富裕層の教育事情について探ってきた本特集。将来的に巨額の資産を子供に引き継がせるために必要な教育の要素を整理すると、人脈の構築と金融感覚が重要で、さらに親の声掛けなどの習慣にも「子供を叱らない」という共通点がある。また、留学生を受け入れるといった教育手法はグローバル教育にも通じるだろう。

そこで、本記事ではこれら4つの視点から参考になる書籍をピックアップした。子育てはもちろん、自身が教養を身に付けるという観点でも役立つはずだ。

富裕層が実践する子供の教育 #05
(画像=PIXTA,ZUU online編集部)

人脈――『世界NO.1執事が教える“信頼の法則” 「信じていい人」「いけない人」の見分け方』(新井直之、KADOKAWA)

最初に、新井さんの書籍を紹介する。本書は教育書籍ではなく、「信頼」に関して執事の目線で語られているものだ。しかしこの内容は、インタビューで新井さんが語っていた「人脈」を形成するうえで大切なエッセンスであると言える。多くの人からの信用・信頼を得なければビジネスでの成功はもちろん、多額の資産を得ることも適切に運用することもできないからだ。

新井さんは「大富豪になるための第一歩は“信頼”」としている。大富豪同士は独自のネットワークを持っており、その枠組の中に入り込むには信頼を勝ち取っていくことが第一の術になるからである。そしてその大富豪に深くかかわる仕事である執事という仕事も信頼がなければ成り立たないからこそ、新井さんは「信頼」を獲得する術を語ることができるのだ。

本書は「どんな人物なら信頼されるのか」、というイメージを具体的なエピソードによって浮き彫りにしている。「信頼」というと漠然としたテーマに思えるが、例えばビジネスにおける営業のワンシーンやメールのやり取りなどが引き合いに出されているため、場面は非常に想像しやすい。

エピソードを読んでいくと、いかに信頼が小さな配慮と行動によって積み上げられていくものなのかもよく分かる。信頼に一発逆転のテクニックは存在しないからこそ、人脈形成を考えるうえで自分のためにも子供のためにも押さえておきたいノウハウだ。

世界NO.1執事が教える“信頼の法則
新井直之
日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長。大学卒業後、米国企業日本法人勤務を経て日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を設立。自ら執事として大富豪のお客様を担当する傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上に関するコンサルティング、講演、研修を行っている。著書に『執事だけが知っている世界の大富豪53のお金の哲学』(幻冬舎)、『執事が教える相手の気持ちを察する技術』(KADOKAWA)、『執事のダンドリ手帳』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます

金融――『お金の教育がすべて。7歳から投資マインドが身につく本』(ミアン・サミ、かんき出版)

ミアン・サミ氏は個人資産10億円の元外資系ディーラーで、「お金の科学者」として国際的に活躍する人物だ。4男の父親でもある同氏は、人生の幸せを「安心」と「自由」のバランスであると定義し、そのために子供に「お金」について学ばせるべきとしている。

本書は読者自身にどの程度金融マインドがあるのか、また投資経験の有無などによって読み始めるべき章を区切っており、冒頭から読み進めれば、お金の基礎知識やお金の教育がなぜ重要なのか理解できるようになっている。読者にとって必要な知識を与えたうえで、家庭内でどのようにお金の教育を施すべきなのか、具体的な実践方法を紹介する構成だ。

実践方法としては、家庭内の損益計算書や貸借対照表を作り、資金を確保して投資をすべきとしている。その中で親は子供にどういった心構えで接するべきか、日常生活の中で子供にどのようにお金について触れてもらうべきか、といったテクニックが紹介されている。

本書は親が子供に金融について説明することを前提としているので、かなりやさしい語り口で執筆されている。すでに金融に精通している場合でも、誰かに説明するためという意識で読めば参考になるはずだ。

お金の教育がすべて。 7歳から投資マインドが身につく本
ミアン・サミ
1980年、東京・品川で生まれる。両親はパキスタン人。国内のインターナショナルスクールで学んだ後、米国のデューク大学に入学。医療工学、電子工学を専攻、経済学を副専攻。在学中より株、FXなどに投資し資産運用も始める。大学卒業後、日興シティグループ証券に入社。その後、イギリス系のヘッジファンドに移籍。「金利のレラティブ・バリュー(裁定取引)」に特化し、最盛期には6000億円以上を運用した実績を持つ。その後、起業の失敗と金融業界への復帰などの紆余曲折を経て、さまざまな投資とビジネスを通して資産10億円以上を構築。現在は、ブロックチェーンの後継技術として期待される「ヘデラ・ハッシュグラフ」を普及させる日韓法人の代表を務めている。また、「お金の科学者」として、オンラインコミュニティやリアルセミナーを通じて、まるでジムに通うように、誰も教えてくれなかったファイナンシャルリテラシーを向上させる「サミーのファイナンスジム」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

※画像をクリックするとAmazonに飛びます

声掛けや習慣――『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』(親野智可等、PHP研究所)