今の米国株を取り巻く市場環境は平和だという記事をつい先日書きました。

金利が低く抑えられてインフレ率も高くなく、株価が上がりやすい環境が続いているという内容の記事でした。

それからわずか2-3日間しか経ってないのですが、ほんの少しだけ気がかりな点が出てきました。この数日間、金利が上昇ペースを上げているように見えます。

全く慌てるレベルではないですが、4-6月は大量に米国債が発行されて金利が上昇しやすい状態にあるので、ちょっと注意して金利を観察したほうが良いかも知れません。

今は低い金利環境を前提に株価が上昇しているので、もしも金利の上昇が続くと株価を支えられてなくなる恐れがあります。

遠くの空に雲が見えはじめた程度のリスクなので、株の売却などの行動を起こす予定はまだないですが、上昇しやすくなっている金利をFRBの大量の国債購入で無事に抑え込めるのか見守りたいと思います。

この記事のポイント

  • 長期金利(10年国債利回り)がわずかに上昇している。10年国債利回りよりも変動しやすい30年国債利回りを見てみると、上昇傾向がよりはっきりと見られる。
  • 長期金利が低いほど株価は上がりやすい。今の株価は低金利を理由に上昇してきたが、金利が上がれば株価は上昇理由を失う。
  • 今後FRBは国債を購入して金利上昇を抑え込んでくるはずだが、うまく金利上昇を回避できるか注目。

わずかに上昇するアメリカの長期金利

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(画像=Investing.com)

4月以降、アメリカの長期金利(10国債利回り)は0.6-0.7%の間をさまよっていたのですが、6月3日以降の数日間はこの範囲を逸脱して上昇を始めています。

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以下のグラフで2020年2月からの推移を見ると、今の長期金利はまだかなり低い水準なのですぐに心配する必要はなさそうですが、金利の上昇は株価にマイナスな影響を与えるので、ちょっと注意したほうが良いかも知れません。

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長期金利(10年国債利回り)よりも変動が大きい超長期金利(30年国債利回り)を見てみると、こちらもまだ低水準ですが、最近ははっきりと上昇傾向にあることが確認できます。

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金利上昇は株価に悪影響

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一般的に長期金利が上昇すれば、株・国債・金などのあらゆると資産価格が下落する悪影響が出ます。

しかも今の米国株は低い金利の環境にかなり助けられているので、より影響が大きそうです。

株価の特徴

  • 金利が低ければ低いほど、高い株価でも妥当な価格だと見られるようになる。
  • 企業の利益が高ければ高いほど、適正な株価は高くなる。

Factsetの調査によれば、2020年に企業の利益予想は大きく下がりました。

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2020年の企業利益予想(紺色線)は下がり続けている(画像=Investing.com)

それでも米国株が一時期の低迷から力強く回復しているのは、低金利(&量的緩和と米政府の大規模な景気刺激策)によるところが大きかったからです。

今までの米国株は低金利を理由に上昇してきましたが、もしもこのまま金利が上昇を続ければ株価は上昇理由を失い、株価を上昇させる企業利益と金利の2つのエンジンが同時に機能しなくなってしまいます。

金利上昇のリスクはあっても、まだ問題ではない

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「金利が上昇すると株が下落する恐れがある」と言いましたが、現時点ではまだ全く慌てるレベルではないと思います。 株価の評価に一番使われるのは、最近上昇傾向がはっきり見られる30年国債利回りではなく、わずかに上昇し始めた10年国債利回りです。

10年国債利回り(再掲)

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FRBは国債を上限なく買うと宣言しているので、10年国債利回りの上昇が続けば、国債の購入額をためらうことなく増やして金利上昇に歯止めをかけてくるはずです。

増加し続ける国債を嫌って市場参加者が国債を売ることで加速する金利上昇と、FRBの国債大量購入による金利上昇ブレーキの綱引きが行われますが、このどちらが勝つかが注目のポイントになります。

前に別の記事でも紹介しましたが、ガンドラック氏は30年債は一度上昇し始めれば、FRBでも抑えるのが困難と言っています。(※コメントしているのは10年債ではなく、30年債です)

ガンドラック氏の言う通りに金利が上昇するなら株価は下落する恐れがありますが、現時点ではFRBが無事に金利上昇を抑え込む可能性も十分残っています。金利上昇を回避できれば、株に優しい環境がしばらく続くことになるので、今どちらかにかけて株を売買するのはまだ早い気がします。

まだ様子見の状態ですが、長期金利は注目して見ておいて損はなさそうです。(提供:Investing.comより)

著者:YUTA