不動産投資家が意識する税金と言えば、「所得税」「住民税」「固定資産税」あたりでしょう。投資初期ならそのくらいでいいのですが、事業規模が大きくなると「個人事業税」についても考える必要があります。課税されると、予想外のコスト負担になるからです。

不動産投資が一定規模になると事業税がかかる

不動産投資家,個人事業税
(画像=Brian A Jackson/Shutterstock.com)

不動産投資にある程度慣れ、投資規模が大きくなってくると、事業税がかかります。事業税とは、個人・法人問わず、事業を行うにあたって利用する公共施設やサービスの費用に充てるために課される地方税です。ただし個人については、法律で定められた70業種を営んでいる場合に課税されます。

不動産投資では、アパート・マンション賃貸は「不動産貸付業」、駐車場経営は「駐車場業」として事業税の課税対象となります。ただし、不動産貸付業でも小規模だと課税対象になりません。細かい基準がいろいろありますが、「おおむね貸している部屋が10室以上になったら事業税がかかる」と考えておけばいいでしょう。なお駐車場業については、基本的に1台分でも課税対象となります。

事業税も所得税や住民税と同様に、赤字の場合は課税されません。また事業規模が大きくても、所得額が290万円未満は非課税です。不動産投資家は、「投資規模が10室以上になって、利益が300万円以上になったら事業税がかかる」と覚えておくといいでしょう。

個人事業税の計算方法

ここからは、個人事業税の計算方法を見ていきましょう。なお、不動産貸付業と駐車場業に適用される事業税率は5%です。

不動産投資家の事業税の計算式は、以下のとおりです。

不動産投資家の事業税の額=(不動産所得の金額+青色申告特別控除額-290万円)×5%

繰越損失や譲渡損、建物や設備に被災による損失がある場合は、税率をかける前に差し引くことができます。実際は地方自治体が計算し、通知された税額を納付することになりますが、計算式は知っておくといいでしょう。

個人事業税のメリット・デメリット

個人事業税も他の税金と同様、メリット・デメリットがあります。それぞれ確認していきましょう。

メリット:必要経費になる

事業税のメリットは、「必要経費として計上できる」ことです。前述のとおり、事業税は公共施設やサービスの利用料のようなもので、固定資産税や印紙税と同様、不動産賃貸業に必要な支出と考えられます。そのため、不動産所得を計算する上で必要経費になるのです。一方、所得税や住民税は納税者個人の収入に対して課税されるものであり、不動産賃貸業に必要な支出ではないため必要経費にはなりません。

デメリット:節税しにくい

事業税のデメリットは、節税しにくいところでしょう。所得税を計算する際の不動産所得をもとに計算されるため、節税の余地がほとんどありません。さらに、所得税のように青色申告控除が加味されません。

青色申告特別控除10万円の適用を受けている不動産投資家は、「事業税では所得額が290万円以下なら課税されない」という条件を鵜呑みにせず、これに10万円を足した300万円が事業税の課税ラインになると考えておかなくてはなりません。

強いて言えば、不動産所得と同様に「損失が生じたら3年間繰越控除ができる」「事業用資産で被災した、あるいは譲渡損が生じたら所得額から差し引ける」というルールによって節税ができます。納税通知書が届いたら、これらが反映されているかどうかを確認するようにしましょう。

事業税で悩んだら法人化の検討を

「事業税率はわずか5%だから大丈夫」ととらえるのは禁物です。実際は、その他に所得税や住民税の納付義務もあるからです。「不動産所得が300万円を超えたら『所得税率10%+住民税所得割10%+事業税率5%=25%』で済む」と考えがちですが、昨今の不動産投資家はサラリーマンや他に事業を営んでいる人が多いです。

不動産オーナーの本業が年収1,000万円のサラリーマンの場合、「所得税率33~45%+住民税所得割10%+事業税5%」で実際の負担は所得の5~6割になります。社会保険料などの負担も合わせると、手元に残る所得額はさらに低くなるのです。「事業税が重い」と感じるようになったら、法人化を検討してみるといいでしょう。(提供:YANUSY

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