(本記事は、亀田達也氏の監修『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』日本文芸社の中から一部を抜粋・編集しています)

人が高校野球に熱中するのはなぜか?

●集団に所属することで存在を確認できる

流行
(画像=Kaspars Grinvalds/Shutterstock.com)

現代社会を生きていく上で、人はさまざまな共通点を見出して、仲間意識を作っていきます。「おしゃべり好き」「考えが前向き」といった、内的特徴から捉えた自己認識は、「個人的アイデンティティ」と呼ばれ、自分を形作る上で重要な要素となります。

一方、自己紹介で、「〇〇高校出身」「××会社の営業部勤務」などと話すことも多いでしょう。このように、集団や社会的カテゴリーから捉えた自己認識を「社会的アイデンティティ」といいます。

社会的アイデンティティには、男性女性といった性別や国籍なども含まれ、その集団が評価されることにより、所属している自分の自尊心が満たされるといわれています。

そのためか、社会的アイデンティティには、自分が所属する集団のメンバーであることそのものを評価したいという気持ちが含まれます。誰しも、自分が所属する集団がより良い評価を得て欲しいと望みますので、高校野球では、自分の出身県の学校や、卒業した高校を熱中して応援することになりやすいのです。

では、自分の所属する集団が、望ましい評価をされなかった場合はどうなるでしょう?このようなときは、その集団から離れて別の集団へと移る「社会移動」や、自分で努力をして他の集団よりもより良くしようと考える「社会変動」といった行動が考えられます。

こうした動きでも無理な場合には、「他にはもっとひどいところもある」というように、より下のものとの比較をする「社会的“創造性”」の反応が起こる場合もあります。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』より)

ステレオタイプと偏見はなぜ生まれる?

●ステレオタイプ化は無自覚のうちに起こる

ステレオタイプとは、特定の集団に対する、過度に単純化、画一化された概念のことです。「A型だから几帳面」や「沖縄出身だから陽気」などといったものもステレオタイプの一例です。

人間は、自分が所属する内集団から見た場合、それ以外の外集団の人に対して、このような概念を当てはめてしまいがちです。該当する人はひとりしか知らないのに、まるでそれがその集団全体に共通する特性のように思えてしまうのです。

このようなステレオタイプ化は、無自覚のうちに始まっていることが多く、特に悪いイメージを持ってしまうと、偏見や差別へとつながっていきかねません。

では、このようなステレオタイプから抜け出すためには、どのようにすればよいのでしょうか?

ひとつ目は、相手の属しているカテゴリーをより多く知ることです。ひとつの側面からだけ見ていると見えていなかったものが、違った角度からだとよく見えることがあります。意識して、違うカテゴリーを探してみるとよいでしょう。

もうひとつは、相手をよく知ることです。実際に接してみると、「実はこうだったんだ!」「思っていたのと違う」ということが出てくるはずです。こうして、ステレオタイプに縛られた見方を変えてみると、より良い関係を築くことができると思います。

ステレオタイプ化を完全になくすことはできないといわれています。しかし、少なくとも、自分たちの中にそのような単純化する傾向があると認識するだけでも、社会は違ってくるでしょう。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』より)

流行に乗る人・逆らう人

●独自性と同調性のせめぎ合い

食べ物やファッション、音楽など、世の中には「流行」があふれています。この流行とは、一体どのようなものなのでしょうか?

最初に挙げられるのは、一定の範囲の人に広まるものであるということです。年代的、地域的に固まった層で流行り、それ以外の人には、興味を持たれません。次に、一定の期間で終息してしまうという点も特徴です。いわゆる「ブーム」と呼ばれるもので、数ヵ月から1年程度のものが多くなります。そして、それらが意図的につくられたものであるという点も重要です。とくに現代では、マスコミやインターネットなどを通じて、さまざまな流行が生み出されていきます。

では、流行に乗る人と逆らう人には、どのような差があるのでしょうか?

実は、流行に敏感な人と、逆らう人には、共通した特徴があります。それが「独自性」です。どちらも「周りの多くの人とは違うことをしたい」という意識のもとに動いています。それが、「流行を先取り」と「流行をまったく気にしない」というふたつの方向にわかれているだけなのです。一方、ある程度広まってから流行に乗る人は、「同調性」を重んじているといえます。「周りの人と同じような格好をしたい」という思いから、流行に合わせているのです。

以上のように、「独自性」と「同調性」がせめぎ合って、その人の流行への対応ができ上がっています。一番初めに取り入れる「イノベーター」という人がいる一方、ピークを過ぎたあたりで乗っかってくる「流行遅れ」の人も一定数いるのです。

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(画像=『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』より)
眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学
亀田達也(かめだ・たつや)
1960年生まれ。東京大学大学院社会学研究科修士課程、イリノイ大学大学院心理学研究科博士課程修了、Ph.D(心理学)。現在は東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学研究室教授。著書に『モラルの起源──実験社会科学からの問い』(岩波書店)、『合議の知を求めて──グループの意思決定』(共立出版)、共編著に『複雑さに挑む社会心理学──適応エージェントとしての人間』(有斐閣)、『「社会の決まり」はどのように決まるか』(フロンティア実験社会科学6、勁草書房)、『文化と実践──心の本質的社会性を問う』(新曜社)、『社会のなかの共存』(岩波講座 コミュニケーションの認知科学 第4巻、岩波書店)などがある。

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