マイホームの購入や賃貸住宅の建設、リフォームに至るまで住宅に関連するあらゆる支援、サービスを行っている政府系金融機関が「住宅金融支援機構」です。不動産投資を行う上で住宅金融支援機構を利用するメリットと、賃貸住宅向けの取扱商品を紹介します。

住宅金融支援機構とは

賃貸住宅経営
(画像=adragan/stock.adobe.com)

住宅金融支援機構とは、住宅金融市場への安定した資金供給を支援し、住生活の向上に貢献することを目的とした業務を行う独立行政法人です。2007年4月に「住宅金融公庫」から業務を継承する形で設立されました。商品構成は、「個人向け住宅融資」「賃貸住宅融資」「マンション管理組合向け」の3つが柱になっています。

賃貸住宅融資は、大きく分けて「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」「サービス付き高齢者向け賃貸住宅融資」の2つです。賃貸住宅経営に関連する融資制度の内容を確認してみましょう。

「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」

「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」は、省エネ賃貸住宅を建設するための住宅ローンです。子育て世帯が住みやすい広さを有し、高い省エネ性能や入居者の健康面にも配慮した住宅の供給促進を目的としています。最長35年間の長期固定金利でローンを組めるため、金利上昇リスクを回避できる点は大きなメリットです。

金利は繰り上げ返済制度を利用する場合、35年固定金利で1.57%(2020年2月受付分)と低金利で調達ができます。延べ床面積4分の1以下という条件はありますが、自宅や店舗を含めて融資を受けることができるのがメリットです。つまり店舗付き賃貸住宅を建築することもできます。

「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」

「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」は、サービス付き高齢者向け賃貸住宅を建設するための住宅ローンです。サービス付き高齢者向け賃貸住宅とは、高齢者が安心して暮らせるバリアフリー構造の住宅のことを指します。サービス内容は「安否確認」や「生活相談」などです。建設にあたっては、高齢者住まい法第5条に規定されている「サービス付き高齢者向け住宅の登録」を受ける必要があります。

またバリアフリー性や省エネルギー性の基準を満たすなど細かい規定があるため、事前に確認が必要です。金利は繰り上げ返済制度を利用する場合、35年固定金利で1.57%(一般住宅型、2020年2月受付分)とこちらも低金利で利用できます。一般住宅型とは、各戸にバスやキッチン、トイレなどがある物件です。「子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資」と「サービス付き高齢者向け賃貸住宅融資」との共通条件は以下の通りです。

・融資手数料などの各種手数料が無料
・住宅改良開発公社、首都圏不燃建築公社の保証を利用できる
・火災保険に加入するなど

賃貸住宅向けのリフォームローンは7つ

賃貸経営において経年とともに必要になるのが、リフォームによる物件価値の向上です。住宅金融支援機構では、賃貸住宅向けに以下の7つのリフォームローンが利用できるので、物件の用途に合わせて利用するとよいでしょう。

賃貸住宅リフォーム融資(省エネ住宅) 省エネ賃貸住宅をリフォームするか、普通の賃貸住宅を省エネ賃貸住宅にリフォームするための融資
賃貸住宅リフォーム融資(耐震改修) 賃貸住宅の耐震性能を向上させるためのリフォーム融資。敷地面積、床面積の制限なし
賃貸住宅リフォーム融資(長期耐用耐震改修) 耐震性能の向上とともに間取り、内装、建具、設備など全面的にリニューアルする工事を対象に融資する
賃貸住宅リフォーム融資(サービス付き高齢者向け住宅) 普通の賃貸住宅をサービス付き高齢者向け住宅にリフォームする資金を融資する
賃貸住宅リフォーム融資(住宅セーフティネット) 高齢者や子育て世帯などの住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として、都道府県に登録した住宅のリフォーム資金を融資する
災害復興住宅融資(賃貸住宅リフォーム) 災害で被災した賃貸住宅を補修するための資金を融資する。融資を受けるには、「り災証明書」が必要
災害復興住宅融資(賃貸住宅リフォーム)【東日本大震災】 東日本大震災で被災した住宅を補修するための資金を融資する。東日本大震災の「り災証明書」が必要

では、金利はどの程度なのでしょうか。商品や融資条件によって異なりますが、例えば「賃貸住宅リフォーム融資(省エネ住宅)」における融資期間10年以下で年0.69%(2020年5月1日現在)という低金利です。民間金融機関との比較で見ると、三菱UFJ銀行のリフォームローンがネット契約の場合で年1.99~2.875%(2020年5月1日現在)なのでかなり有利であることが分かります。

住宅金融支援機構を利用する場合の注意点

旧住宅金融公庫の時代は幅広い賃貸住宅に対して融資を行っていましたが、住宅金融支援機構に変わってからは、「子育て世帯向け」と「高齢者向け」に用途が絞られています。したがって、幅広い入居者を対象にした一般の賃貸住宅には利用できません。

また、政府系金融機関だけに、借入申込書に添付する書類がかなり多いのが難点です。中には個人では対応しきれない専門的な記載事項もあります。司法書士などの専門家に依頼する場合は、報酬が掛かるのがデメリットといえます。

住宅金融支援機構の賃貸住宅向け融資を活用しよう

「フラット35」のイメージが強い住宅金融支援機構ですが、さまざまな賃貸住宅向け融資制度があることが理解できたのではないでしょうか。政府系金融機関ならではの低金利や細分化された豊富な商品、社会貢献に役立つ事業内容など、たくさんのメリットがあります。マンションを経営中のオーナーや、これからマンション経営を目指す人にとって住宅金融支援機構は強い味方になってくれる存在といえるでしょう。

※各融資制度の詳細は住宅金融支援機構ホームページをご参照ください。

(提供:Incomepress



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