新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)が発生したことで、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪)は1年延期されることが決まりました。新型コロナウイルスの話題で日々持ちきりの中では、取り返しのつかない経済損失を被ることになるのではないかなど、ネガティブな考え方も出てきています。

一方で、この延期がポジティブに働くと考えられる事柄もあります。ここでは、東京五輪の1年延期がもたらす良い影響を紹介します。

経済損失の大きさが話題だがメリットもささやかれる

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(画像=lazyllama/stock.adobe.com)

東京五輪に限らず、五輪は開催国に大きな経済効果をもたらします。2017年に東京都が発表した情報では、2020年の東京五輪による経済効果は、招致が決まった2013年から大会終了後の2030年までの18年間で、約32兆円に上ると試算されていました。過去の開催国が景気や株価の上昇を享受したように、日本に大きな経済成長をもたらすと予測していたのです。

だからこそ、新型コロナウイルスの出現はまったく予期しない出来事であり、厳しいものです。ただし、強行して実施したとしても、外国人の来日を期待することはできず、無観客など前代未聞の方法を取らざるを得なかったはずであり、延期はやむなしといえるでしょう。

もし中止となれば、オリンピックで期待された経済効果は完全に消失します。巨大な需要が失われることをきっかけに、経済が負のスパイラルに陥ったであろうことは想像に難くありません。無茶な開催でもなく、中止でもなく、延期となったことは、不幸中の幸いであり、最高の結果であったと言えるのです。

延期が最高の選択肢であった理由は、東京五輪で期待されていた経済効果がスライドすることが期待できる点が1つ。さらに、新型コロナウイルスの終息に合わせた開催と仮定すれば、人類が困難に打ち克ってV字回復を果たす象徴として、世界を巻き込んだ爆発的な経済効果を生み出す可能性があるのです。

世界中で、経済に打撃を与えたパンデミックのマイナスを取り返すために、各国が大規模な景気対策を開始することが予測されます。1年延期された東京五輪はプラス要因の指標としてマーケットを急激に回復させる材料となるでしょう。

ブランディング、テレワークによる生産性向上……。経済面のポジティブな効果

新型コロナウイルス以前にも世界的に流行したウイルスなどによる疫病は存在しました。直近では2009年の新型インフルエンザの世界的流行があります。歴史的にはヨーロッパで流行したペスト菌は有名です。他にも数多くの病気の流行に人類は見舞われてきましたが、例外なく、すべて収束を迎えています。

東京五輪は1年延期となり、宿泊施設や観戦ツアー、選手村の跡地利用の予定が狂うなど、事業規模縮小や機会損失を強いられることにより日本経済全体としては損失のほうが大きいと言わざるを得ません。しかし、個別の状況を見ればプラスに作用する面も出てきます。

準備に時間をかけられるEC事業者

日本ネット経済新聞が4月に発表した調査結果によると、EC事業者42社のうち、14社が五輪延期により「プラスの影響がある」と回答しています。具体的には「自社の販促を強化できる」との認識が多くありました。コロナウイルスによる在宅からの需要が膨らむ中で、実店舗とECサイトを連携させて、全国の消費者を顧客として取り込む動きが出てきています。2020年開催ではこの流れに乗れなかったものの、2021年なら準備できる、と考える企業にとって、延期はプラス要因と考えられるようです。

テレワークの浸透が企業の競争力を高める

人の行動を大まかに分類すると、消費(飲食、買い物など)、労働、余暇(スポーツ、映画鑑賞など)、睡眠などに分けられます。在宅時間の長時間化は、このうちの消費だけに当てはまるものではありません。

今回のパンデミックは、日本企業の働き方、つまり労働も激変させています。対応に苦慮する企業の姿も見えてきますが、柔軟な働き方を身につけることにより、物理的な場所に縛られず、さまざまな人々が同じ条件で働ける強靭な労働環境が整備される可能性が見えてきました。

最も実感できる変化は、企業のテレワークの導入です。緊急事態宣言が発令されたことによって企業は在宅勤務を推進し、テレワークの環境整備を進めています。テレワークの導入によって、社員の多様な働き方のニーズに応えられるようになり、結果として生産性の向上を進めることができます。

在宅勤務で通勤時間が不要になることで、社員の生産性が上がります。総務省の統計によると、全国平均は片道約40分で、都市部への通勤時間はさらに長くなっています。往復で1日に1時間20分かけていた負担がなくなるのです。

このように、テレワークの導入による在宅勤務の浸透が、企業に変革をもたらすと考えられます。労務管理の基本的な考え方を、時間から成果へと変えられるのです。在宅管理は主にパソコンでの作業が中心であるため、作業を成果として記録し、データとして蓄積できます。

在宅勤務によって、本当に成果を出す社員の存在があぶり出されることで、日本の労働文化が変わり、生産性の向上が実現するとすれば、日本経済の成長を大きく後押しすることになるでしょう。

テレワークは企業の古いシステムを刷新する機会にもなっています。クラウドやチャットツール、テレカンツールなど、インターネットインフラを活用した共同作業環境を導入することで、場所にとらわれない働き方が十分可能になっており、それが将来的に企業の競争力を高めることにつながると考えられます。さらにテレワークの導入は、地震や災害などが起きた際のビジネス継続性を守るなど、自然災害が多い日本におけるリスク管理にも役立ちます。

パンデミックの発生により、消費や労働のスタイルは急速に変わっています。東京五輪の延期を、こうした変化に対応するために与えられた1年の猶予期間と考え、前向きに行動する企業にとっては、混とんとした状況の中で自社のポジションを高める機会になるかもしれません。

スポーツ界からのポジティブなコメント

オリンピックが1年延期と決まったことで、スポーツ界からは多くのコメントが発信されました。多くが前を向いたポジティブな内容であったのが特徴です。いくつかを紹介しましょう。

「延期という判断に異論はありません。私は延期によって、史上最高のオリンピックを開催するための絶好の機会が日本に巡ってきたと信じています。このパンデミックを乗り越え、多くの人々に人類の祭典、スポーツの祭典を披露できることを想像してみてください。世界中の人々が参加し、ポジティブになれる絶好の機会です!」-女子日本代表「さくらジャパン」アンソニーファリーヘッドコーチ 公益社団法人 日本ホッケー協会プレスリリースから

ツイッターを通じて発言するアスリートも多くみられました。

「今自分が健康体である事 練習が出来ている事に感謝。オリンピック延期のお知らせも、まず1番に『準備期間が増えた』と思えたので、前向きな気持ちのまま、今は4月の日本選手権に向けて引き続き頑張ります」-競泳平泳ぎ代表の鈴木聡美選手

「五輪延期かぁ。 影響は凄いけど、自分の今できることを頑張りたい!!」-陸上短距離走の多田修平選手

「いっぱい練習してもっともっと強くなれるように頑張るしかないですね こんな時だからこそポジティブに! がんばるぞー みんなが笑顔になれるいい大会になればいいなー!!! 2021東京オリンピック」-女子サッカー代表の岩渕真奈選手

「『東京オリンピック 1年程延期』 時間が経てば経つほど俺はどんどん強くなるしレベルは上がり続ける 今以上にさらに良い仕上がりになるだろう」-レスリング男子代表の乙黒拓斗選手

また、東京2020組織委員会会長の森喜朗氏はこのように話しています。

「世界中で新型コロナウイルス感染症が拡大している中、人類がこれに打ち克つ証として、来年の東京オリンピック・パラリンピックを実現することは東京2020組織委員会の使命であり、世界中の人々にとって希望の光となると信じています。」-TOKYO 2020ホームページ 東京2020大会 国民の皆様へ東京2020組織委員会会長メッセージから

コロナ収束後のリーダーが見えてくる

東京五輪の1年延期は、経済面で基本的には厳しい影響を及ぼします。一方で、消費や労働のスタイルが急速に変化しており、それに対応することによって、機会へと転換する可能性もあります。

東京五輪の主役である選手にとっても同じです。1年という時間をうまく使うことで、他の選手をしのぐほどの競技力を身につけ、メダルを取れるようになるかもしれません。

その意味で、新型コロナウイルスでネガティブ思考に陥るのではなく、ポジティブな面に自ら光を当てられるかが鍵を握ると言えます。全員に均等に与えられる五輪延期による1年という時間は、それぞれの逆境への対応力を如実に示し、コロナ収束後の新しいリーダーをあぶり出すことになるかもしれません。(提供:JPRIME


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