰かに説明するためという意識で読めば参考になるはずだ。
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