新型コロナウイルスの終息時期が見通せない中、従業員を抱える企業がより厳しい状況に追い込まれつつある。雇用を守りたくても、売上の激減により給与を支払い続けることが難しくなってきているのだ。こんなときだからこそ、特に国が打ち出している支援策を経営者は全て漏らさず知っておきたい。

コロナの影響で従業員の解雇が相次いでいる

雇用
(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、企業の倒産や従業員の解雇が相次いでいる。

民間調査会社の東京商工リサーチによれば、5月8日までに新型コロナウイルスの影響で倒産に追い込まれた企業は全国で128社に上る。この調査では負債1,000万円以上が対象となっているため、事業規模が小さい中小企業などを含めればその数はもっと多くなる。

企業による、解雇や雇い止めも増えている。厚生労働省が1月末から4月27日までの数字を調べたところ、解雇や雇止めにあった人の数は見込みを含めすでに全国で約3,400人に上っており、4月に入ってから増加のペースが早まっているという。

実際に把握しきれていないケースも含めれば、解雇や雇い止めの数は3,400人という数を大幅に上回っていることも考えられる。日本国内では大手タクシー会社が従業員約600人に解雇を通告し、その後、企業側が撤回の方針を示したことも波紋を呼んだ。

海外ではより大規模な解雇のニュースが飛び交っている。例えば、民泊仲介世界最大手の米Airbnbは、全従業員の25%に相当する1,900人の解雇を発表している。

国の公的な支援制度の活用を

売上が激減すれば、企業は雇用を守りたくても守れない状況に陥る。しかし、多くの経営者は何とかして雇用を守りたいと考えている。このようなときに賢く利用したいのが、従業員の雇用を守ることにつながる国の公的な支援制度だ。

新型コロナウイルスに対する国の支援制度は、大きく分けて雇用を直接守るための支援制度と企業のキャッシュフローを支援するための制度に分類される。後者は雇用に直接関わるものではないが、キャッシュフローが改善すれば自ずと雇用も守りやすくなる。それぞれどのような制度があるのか紹介していこう。

雇用面:雇用調整助成金

政府は新型コロナウイルスの影響拡大を鑑み、雇用調整助成金の特例措置のさらなる拡充を発表している。雇用調整助成金は、休ませた従業員に支給する休業手当の一部を国が助成するという制度だ。特例措置の拡充により、一定の要件を満たす場合には助成率が特例的に10分の10(8,330円が上限)となる。

10分の10になる条件としては、その企業が中小企業であることや、都道府県などの要請で休業や時短営業が求められた企業であること、労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること、などが該当する場合である。詳細は厚生労働省のウェブサイトなどで確認することができる。

雇用面:小学校休業等対応助成金

「小学校休業等対応助成金」も従業員の雇用を守ることにつながる。

この助成金は、小学校の休業などで子供の世話が必要となった労働者に対し、有給休暇を取得させた場合に支給の対象となり、有給休暇を取得した労働者に支払った給与(8,330円が上限)の10分の10が助成される。この助成金を活用すれば、子供がいる労働者が有給休暇を取得しても企業側の負担が減ることになる。

資金繰り面:セーフティネット5号など

資金繰り面では「セーフティネット保証5号」などの支援制度がある。売上高が5%以上減少した場合、借入債務の80%を信用保証協会が保証する別枠融資(最大2億8,000万円)が受けられるというものだ。

「セーフティネット保証4号」という制度もあり、信用保証協会による保証が80%から100%にアップする。売上高が20%以上減少していることなどが条件となる。

資金繰り面:新型コロナウイルス感染症特別貸付など

そのほか、要件を満たせば実質無利子・無担保融資の対象となる「新型コロナウイルス感染症特別貸付」や「危機対応融資」などの活用も検討したい。新型コロナウイルス感染症特別貸付は日本政策金融公庫など、危機対応融資は商工組合中央金庫などが窓口となる。

資金繰り面:持続化給付金

これまで紹介した資金繰りを支援する2つの制度は融資・貸付だが、「持続化給付金」は返済が不要な給付金だ。中小法人の場合、売上が前年同月比で50%減となっていることなどの条件を満たせば、最大200万円が給付される。対象となるには、資本金が10億円未満、従業員数が2,000人以下、といった条件もある。詳しくは、経済産業省のホームページで紹介されている。

雇用を守ることはアフターコロナのV字回復にも重要

雇用を守ることは従業員の生活を守るという意味でも大切なことだが、「アフターコロナ」のV字回復の担い手を確保し続けるという視点でも重要だ。国が今後、さらに支援を手厚くする可能性も考えられる。自治体ごとに独自の支援制度を設けている場合もあるので、最新情報のキャッチを心掛けよう。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)