コロナ禍(ころなか)による打撃は不動産オーナーにとっても他人事ではありません。事業や生活が立ち行かなくなった店子からの家賃収入が激減して赤字が危ぶまれる中、コロナ対策としてさまざまな資金繰り政策が打ち出されています。今回はその中で最も注目されている「持続化給付金」について解説し「どういった不動産オーナーが活用できるのか」について紹介します。
コロナで今後の不動産経営が心配な事業者続出
コロナ禍の影響で店子からの家賃減額の申し込みや契約解除により多くの不動産オーナーが賃貸業継続の危機にさらされています。ここで検討したいのが国や自治体による助成金・給付金の制度です。特に持続化給付金は、多くの法人・個人の事業主から事業立て直しの資金として注目されています。
持続化給付金とは何か
持続化給付金とは、コロナ禍の影響で休業や営業縮小を余儀なくされ売上が下がった事業者に対して経済産業省が交付する給付金です。補助金と違い用途の制限がなく使った後の調査も行われません。中小法人なら最大200万円、個人事業主なら最大100万円を受け取ることができます。具体的な内容は以下の通りです。
1.申請条件
前年同月に比べて売上が50%以上減少した月があることが条件です。2020年1月以降の1ヵ月を任意で選び売上が前年同月の売上に比べて半分以上落ち込んでいれば給付金の申請ができます。
2.申請できる人
資本金・出資金が10億円未満の法人、資本金・出資金の定めのない法人や個人事業主は従業員数が2,000人以下ならば申請できます。ただ後述しますが、個人事業主であれば誰でも必ず申請できるわけではありません。なお2020年1月以降創業した法人・個人事業主は対象外になります。さらに風俗営業や宗教関連の法人も申請はできません。
3.給付額
既述の通り「中小法人は最大200万円、個人事業主は最大100万円」が支給されます。ただ前年1年間の売上からの減少分が上限です。具体的には、以下の算式で算出した金額が上限になります。
・「対象月の属する事業年度の直前事業年度における1年間の売上」-(「対象月の月間売上」×12ヵ月)
例えば前事業年度の年間売上が1,000万円、対象月の月間売上が50万円だとします。このときの計算式の金額は「1,000万円-(50万円×12ヵ月)=400万円」です。400万円>200万円なので、このときの支給額は200万円になります。
4.申請期間・手続き
2020年5月1日~2021年1月15日までです。手続きは原則、オンラインでの申請となります。申請の際は必要項目に入力するほか確定申告書や帳簿など対象月の月間収入が分かるものなどが添付書類として必要です。オンライン申請がどうしても難しい人は、事前にウェブか電話で予約をしたうえでサポート会場にて申請をすることになります。
なお予約の受付は2020年5月18日からです。サポート会場での申請についても確定申告書や帳簿、本人確認書類などが必要になります。詳しくは経済産業省「持続化給付金」特設サイトをご確認ください。
コロナ禍による赤字に「持続化給付金」は使えるのか
「幅広い事業者が対象」と謳う持続化給付金ですが不動産賃貸業については制限がかかります。
不動産管理会社はOK
不動産投資が法人化している場合、つまり不動産管理会社として不動産賃貸業を営んでいるならば持続化給付金は申請可能です。
個人の不動産オーナーはアウト
法人の不動産オーナーは申請できる一方、個人の不動産オーナーは申請できません。なぜなら申請できる個人事業主の所得の種類が事業所得に限定されているからです。仮に「5棟10室」という不動産所得の事業的規模を満たしていたとしても個人の不動産オーナーは申請できません。また雑所得で確定申告を行っている人も持続化給付金の対象外となります。
例えば正社員として働きつつ民泊を経営している人は、民泊収入が雑所得に該当するのが一般的であるため、申請できません。
コロナ融資や納税の猶予で対処を
「大規模に不動産投資を行っているのに申請ができないなんて」と不満に感じるかもしれませんが、持続化給付金の規定が決まっている以上、どうにもなりません。ただし2020年5月12日の経済産業大臣会見で「雑所得で持続化給付金が受けられないフリーランスなど別途新たな支援を出していきたい」という内容を述べており今後支援内容が追加される可能性があります。
それまでの間は個人の不動産オーナーは無利子・無担保のコロナ融資や固定資産税や都市計画税、所得税の納税の猶予を活用して資金繰り改善につなげることも方法の一つです。
※こちらの記事は2020年5月1日時点での情報を元に執筆しております。(提供:YANUSY)
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