Microsoft社は10日、ビットコインのブロックチェーン上で動作する分散型身分証明ネットワーク「ION」をベータ版に移行したと発表した。

ION(Identity Overlay Network)は、個人情報の分散化と自己所有を促進するためにMicrosoft社がオープンソースの開発者と共に開発を行っているプロジェクトだ。

マイクロソフト
(画像=月刊暗号資産)

昨年5月にプロジェクトの始動が発表されていた。

IONはMicrosoft社の運用からも独立している分散型ネットワークだ。

同社独自の認証システムやコンセンサスメカニズムを使わず、ビットコインのネットワーク上で情報のトランザクションを認証する仕組みとなっている。

そのため、FacebookやGoogleのようにシステム提供側がユーザーのID情報を保有せずに、IONはユーザーが独自でログイン情報のような「アイデンティティ」を保持できる点が特徴だ。

Microsoft社によると、IONはビットコインのセカンドレイヤー技術「Sidetreeプロトコル」をベースに設計されているという。

これまで、Microsoft社はIONの開発の課題としてブロックチェーンの利点である分散化と、アイデンティティの管理にかかるデータ処理を行うためのネットワークスケーラビリティの両立を掲げていた。

デジタルID情報の保管と送信を世界規模のユーザーを対象に行うには、膨大なデータ処理能力が必要となってくるからだ。

IONの分散型ID管理システムは暗号資産などの価値交換とは異なり、ID自体は交換されないため合意形成システムを持たず、サイドチェーンとは明確に異なるという。

そのため、秒間数百程度の処理能力から秒間数万回の処理ができる分散型ID管理システムの完成が近づきつつあるとのことだ。

Microsoft社はIONの利用ケースとして、新型コロナウイルス対策の感染追跡における個人情報保護などを挙げた。

今後、Microsoft社はビットコイン開発関連企業「Casa」や決済企業「BitPay」、暗号資産取引所「Gemini」などの企業と提携し、IONベータ版テストのノード運用やフィードバックを行う予定としている。(提供:月刊暗号資産