オープンイノベーションを上手に取り入れている自治体を紹介する企画「CLOSEUP OI」。今回取り上げるのは埼玉県の横瀬町(よこぜまち)です。これまでCLOSEUP OIでは、「県」や「市」の単位で自治体にクローズアップしてきましたが、横瀬町は人口1万人に満たない「町」です。
決して「ものづくり」や「IT」などの尖った個性があるとは言えない横瀬町ですが、どのような工夫でオープンイノベーションを推進しているのでしょうか。
横瀬町では少子高齢化の課題が浮き彫りに
横瀬町が抱える課題は、多くの自治体と同じく少子高齢化です。現在の人口は8500人程度ですが、人口の推移を見るとバブル期に1万人を超えて以降、人口は減少傾向にあります。
そして、今後の総人口の予測を見てみると、趨勢人口(戦略的な人口政策の取り組みを想定しない場合の将来人口)は2060年時点で2500人程度となっており、減少の一途をたどっています。
一方、人口政策を考慮した戦略人口を見てみると、2060年時点で5500人ほどの予想になっており、人口減少率が大幅に食い止められているのがわかります。
そこで、人口減少を食い止めるために横瀬町がとった戦略が「未就学の子どもを増やす」ことです。未就学の子どもを増やすためには出生率を上げなくてはいけませんから、直近の施策としては「20~30代を横瀬町に呼び込む」ことが必要になります。
参考ページ:横瀬町について
参考資料:横瀬町人口ビジョン
横瀬町×FoundingBase×リクルートによるOI推進
横瀬町は、多くの自治体が抱える「少子高齢化」という課題を共創で解決しようとしています。そのために、地方自治体との共創やコミュニティ形成を支援するFoundingBase、そしてリクルートホールディングスの新規事業開発部門であるメディアテクノロジーラボと共に、横瀬町での創業支援の拠点「よこらぼ」を立ち上げました(よこらぼの詳細は後述)。
人口減少の打ち手としての創業支援拠点の立ち上げは珍しいアプローチと言えるでしょう。一般的には移住促進や、就業支援といった施策が多い中で、なぜ横瀬町はよこらぼを設立したのでしょうか。
関連ページ:【募集終了!】「埼玉県横瀬町」はオープンイノベーションによって、 町に変化を起こす仲間を募集します。
横瀬町が伴走するオープンイノベーション拠点「よこらぼ」
横瀬町、FoundingBase、リクルートが共同で創り上げたオープンイノベーション拠点「よこらぼ」は、自治体の運営する施設としては一風変わった特徴があります。
それは横瀬町が事業創出を伴走支援することです。自治体の運営する施設は、地元の有力企業や、地域の潤沢なリソースを強みにすることが多いですが、横瀬町は自治体そのものが事業をブーストする装置になろうとしています。
具体的には法的サポート、住民への参加協力依頼、遊休施設の貸し出しなどで事業者をサポートします。
よこらぼには「よこらぼサポーター」という、まちづくりを支援する有志の人々がいます。よこらぼ入居企業は、サポーターからサービスのパイロット版へのフィードバックや、横瀬町内でのプロモーションなどに協力してもらえます。地域内の教育機関へのIT導入など、横瀬町の発展に寄与するプロジェクトには特に、手厚いサポートが受けられそうです。まさに「地域との共創」を実現する、他の施設ではなかなか見られない特徴ではないでしょうか。
関連ページ:よこらぼ
【編集後記】人口の奪い合いからの脱却
日本の人口は減少を続け、少子高齢化に拍車がかかることは周知の事実です。しかし、自治体は地域を活性化させるためにはどうしても人口増加を狙った施策に走りがちです。仮に移住者が増えて人口が増加した地域があったとしても、当然もといた地域からは人が減るわけですから、自治体同士で人口の奪い合いとなっているのが現状です。
その点、横瀬町は新規事業を創出することで地域を活性化させるビジョンを描いているのは画期的な発想です。新規事業が成功すれば、雇用も増えて経済に反映されます。人口の奪い合いから脱却したサイクルをどうやって作るかが、地方自治体の本質かもしれません。
(eiicon編集部)