概要:先進国株価を中心に上昇
5月に世界各国(1)で実施された金融政策および、株価・為替の動きは以下の通り。
【株価・対ドル為替レートの動き】
・5月は先進国株価を中心に上昇したものの、新興国株価はもみ合いとなった(図表1)
・5月の先進国通貨はもみ合い、新興国通貨はややドル安・自国通貨高となった(図表2)
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(1)本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する49カ国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。
金融政策:各国で追加緩和を実施
5月の各国の金融政策では、日本銀行が臨時の金融政策決定会合を設けて「新たな資金供給手段」(30兆円規模)の導入を決め、オーストラリア準備銀行(RBA)が適格担保を緩和したほか、G20のうち新興国の6カ国で利下げを決定した。
日本銀行の「新たな資金供給手段」は、新型コロナにより影響を受けた企業への貸出に関して、その原資となる資金を有利な条件で供給するターゲット型の資金供給手段と言える。また、RBAは投資適格級の非金融機関社債を適格担保として利用できるようにし、企業の資金調達支援を後押しした。イングランド銀行(BOE)は追加緩和に踏み切らなかったものの、次回の緩和を示唆している2。新興国では直近のコロナ禍の拡大(図表3)を受けて、多くの国が政策金利を引き下げており、ブラジルをはじめ過去最低水準の政策金利となっている。
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(2)イングランド銀行については、高山武士(2020)「英国金融政策(5月MPC)-情報収集のため様子見姿勢」『経済・金融フラッシュ』2020-05-08を参照。
金融市場:株は先進国中心に上昇、新興国通貨安にはブレーキ
MSCI ACWIにおける月間騰落率を見ると、全体では前月比+4.2%、先進国が前月比+4.6%、新興国が前月比+0.6%となった。いずれも上昇したが、新興国は微増にとどまり、今月は特に先進国が上昇をけん引した形になった(前掲図表1)。
国別には、今月は34カ国が上昇し、うち19カ国が先進国だった(図表4・5)。先進国では、コロナショック前の水準まで上昇している国も多くなっており、特にデンマークとニュージーランドでは昨年末を上回る水準まで回復している。
通貨の騰落率に関しては、対ドルの27カ国のウェイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比+0.0%、60カ国のウェイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比+0.7%となった(3)(前掲図表2)。先進国の比重の高いNarrowではほぼ行ってこいとなったが、新興国を多く含むBroadではドル安が進んだ。
MSCI ACWIの構成通貨別に見ると、今月は21通貨が対ドルで上昇し、うち12通貨が新興国だった(図表6)。特に、コロナショック後に大きく下落していた南アフリカランド、メキシコペソなどが下げ止まり、上昇して終えている。ブラジルレアルは5月前半に対ドルで最安値を更新していたが、5月後半には上昇に転じ、月末時点では前月比若干のマイナスにとどまっている(図表7)。
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(3)目実効為替レートは5月26日の前月末比で算出。
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高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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