(本記事は、中島 豊氏の監修・編書「社会人の常識: 仕事のハンドブック」経団連出版の中から一部を抜粋・編集しています)

出勤
(画像=PIXTA)

顧客訪問と出張

関野課長と初めての日帰り出張に行ってきましたー。三島までの新幹線の中でも課長はビジネス書なんか静かに読んでいて、私一人で緊張したり、うきうきしたり。気分のアップダウンが激しすぎてお客さんのところに着いたころにはもうへとへと。
なんか今思えば、私はなんのために出張同行したのか、わかんないぐらい役に立ってない気がする。。。

顧客の訪問や出張は重要な仕事です。しかし日常の職場を離れるため、普段なら気を配れることが、ついおろそかになったり忘れたりしますので、改めて特に留意すべき点を確認します。

訪問先には時間に余裕をもって到着しましょう

他社訪問にあたっては、事前に電話や電子メールで訪問の了解を得ます。そして用件や日時とともに、何人で伺うのか、上級役職者が同行する場合にはその役職名と部門も忘れずに伝えましょう。訪問先の建物には5分前には到着するようにします。約束の時間よりかなり前に到着したときは、外で時間調整します。あまり早く着いても先方はアポイントの時間に合わせて仕事をしているので、早めの訪問を知らされた場合は余計な気遣いをさせてしまうことになります。

受付には約束時間の数分前に面談先への取り次ぎをお願いします。コートなどは先方の建物に入る前に脱いでおき、邪魔にならないように小さくまとめて片方の腕にかけておきます。雨天の場合には傘の雫で床を濡らさないような配慮や工夫をします。

応接室や会議室では、勧められてから着席します

応接室や会議室での席次についてはくれぐれも間違わないように気をつけます。荷物などは机や椅子の上に置いたりせず、足元近くの床に、邪魔にならないように置きます。先方が部屋に入ってきたら、それまで着席していた場合は立ち上がります。

着席は促されてからにしましょう。着席中は背もたれに背中をつけないで背筋を伸ばして座ります。お茶など飲み物を出された際は、先方から勧められるまで口をつけるのは控え、飲む際は、「いただきます」と一言添えましょう。

経費精算と日報の作成

他社を訪問した際や、営業などの外回りをして発生する交通費、あるいは業務で使用する備品などをとりあえず個人で負担して購入した場合など、経費として支払われるべき代金を個人で負担したときは会社にその金額を請求し、精算する必要があります。精算にあたっては会社ごとにさまざまな規定が設けられていますので、そのルールに従って申請を行ないます。

経費の精算で必要とされるのは、立て替えた金額と支払い日時が証明できる書類(=領収書)です。領収書とともに、何に用いたのか理由を書き添えて提出書類を作成します。

会社は経費を事前に予算として計画し、その計画に沿って経営を行なっています。ちょっとくらいの金額なら、提出が遅れてもいいじゃないかと思うかもしれませんが、社員一人ひとりがそのように思い行動したらどうなるでしょう? 秩序は乱れ、ひいては会社の経営も立ち行かなくなってしまうかもしれません。社会人として、また一社員としての自覚をもち、会社のルールに従って行動することが大切です。

また多くの企業で、特に営業部門において顧客訪問など外回りをした内容を営業日報として書かせています。日報には、会社によってさまざまな種類がありますが、たいていは雛型が用意されていますので、それに沿って記入します。

そもそも日報とは、上司や記入者自身が、その時の状況をすぐに思い浮かべられるものでなければいけません。簡潔に、書かれている内容がすぐにわかるように作成しましょう。

出張訪問は予定を立て慎重に準備しましょう

出張の場合も訪問心得は前述のとおりですが、旅費などで会社の経費を使うため、行程などの行動予定に無駄がないこと、出張の計画や報告を怠らないこと、電車や飛行機に乗り遅れないよう時間に余裕をもって行動することなどに留意します。

また、移動中も社員としての体面を忘れてはいけません。社章や会社名入りの封筒などから、どこの社員か予測がつきます。いつでもプロとしての責任ある行動をとりたいものです。

社内文書と社外文書の作成

関野課長に、きのうの日帰り出張で訪問したお客様にお礼の手紙を書くようにって言われて、今日は朝からビジネス文書のテキストと格闘しました。研修で習ったはずなのに、頭語・結語なんてすっかり忘れちゃってたよ。時候の挨拶なんて全部テキストの受け売りになっちゃった。なんとかOKもらったけど、しばらく書かないとすぐに忘れちゃいそう。練習すればいつかすらすら書けるようになるのかなあ。。。

ビジネス文書は社内文書と社外文書に大別され、それぞれ以下のような種類の文書があります。最近では紙に印刷されたものだけでなく、一部の文書は電子メールなどを使用したデータ形式のものも通用しています。

◆社内文書:報告書、議事録、稟議書、決裁書、始末書など
◆社外文書:案内状、通知状、依頼状、照会状、礼状、詫び状など

ビジネス文書作成のルールを覚えましょう

ビジネス文書の書き方は、会社によって細部が異なりますが、以下の点は共通ですので覚えておきましょう。

◆用件1件につき、1枚の用紙に横書きで作成する。件名は必ずつける
◆定められた書式と構成を守る
◆だれに向けた文書なのか、読み手にあわせた書き方をする

社内文書は、組織内の情報を確実に伝えるために作成されるものです。可能な限り簡潔なものにしましょう。一方、社外文書は、企業としての意思を社外に伝えるものです。相手に敬意を表し、誠意を込めて作成しましょう。

基本の形式にのっとって作成します

1.社外文書
◆文書番号:文書管理のため会社によって決まっている通し番号
◆発信年月日:実際に文書を出す日にします
◆宛先:正式名を略さず書きます。敬称(御中、様、殿、各位)の使い分けに注意
◆発信者名:宛先とつりあいをとります。必要に応じて社印や役職印を押します
◆件名:わかりやすく簡潔に
◆頭語:”拝啓”が一般的。返事の場合は”拝復”
◆前文:時候や安否の挨拶や感謝の言葉を述べます
◆主文:前文の後、改行して本題から書きます
◆末文:締めくくりの挨拶。改行して書きます
◆結語:頭語と格をそろえます(拝啓→敬具、前略→草々)
◆付記:補足する事項がある場合に書き添えます
◆担当者名:発信者のほかに担当者がいる場合は、その連絡先、氏名を記入します
社会人の常識: 仕事のハンドブック
(画像=社会人の常識: 仕事のハンドブック)
2.社内文書
◆文書番号:文書の内容や種類、宛先など、必要に応じて分類し、番号や記号をつける場合があります
◆日付:会社によって和暦、西暦で表示します
◆受信者名:敬称は文書の種類によって異なります
◆発信者名:文書を発する責任者または権利をもつ者の役職、名前を入れます
◆件名:わかりやすく簡潔に
◆本文:社内文書では前文や末文などの挨拶は省き、件名に続いて本文に入ります
◆別記:「記」として、必要事項を簡潔に箇条書きにします
社会人の常識: 仕事のハンドブック
(画像=社会人の常識: 仕事のハンドブック)
社会人の常識: 仕事のハンドブック』
中島 豊(なかしま ゆたか)
日本板硝子(株)執行役人事部統括部長。富士通、リーバイストラウスジャパン、日本ゼネラル・モータース、ギャップジャパン、楽天にて人的資源管理の職務を歴任し、2007年日興シティグループサービス(株)人事部長、2009年シティグループ証券(株)常務執行役員人事部長。2019年より現職。

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