あくまでプロダクトにフォーカスしつつ、イベントも積極的に開催する
――先ほど他社との競争についてお聞きしましたが、日本市場においても、ネットショップの開設を支援する企業は他にもあります。それらとShopifyとの違いはなんでしょうか?
ワング 競合他社には、小さい規模の企業を対象にしているところもあれば、中規模の企業を対象にしているところも、大規模な企業を対象にしているところもありますが、Shopifyはどんな規模の企業にも使っていただけます。これが、日本においてもグローバルにおいても、最大の特長です。立ち上げたばかりの企業に使っていただいたら、その企業が大きく成長しても、ずっと使い続けていただけます。
また、マルチチャンネルに展開できることや、多くの通貨や言語に対応しているので、すぐにグローバル展開できることも特長です。低いコストで始められて、大きくスケールさせることができるのです。
――日本での成長のスピードは、どうですか?
ワング かなり良いペースです。世界で最も高い、年100%以上の成長をしています。既に何千もの店舗に使っていただいています。
起業家に使っていただいているのはもちろん、特に嬉しく思っているのは、ゴーゴーカレーやタビオ、とらや、鎌倉シャツ、ジョンマスターオーガニック、土屋鞄、KINTOなど、従来から強いブランド力を持っている企業にも使っていただいていることです。日本の市場に我々のプロダクトがフィットしたということだからです。
――ブランド力を持っている企業に使ってもらうために、営業活動は行なっているのですか?
ワング 日本は独特で、セールスにフォーカスをした市場だと感じています。ただ、我々は日本でセールスを行なっていません。マーケティング活動はしていますが、企業に対して直接アクセスをすることはなく、我々のプロダクトが成長に寄与するとそれぞれの企業が判断して、使っていただいています。もちろん、使っていただいている企業には、きちんとサポートを行なっています。
――これからも継続的に成長するために、どのようなことを考えていますか?
ワング 2020年はさらに、マーケティングはもちろん、セミナーやイベントなどにも力を入れます。
――イベントというと?
ワング 色々と計画中ですが、まず、「オンボード・ワークショップ」を毎月開催しようと考えています。その月にShopifyの利用を始めた方に対して、2~3時間ほど行なうものです。
また、四半期に1回、「Eコマースデイ」を開催しようと思っています。Shopifyでビジネスを立ち上げた方々に、そのストーリーや店舗運営の技術的な話をしていただくなど、終日、ワークショップやプレゼンを行なうイベントで、2019年12月に東京の永田町で第1回を行ないました。
経済産業省と協力したセミナーは、既に日本各地で行なっています。中小企業が海外に商品を販売するのを支援するためのセミナーです。
6月には「Pursuit」という2日間のイベントも予定しています。店舗やパートナーの方々をお呼びして、ワークショップやプレゼンテーションをしていただくものです。昨年は1日で開催したのですが、募集から2週間で600社以上の登録があり、そこで募集を停止することになったので、今年は2日間で行ないます。
――これからの成長戦略としては、そうしたイベントに注力していくということでしょうか?
ワング あくまでフォーカスするのはプロダクトです。今年も重要なプロダクトの発表を予定しています。また、店舗の方々がもっと様々な場で商品を販売できるように、パートナーシップも増やしていきたいと思っています。パートナーシップについても、今年、重要な発表ができると思います。そのうえで、マーケティングやイベントにも、より力を入れていくということです。
《写真撮影:まるやゆういち》
マーク・ワング(Mark Wang)
Shopify 日本カントリー・マネージャー
1978年、カナダ・オタワ生まれ。2001年、マギル大学卒業。JPモルガンやシティグループでファイナンスやグローバル戦略に関わる。その後、コロンビア大学で経済を学び、10年に卒業。ベトナムやカンボジア、ラオスなど、東南アジアで個人事業主や中小企業のサポートをした後、インドネシアでスタートアップ企業の支援を行なっているタイミングでShopifyに関わり、13年に入社。17年に日本法人Shopify Japan〔株〕を設立し、現職。(『THE21オンライン』2020年02月07日 公開)
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