子どもに関することは離婚前に取り決めをしておくべき

子どもの親権
(画像=fizkes/ Shutterstock.com)

離婚は夫と妻とが将来に向かって婚姻関係を解消するものである。離婚をすれば、これで夫婦が相互に負っていた同居義務や協力義務、扶助義務そして貞操義務もなくなり、結婚前の関係と同様の全くの他人となるのだ。

しかしながら、夫婦の間に子どもがいる場合にはそう単純にはいかない。離婚に伴い、相手が親権を持ったとしても法律上は親子であることになんら変わりはない。たとえ相手が別の人と再婚し、わが子がその再婚相手と縁組しようとも親子関係が切れることはないのである。

法律上は親子のままでも、離婚により夫と妻が別々に住むことになり、子どもの親権者(監護権者)とならなかった親は、子どもと共に暮らし、生活することができなくなる。親権を持った側の身勝手な理由で、子どもと会わせてさえもらえないということも起こりうる。

子どもとの生活の全てを奪われないためにも、離婚をするにあたっては子どもに関してしっかりと取り決めをしておく必要がある。

知っておきたい親権にまつわる5つのこと

ではここからは意外と知らない親権にまつわる3つのことを見ていこう。

1.親権に関して民法に規定がおかれている

「成年に達しない子は、父母の親権に服する(民法818条1項)」と子どもが親権者に従うべきということが明記されている。そして、親権者に対しては「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う(民法820条)」とその権利と義務が定められている。

親権者は、他人から干渉されることなく子どもの生活の面倒をみたり教育方針を決めたりすることができる。子がどこに住むのかを決めることが出来るし、子どもが営業を始めたいというときには許可を出す権利なども有している。また、懲戒権といって子どものしつけのために実力行使をすることも許されているのもだ。もちろん、虐待など社会的相当性を欠く場合が除外される。

また、子どもが財産を持っているときにはその財産の管理も親権者が行うものとされている。子どもが財産上の法律行為(財産の売却や購入、お金の借入れなど)を行うときには、子どもを代理したりその法律行為をにつき同意をしたりすることが出来る。

親権者であれば子が成長していく過程であれこれと意見をいうことが出来るのだが、そ反面、たとえ親であっても親権者とならなかった親には子の成長過程について口出しをすることができなくなる。子どもの進路、財産の処分等々、法律上は自身の意見を聞いてもらうことは出来ない。それにも関わらず、子が成長していくのに必要な養育費の支払い義務だけは負っている。納得できない場面に出くわすことも少なくないだろう。

2.離婚をするときには親権者を父母どちらか決めなくてはならない

これも、民法で定められていることである(民法819条)。

結婚している時は、夫婦が共同して親権を行使し子育てをすることができていたのだが、離婚となると子どもを育てていく親を1人に決めなくてはならない。時折父母の双方が子を引き取りたくないといって揉めることもあるが、多くの場合は、どちらを親権者とするかで争いが激化し、離婚成立まで時間を要してしまう。また、離婚をしたくとも、両親が揃っていない環境で子どもを育てることに気が引け、離婚自体を諦めてしまうこともある。

また、「親権」が問題となるのは未成年の子どもについてであるため、子どもが成人するまではと我慢する夫婦もいる。

3.親権者の決め方は当事者で結論を出す

ではこの親権者はどのようにして決めるのであろうか。

協議離婚の場合は、夫婦の話合いにより離婚するのであるから、親権者をどちらにするかということについても話合いで自由に決められる。法律でルールが定められているわけでもなく、子どもにとっての最善は何かということに重点をおき、当事者だけで結論が出せれば理想であろう。

親権者とは別に監護権者を決めることもできる。別居している父親を親権者としつつも、母親を監護権者として子どもと共に暮らし養育していくという決め方も可能だ。両親が離婚しようとも、子どもにとってはどちらも親であることには変わりがない。子どもの養育を第一に考え環境を整えていきたいものだ。

4.親権者が決まらない場合は裁判になる

当事者同士での話し合いで親権者を決めることが出来ないときには、家庭裁判所に判断を求めることとなる。裁判所は、子どもにとっての最善な養育環境はという観点から親権者を判断する。

考慮される事情としては、父と母それぞれの年齢や身体的・精神的健康状態、経済状況、居住状況、教育環境、愛情の程度、これまでの監護状況、親族等の援助等々、様々な事情を総合的にみていく。

父親の方が稼ぎがよく、母親がこれまで無職で収入がないといった経済的事情だけをもって直ちに父親が親権者となるものではない。母親が産後からうつ病を抱えており精神科に通っているからといって親権が否定されるものでもない。親権者をいずれにするかは子どもにとって最重要なことである。そのため、裁判所も様々な事情を考慮した上で慎重な判断を下すのだ。

5.裁判所に親権者の判断を任せると調査をされる

また、裁判所に親権者に対する判断を求めた場合には、裁判所調査官による調査が行われる。調査官は、それぞれの親権者の話を聞くとともに、直接自宅を訪問し子どもの養育環境を確認したり、子どもの通う学校に子の様子を問い合わせたり、子どもに直接話しを聞いたりする。調査官により、親権者としての適格性、監護状況、子どもの意向が調査されるのだ。

そうはいっても、裁判所により父親を親権者とすべきと判断されることは、母親を親権者とすべきと判断されることに比して圧倒的に少ない。男女平等が強く謳われる現代社会においても、子どもの養育に関しては母親の方が優れているという意識があるのだ。特に、母性優先は乳幼児期には顕著である。

赤ちゃんに母乳を与えられるのは女性親だけであるし、一般的に母親の方が子どもと共に過ごしている時間が多いだろう。そのため母親のもとで養育されるべきと判断されるのだ。

しかし、この母性優先の原則により必ずしも母親が親権者と判断されるものではない。母親がひどい虐待をしていたり、異性関係が乱れすぎていたりするような場合には当然ながら親権者の適格を備えているとはいえない。

親権が相手にある場合、面会交流権が認められている

子どもが相手に引き取られていったがために子と離れて暮らすことになってしまった親には「面会交流権」が認められている。定期的に子どもと会ったり手紙やメールを交わしたりするなどして子どもと交流することができるのだ。これも民法に規定された法律上の権利である。

離婚問題により感情的になっている状態では、子どもを離婚交渉の道具のように使ってくる親もいる。子に会わせて欲しければ…と養育費の増額を求めてくることもあり得るのだ。子どもを連れて別居を強行され置き去りにされた側の親としては、なぜこのような連れ去り行為が正当化されるのかは全く理解できない。
離婚原因が相手にあるような場合でも、子との面会交流に関しては子を連れていってしまった側が有利である。あれこれとこちらを非難しては、面会交流に制限をかけてくる。

当事者間の話合いで面会交流が実現しない場合には、裁判所に面会交流を求める調停・審判を求めることができる。裁判所は「子の福祉」という観点から面会交流についての判断をする。この「子の福祉」とは、簡単にいえば子どもが健全に成長することができるかどうかということだ。例えば、子どもが明確に面会交流を拒否しているような場合には面会交流の実施は子の福祉に反するとして否定されることもある。

特に大きな問題がない状況では面会交流は認められるが、その頻度は月1回程度となることが多い。月に一度しか会わせてもらえなくとも養育費の支払いは続いていく。

離婚するにあたっては子どもとの関係についても充実した取り決めをすることが欠かせない。(提供:THE OWNER