ECの市場規模世界第3位の日本。その特徴とは?

Shopify,マーク・ワング
(画像=THE21オンライン)

――2017年11月に日本法人が設立された際、そのトップにワングさんが就任した理由を教えてください。

ワング 私はカナダ人ですし、日本語もうまくありませんから(※取材は英語の通訳を介して行なった)、おかしいと思われるかもしれませんね(笑)。

先ほども申し上げたように、Shopifyはプロダクト・ドリブンな企業なので、まずはプロダクトに対する理解が深いこと、そして日本市場について理解していることが、私が日本のカントリー・マネージャーに就任した理由だと思います。

ただ、Shopifyが私を日本のカントリー・マネージャーに選んだわけではなく、私が自分で自分を選んだんです。Shopifyは起業家精神を大事にする企業で、信念を持ってやりたいことがあれば、それを支援してくれます。

私のShopifyでの最初の仕事は、グローバルでの成長戦略の策定でした。そのとき、最も優先順位が高いのは日本市場だと考えました。世界第3位の経済大国ですし、ECの市場規模でも第3位。それにダイナミズムが大きい市場で、D2Cビジネスの勢いもあるからです。そういう話をCEOのトビーにしたら、「その通りだね。じゃあ、行ってこい」と言われて、日本法人がスタートしました。

――もともとはJPモルガンやシティグループで働いていたということですが、Shopifyに参画したのは、どういう経緯だったのでしょう?

ワング キャリアを始めたのは銀行業界だったのですが、そこでは自分が大きなインパクトを与えられないと感じて、辞めました。シティグループにいるときは、日本を含め、世界中の国をまわりましたね。その後、アジアでの投資事業を行なっていたときに、当時住んでいたジャカルタでShopifyの初期メンバーと会う機会がありました。

話を聞くと、Shopifyも私と同じく、立ち上げ初期の起業家を支援するソリューションを提供しているということでした。そして、事業の国際化を手伝ってくれないかと言われて、Shopifyに入ることになったのです。

当時も今も、Shopifyのミッションは「Make Commerce Better for Everyone」です。このミッションのもとで起業家たちを支援する企業に、成長期に入れたのは、ラッキーだったと思います。

――日本のカントリー・マネージャーとして、他の国とは違う日本市場の特徴を感じていますか?

ワング まず、ECのエコシステムが非常に複雑です。例えば決済方法にしても、米国だとクレジットカードだけですが、日本だと他にも、代引き、コンビニ払い、キャリア決済などなど、たくさんあります。それらすべてに対応したプロダクトを作らなければなりません。

もう一つ大きな違いは、店舗を開設している方々が、より良いカスタマーサポートを直接受けたいというニーズを持っていることです。そこで、世界の中で東京にだけ、カスタマーサポートセンターを設けています。

ネットショップで購入する消費者については、2019年に分析をして、興味深いことがわかりました。例えば、米国の消費者は1回の買い物で平均6~7アイテムを購入しますが、日本では平均2アイテムしか購入しません。まとめて購入したほうが、コストが安く済むのですが。

また、日本の消費者は同じ店舗から繰り返し購入する傾向が高いこともわかりました。ブランドへのロイヤルティが高く、いったん信頼すれば、高くても購入するのです。

――そうした日本の消費者の特徴に合わせたローカライズはしているのでしょうか

ワング 我々がローカライズをしているのはプラットフォームだけで、それを使って、各店舗がブランドを構築し、お客様とつながっています。

――プラットフォームのローカライズというと?

ワング まずは日本語化です。それから、先ほど申し上げた決済方法の多様化など、機能面のローカライズもあります。名前を入力する欄を「名→姓」から「姓→名」に順番を変えるなど、ユーザーエクスペリエンスの面でのローカライズもしています。

また、日本ではパートナーとエコシステムを構築することが重要ですから、〔株〕NTTドコモや経済産業省、〔株〕博報堂、トランスコスモス〔株〕などとパートナーシップを結んでいます。