(本記事は、中島 豊氏の監修・編書「社会人の常識: 仕事のハンドブック」経団連出版の中から一部を抜粋・編集しています)

外国語学習
(画像=PIXTA)

語学の習得

今日の午後、たまたま職場のみんなが出払ってしまって、オフィスに林部長と二人きりになってしまいました。そこに電話が。とってみると、ちょっと癖のある早口の英語で、どうも関野課長に用があったみたい。英語は、週末に英会話学校に通っているので少しはできると 思ってたけど、相手の言うことがさっぱりわからない…「Pardon?」と冷や汗をかきながら連発していたら、林部長が身振りで「代わりなさい」って。部長の英語、初めて聞いたけどすごかった。「すごいですね!」って言ったら、「シンガポールの方のようね。ちょっと訛りがあるから学校で習う英語だけではむずかしいかもね」って、にっこりしながら言われてしまいました。あとで那須山くんにこの話したら、林部長って中国語も日常会話程度ならできるらしいよって言ってた。部長ってほんとにすごいなあ!

語学習得の多言語化が始まっています

インターネットの普及により、英語以外の言語のサイトにも世界中からアクセスできるようになり、多言語化がめざましく進んでいます。特に経済発展が著しいBRICsブリックスと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国などの国々とビジネスを展開していくため、日本の企業でも、日本語・英語の2種類を扱うバイリンガル(bilingual)はもとより、3種類の言語を話すトライリンガル(trilingual)が求められるなど、語学習得の多言語化が生じています。

企業社会で役立つ外国語の習得といえば、これまで多くの企業が英語圏の海外語学学校に通う留学スタイルを企業内に制度として備えてきましたが、近年は中国語やイスラム語の習得のためにそれぞれの国へ派遣する企業も増えてきています。また昨今はいわゆる企業再編という環境変化の中で外資系企業による日本企業の買収がだれの身に降りかかってもおかしくない時代になりました。ある日突然、上司が外国人に代わり、毎日の業務連絡が英語に代わることは十分想定されます。新入社員であっても少なくともビジネス英語の読み書き程度は必要な時代といえるでしょう。

目的とレベルに応じた英語学習を始めましょう

島国であったこともあり、歴史のうえでも独自の文化を発達させてきた日本人は、外国語の習得が苦手だといわれてきました。しかし、グローバル化が顕著になった現代では、苦手だからできない、では世界に通用しません。

実務に役立つ外国語習得の勉強をこれまで意識したことのない人は、今からでも遅くありませんから、一般英会話の習得、TOEIC・TOEFLなどの試験を受験するなど、目的やレベルに合わせた勉強を始めることをお勧めします。

海外生活の経験があり日常会話に対応できる、あるいはTOEICやTOEFLで高スコアを有する場合は、ビジネスイングリッシュの勉強を始めることが肝要です。さらに進んで将来は国際的なビジネスの場面で活躍したいなら、会話力だけでなく、英語で思考する訓練のために海外でMBAを取得するのも有効です。国際的な舞台で語学力を活かし活躍するためのスキルを若いうちから身につけることをお勧めします。とにかく行動あるのみです。

MBA取得・留学

この前、文化祭で会った、学校の先輩の小泉さん。勤めてた銀行を退職してしまったんだけど、秋から、アメリカに留学することが決まったってメールがきました。アメリカのボストン大学のMBAコースだって。日本だと修士課程に相当するらしいよ。きのう壮行会があって、みんなで集まりました。「アメリカでMBAなんて、すごいですね!」って言ったら、「アメリカの大学は入るのより出るのがむずかしいんだよ」だって。2年間、英語漬けで勉強なんて、ほんとに大変そうだけど、やっぱり憧れるなあ。そういえば、入社したとき人事の人が、うちの会社にもMBA取得の留学制度があるって言ってたな。私もめざしてみようかな!

MBA とは、Master of Business Administrationのことで、日本の経営学修士にあたり、欧米のビジネススクールと呼ばれる経営大学院を修了した人に与えられる修士号のことです。MBAを通じて得られるものは、単なる知識にとどまらず、人脈や論理的思考能力、あるいは厳しいトレーニングの間に培われる忍耐力・時間的マネジメント能力など多岐にわたります。

海外MBAは国際ビジネスに携わるための「免許証」

MBA取得のメリットとしては、一般的には、経営全体を俯瞰する眼と考え抜く力を養い、人的ネットワークを形成し、自らのキャリアを広げられる点があげられています。経済のグローバル化が急速に進む中で、海外のビジネススクールに留学し、MBA(経営学修士)の資格を取得することは、国際ビジネスに必要なスキルとセンスを有することが証明されることと考える人もいるなど、若い社員の大きな関心事です。

留学を終えると「国際標準」のスキルを習得したビジネスプロフェッショナルとして、活躍の場をさまざまに広げることが可能になりますから、企業の競争力を向上させることにもつながります。現に国際ビジネスを展開している会社、そしてこれから本格的に国際ビジネスの展開をめざしている会社は、MBA海外留学制度を実施しています。

MBA海外留学制度では、多くの場合、その対象者について、年齢、勤続年数、語学力などの面で一定の条件を満たす者のうち、本人が希望し、かつ会社が認めた者としています。特に海外留学にあたっては、入学金、授業料、滞在費を中心に相当の費用がかかることから、留学費用は会社が貸与し、本人が一定年数勤務したときに「返還を免除」するのが一般的です。また留学した社員は会社に対し、勉学の状況を定期的に報告しなければなりません。

なお当初の留学期間を経過してもMBA資格を取得できなかった場合は帰国するのがルールです。

また、最近では、国内の大学でも専門職大学院としてビジネススクールを開設するところが増えており、仕事を続けながら国際標準のビジネススキルを学ぶこともできるようになりました。

人生設計とフィナンシャルプラン

お母さんから久々に電話があって、今日は勤めている会社で「ライフプランセミナー」という研修に参加してきたって言ってました。なんでも、定年退職後の生活準備のために会社が開いてくれたそうです。「あなたも将来のことを考えてしっかり貯金しなさいね」って言われてしまいました。「将来」って言われても…まだまだ私にはピンときません。

人生設計のためには資金計画は必須です

人生設計はライフプランともいわれます。人生設計が、職業、結婚観、生きがい、居住地など個人の充足感に主眼をおいた計画であるのに対し、ライフプランは、主に金銭面(フィナンシャル面)からの生活設計を指すことが多いようです。またフィナンシャルプランニング(略してFP)とは、人生の目標や夢を実現させるために必要な長期的なライフプラン、マネープランを提案したり、現状の把握や問題点の洗い出しにより改善点を提案してその実行を援助する、さらにはそれらの定期的な見直しをトータルに行なうことを指します。

近年は、グローバリゼーションの進展や構造改革にともない、法制度をはじめとする社会構造がごく短期間で変化し、企業の倒産やリストラによる終身雇用・年功序列制度の崩壊、福利厚生の縮小、あるいは大手生命保険会社の倒産や将来の年金制度維持に対する不信など、不安要素でいっぱいです。国や金融機関に頼る時代が終わったとされる今、自分の資産は自分で守り、運用する必要性を多くの人が感じています。「貯蓄から投資へ」という言葉を耳にした人も多いと思いますが、官民が一体となって眠っている個人金融資産の流動化をはかろうと、たくさんのマネー情報誌が創刊されたり、投資セミナーが身近で開かれる、あるいは各種金融番組を頻繁に目にするようになるなど、この言葉をキーワードとするさまざまな変化が普段の生活にもたらされました。

今から将来の資金計画を考えておきましょう

そんな中、若いときから各人が自分の将来像(独立したい、子どもは二人ほしい、一戸建てを買いたいなど)にもとづき、将来必要となる資金(独立開業資金、学費、住宅購入資金、老後の生活費など)や起こりうる危険(病気・事故など)を推測し、必要資金をどのように調達するか、将来設計を変更する必要があるかなどを普段の生活の中で考える習慣を身につけることが肝要です。

具体的には、普段の生活は、その月の手取り収入や年収額をすべて使うのではなく、残業代などの変動部分には手をつけない、あるいは収入の7〜8割で暮らすなどの習慣を身につけ、余裕分はリスクマネジメントの勉強のつもりで、少しずつ自己投資やリスク商品に回すなどからスタートすることをお勧めします。

社会人の常識: 仕事のハンドブック』
中島 豊(なかしま ゆたか)
日本板硝子(株)執行役人事部統括部長。富士通、リーバイストラウスジャパン、日本ゼネラル・モータース、ギャップジャパン、楽天にて人的資源管理の職務を歴任し、2007年日興シティグループサービス(株)人事部長、2009年シティグループ証券(株)常務執行役員人事部長。2019年より現職。

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