地球温暖化の阻止が社会的課題になる中、賃貸住宅にもエコ化の波が押し寄せています。二酸化炭素の削減につながるZEH(ゼッチ)住宅の普及が求められているのです。政府が進める「ZEH支援事業」を中心に、賃貸住宅のエコ化に対する補助金制度の内容をご紹介します。

COPが警告!地球温暖化阻止は待ったなし

不動産投資
(画像=Andrei Shumskiy/Shutterstock.com)

COP25(第25回国連気候変動枠組条約締約国会議)が2019年12月2日から同15日まで、スペインのマドリードで開催されました。COPは、これまでにも「地球の気温上昇による気候変動対策は待ったなしの状況にある」と繰り返し警告してきました。COP25の中心的課題は、地球温暖化の新たな枠組みである「パリ協定」の実施に向けたルール作りを話し合うことです。

パリ協定とは、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して十分に低く抑える(2°を目標に、いずれ1.5°へ)ことを目指す協定で、2016年11月4日に発効しました。CO2(二酸化炭素)による温室ガス効果が地球温暖化の原因と言われており、世界的にCO2を削減することを迫られているのです。

「ZEH住宅」とは何か

パリ協定の政策の1つとして実施されているのが、「ZEH支援事業」です。

ZEHとはNet Zero Energy Houseの略称で、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した住宅」(資源エネルギー庁見解)のことです。

つまり、住宅のエネルギー消費量がゼロという意味ではなく、省エネ設備を導入して節電した上に、必要なエネルギー量を太陽光発電やエネファームなどで生み出すことによって正味ゼロにするのがZEH住宅ということになります。

「ZEH支援事業」では、どれくらい補助されるのか

では、ZEHの賃貸マンションを建築する場合、どれくらい補助されるのでしょうか。政府が公表している令和2年度の「集合住宅におけるZEH支援事業」の概要から、マンション規模別の補助金額を見てみましょう。

規模補助金額上限
超高層マンション(21階建て以上)補助対象経費の2/3以内年3億円
複数年の場合1事業10億円
高層マンション(6~20階建て)補助対象経費の1/2年4億円、同1事業8億円
中層マンション(4~5階建て)1戸50万円×全戸数年3億円、同1事業6億円
低層マンション(1~3階建て)1戸50万円×全戸数年3億円、同1事業6億円

詳細は下記の通りとなります。

超高層マンション(21階建て以上)

【補助対象】『ZEH-M』~ZEH-M Oriented
【補助金額】補助対象経費の2/3以内。
【上限】年3億円、複数年の場合1事業10億円。
【補助対象経費】設計費(実施設計費用、省エネ性能の表示に係る費用)、設備費(高性能断熱材、窓・ガラス等の開口部材、暖冷房設備、給湯設備、換気設備、照明設備(ダウンライト等)、HEMS・MEMS、蓄電池(共用部に限る)、工事費(補助事業の実施に不可欠で補助事業設備の設置と一体不可分な工事に限る)。

高層マンション(6~20階建て)

【補助対象】『ZEH-M』~ZEH-M Oriented
【補助金額】補助対象経費の1/2。
【上限】年4億円、同1事業8億円。
【補助対象経費】超高層マンションと同じ。

中層マンション(4~5階建て)

【補助対象】『ZEH-M』~ZEH-M Ready
【補助金額】1戸50万円×全戸数。蓄電システムを設置する場合2万円/kWh加算(上限1戸あたり20万円または補助対象経費の1/3。一定の条件を満たすものは上限1戸あたり24万円。2019年度からの継続事業の場合は1戸あたり60万円×全戸数)。先進的再エネ・低炭素化に資する素材(CLT等)を一定量以上使用する場合、定額を加算。
【上限】年3億円、同1事業6億円。

低層マンション(1~3階建て)

【補助対象】『ZEH-M』およびNearly ZEH-M
【補助金額】中層マンションと同じ。
【上限】年3億円、同1事業6億円。

補助対象の評価基準

『ZEH-M』……省エネのみ20%減、再エネ含め100%減
Nearly ZEH-M……省エネのみ20%減、再エネ含め75%減
ZEH-M Ready……省エネのみ20%減、再エネ含め50%減
ZEH-M Oriented……省エネのみ20%減

なお、補助金はデベロッパーだけでなく、個人事業主でも申請することができます。再生可能エネルギーを取り入れることで電気代を削減できる上に、かなりの金額の補助金を活用できるZEH住宅のメリットは大きいと言えるでしょう。

「ZEH賃貸住宅」は普及するか

政府が普及を目指しているZEH住宅は、今後普及していくのでしょうか。政府の「地球温暖化対策計画」では、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建て住宅の半数以上をZEHにすることを目指す」(資源エネルギー庁見解)という目標を掲げています。

社会の流れに合わせ、新築賃貸マンションなどでもZEHを導入する物件が増えることが予想されます。この補助金制度は、エコ化時代の賃貸経営にマッチしたZEH住宅の普及に大いに役立つことでしょう。

また、エコであること自体が不動産としての価値を担保する社会的側面も今後、浸透してくるかもしれません。
マンションの建築を考えている人は、地球温暖化阻止にも貢献できるZEHマンションも有力な選択肢になるでしょう。

※この補助金事業は年度ごとに内容や募集要項が変わる可能性があります。申請の際は最新年度の内容をご確認ください。(提供:Dear Reicious Online


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