成長戦略として活用されている子会社化(買収)には、リスクも存在することをご存知だろうか。本記事では子会社化(買収)に関する基礎知識や手順、注意点をまとめた。企業買収を視野に入れている経営者は、本記事で知識を深めて慎重に計画を進めていこう。

目次

  1. 子会社化(買収)とは?
    1. 友好的買収と敵対的買収について
    2. 親会社・子会社・関連会社・グループ会社の違い
    3. 子会社の3つの種類
  2. 子会社化(買収)の方法は2種類
    1. 1.株式取得
    2. 2.事業譲渡
  3. 子会社化(買収)と合併の違いとは?
  4. 子会社化(買収)を行うメリット3つ
    1. 1.事業拡大や多角化を図りやすい
    2. 2.少ない手間で新規事業を始められる
    3. 3.経営資源を獲得できる
  5. 子会社化(買収)を行う3つのデメリット・リスク
    1. 1.負債など余計なものを引き継ぐリスクがある
    2. 2.期待した効果が得られない可能性がある
    3. 3.人材や顧客が離れていく恐れがある
  6. 中小企業が子会社になるメリットとデメリット
    1. 子会社になるメリット
    2. 子会社になるデメリット
  7. 子会社化(買収)の基本的な流れ
    1. 【STEP1】買収先の選定
    2. 【STEP2】専門業者と委託契約を結び、具体的な戦略の策定
    3. 【STEP3】買収先候補企業と面談のうえ、会社買収の手続きを行う
    4. 【STEP4】デューデリジェンスを踏まえた条件交渉
    5. 【STEP5】クロージング
  8. 子会社化(買収)を成功させる3つのポイント
    1. 1.デューデリジェンスは入念に
    2. 2.買収先と友好的な関係を築く
    3. 3.専門家に頼る
  9. 子会社化の成功例
    1. 【成功例1】スムーズな規模拡大を目指した子会社化
    2. 【成功例2】TOB価格が決め手になった子会社化
    3. 【成功例3】売り手側から相手企業を探した事例
  10. 子会社化(買収)は「リスク回避」を重点的に
  11. 子会社化に関するQ&A
    1. Q1.なぜ子会社化するのか?
    2. Q2.子会社化すると何が変わる?
    3. Q3.子会社化されるとどうなる?
    4. Q4.子会社化の議決権は何割?
    5. Q5.子会社になると株や株価はどうなる?
  12. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

子会社化(買収)とは?

子会社化
(画像=stokkete/stock.adobe.com)

子会社化(買収)とは、ほかの会社の経営権を獲得して自社の傘下に入れる経営手法だ。会社を買収することでさらなる成長につながった事例は数多くあり、子会社化は経営者にとって身近な戦略になりつつある。

友好的買収と敵対的買収について

子会社化には、大きく分けて「友好的買収」と「敵対的買収」の2つがある。企業買収への理解を深めるために、以下で両者の違いをチェックしておこう。

・友好的買収…買収対象となる会社の同意のもとで行われる買収行為
・敵対的買収…買収対象となる会社の同意を得ることなく行われる買収行為

つまり、友好的買収と敵対的買収の違いは、「買収対象となる会社の同意が取れているか、取れていないか」である。友好的買収は双方が協力し合って円滑に買収を進める手法であり、日本国内で実施されたほとんどの事例はこの友好的買収だ。

一方、敵対的買収の場合は買収対象となる会社の意向を無視して行われるが、「そのようなことが可能なのか?」と疑問に感じる経営者もいることだろう。実は、多数の株主がいる企業においては、株主の意向が経営に大きく反映することから、資金力を武器に株を買い占めて買収を実現させる事例が存在する。

親会社・子会社・関連会社・グループ会社の違い

ここで、親会社、子会社、関連会社、グループ会社の違いを整理しておこう。

親会社とは、経営権を持つ会社のことだ。例えば、A社がB社を子会社化した場合、B社の経営権はA社が支配することになる。現場の独立性はある程度保たれたとしても、最終的な経営の意思決定は、A社が担う。ここでは、A社が親会社、B社が子会社となる。

関連会社とは、親会社と関連し影響を受けつつも、子会社ほどの支配を受けていない会社のことだ。親会社の議決権保有比率が20%~50%の範囲内であるケースなどが該当する。

そして、親会社、子会社、関連会社を含むすべての会社を、グループ会社と呼ぶ。なお、グループ会社というのは法的に定義された名称ではなく、一般的な呼び方だ。親会社、子会社、関連会社を含む関係性のある会社を、法的には関係会社と呼ぶ。

子会社の3つの種類

子会社には大きく分けて以下の3種類がある。議決権の違いはあるものの、いずれの子会社も親会社が実質的に支配している点は変わらない。

成長戦略として活用されている子会社化(買収)には、リスクも存在することをご存知だろうか。本記事では子会社化(買収)に関する基礎知識や手順、注意点をまとめた。

完全子会社の場合、親会社が100%の議決権を持つ。そのため、1つの親会社が複数の完全子会社を持つことはあるが、完全子会社が複数の親会社に支配されることはあり得ない。また、完全子会社から見た親会社を、完全親会社と表現する。

連結子会社とは、親会社の連結財務諸表に掲載される子会社のことだ。会社は年に1回決算を組み、決算書を作成する。これとは別に、一定の要件を満たす親会社は、子会社や孫会社を含む連結決算を組み、連結財務諸表を作成する必要がある。その対象になる子会社が、連結子会社だ。

非連結子会社とは、子会社に該当するものの、「重要性が乏しい」「規模が小さい」「支配が一時的である」などの理由で、連結決算の範囲から除外される会社のことだ。

なお、これとは別に、障がい者の雇用促進を目的として設立された子会社を特例子会社と呼ぶ。

子会社化(買収)の方法は2種類

子会社化の方法には、株式を買収する「株式取得」と、事業を買収する「事業譲渡」の2種類がある。それぞれの特徴について、以下でさらっと押さえていこう。

1.株式取得

買収対象となる企業の株を保有している個人や法人から、株を買い取って株主の座を獲得する方法だ。企業の発行済株式を50%以上取得すると、子会社化が成立する。買収側は事業拡大や新規事業への参入、売り手側は事業承継や経営基盤の強化を目的として実施するケースが多い。

2.事業譲渡

買収の対価を支払い、買収対象となる企業における事業の一部、あるいはすべてを譲り受ける方法だ。株式取得とは違って株主に変更はなく、単に事業のみを売買するイメージである。

買収側の目的は株式取得と同じだが(事業拡大など)、売り手側は不採算事業から撤退し、「事業の選択と集中」のために実施するケースが多い。

子会社化(買収)と合併の違いとは?

買収(Acquisition)と合併(Merger)とあわせた造語である「M&A(Merger and Acquisition)」は、今や国内でも有名な経営手法だ。買収も合併も企業同士が統合する点では共通しているが、掘り下げるとまったく異なる意味を持つため、ここでしっかりと理解しておきたい。

「買収」はほかの企業を買い取る手法であることに対して、「合併」は2つ以上の会社が合体してひとつの会社になる手法だ。つまり、「合併」の場合はどちらか一方、あるいは両方の会社が消滅することになる。

一方、「買収」の場合は買い取られた会社が消滅することはない。買い取られた会社は買い取った会社の傘下に入り、経営を支配される形になる点が買収の特徴である。

子会社化(買収)を行うメリット3つ

では、買収側が子会社化を実施するメリットは、具体的にどのような部分にあるのだろうか。資金を費やしてまで行う子会社化のメリットは、大きく以下の3つに分けられる。

1.事業拡大や多角化を図りやすい

子会社化によって同業の会社を買い取る場合は、市場のシェアを一気に拡大させられる。一般的に、事業拡大や多角化を図るには中長期的な計画が必要になるが、子会社化をすれば手っ取り早く成長を目指せるので、迅速かつ低リスクで実現しやすくなる。

2.少ない手間で新規事業を始められる

同業以外の会社を買収する場合は、効率的に新エリアに参入できる。新たな事業を一から始めるとなると費用も時間もかかるが、買収をすればそれらの手間を軽減しながらスムーズに新規事業を始められるのだ。

3.経営資源を獲得できる

子会社化を実施する際の交渉次第では、買収対象企業が所有する経営ノウハウや技術力、人材などをまとめて獲得できる。また、取引先や顧客も引き継げれば、さらなる利益アップが見込めるだろう。

このように、子会社化は効率的に成長を目指すための戦略となり得るので、「時間を買う」と表現されることもある。短期間で爆発的な成長を目指している企業にとって、子会社化は真っ先に考えておきたい選択肢のひとつだ。

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子会社化(買収)を行う3つのデメリット・リスク

子会社化にはさまざまなメリットがある反面で、注意するべきデメリットも存在する。具体的なプランニングを行う前に、以下で挙げる3つのリスクをしっかりと把握しておこう。

1.負債など余計なものを引き継ぐリスクがある

子会社化において最も注意したい点が、負債を引き継ぐ恐れがあることだ。株式取得の手法においてはプラスの資産だけでなく負債もまとめて引き継ぐため、引き継いだ資産のなかに「簿外債務」や「群発債務」などが隠れているリスクがある。

ちなみに、「簿外債務」とは貸借対照表に載っていない債務のことで、「群発債務」とは将来的に債務となることが予想される要素のこと。これらの債務が買収後に発覚すれば、経営への深刻なダメージは避けられないだろう。

2.期待した効果が得られない可能性がある

利益アップや経費削減を狙って子会社化を行っても、期待通りの効果が得られるとは限らない。特に多額の費用をかけた買収で効果が得られない場合には、その後の経営存続に大きく影響することを認識しておく必要がある。

3.人材や顧客が離れていく恐れがある

子会社化によって経営の主体が変わることにより、人材や顧客が離れていくリスクがあることも懸念しなければならない。特に経営方針や雇用条件、取引条件などに大幅な変更があると、周囲からの反発を受けやすくなるため注意したいところだ。

中小企業が子会社になるメリットとデメリット

中小企業は資金が限られているため、基本的にはグループ会社の親会社になることはない。そこでここからは、中小企業が子会社になる主なメリットとデメリットをまとめた。子会社になることは戦略のひとつになり得るため、中小経営者はしっかりと読み進めていこう。

子会社になるメリット

中小企業が子会社になる最大のメリットは、親会社の経営資源を活用できる点だ。有名企業の子会社になれば、必要に応じて豊富な経営資源を提供・支援してもらえるため、成長や事業拡大のスピードをぐっと速められる。

ほかにも以下のように、中小企業が子会社になるとさまざまなメリットが発生する。

・親会社のブランド力を活用できる
・資金不足による倒産リスクを抑えられる
・親会社と同じ企業年金基金に加入できるなど、福利厚生を充実させられる
・販路拡大やコスト削減など、シナジー効果を期待できる

上記の中でも親会社のブランド力を活用できる点は、想像以上に大きなメリットだ。例えば、親会社の知名度によってスムーズに交渉が成立したり、より多くの消費者から注目されやすくなったりして、ブランド力による恩恵はさまざまなシーンで受けられる。

また、中小経営者や従業員の社会的信用力が高まることで、プライベートに良い影響(ローンの審査に通りやすくなるなど)が出る点も見落としがちなメリットだろう。

子会社になるデメリット

一方で、子会社化には「経営の自由度が下がる」という注意すべきデメリットもある。

例えば、親会社が50%を超える自社株式を保有している場合は、原則として親会社の指示通りに経営を行わなくてはならない。協議をすることは可能だが、筆頭株主である親会社の意向を無視することは難しいだろう。

そのほか、子会社になる中小企業側には以下のようなデメリットもある。

・自社のブランドを成長させにくくなる
・採算の合わない業務を押し付けられるリスクがある
・親会社が不祥事を起こした場合に、大きな経営ダメージを受ける

また、親会社とは従業員の扱いが異なる点も、子会社になる中小企業が注意しておきたいポイントだ。仮に、同じような業務を行っていても、子会社の給与は親会社の70~80%程度になることが多い。親会社との格差があまりにも大きいと、従業員からの反感を買ってしまう可能性も考えられる。

子会社化(買収)の基本的な流れ

子会社化は大きなリスクを伴う手法のため、慎重に準備を進めていくことが重要である。リスク回避をしながらスムーズに計画を遂行するために、買収の基本的な流れを押さえておこう。

【STEP1】買収先の選定

まずは、買収先候補企業の選定を行う。このプロセスは子会社化の成功を大きく左右するため、M&A仲介会社やマッチング会社などの専門業者を利用するとよいだろう。

専門業者に相談をすると、会社名が記載されていない「ノンネームシート」と呼ばれる概要書を見せてもらうことが可能だ。その概要書には、M&Aの実施を検討している会社の業態や規模、エリア、収益、売却理由などが書かれており、買収対象の会社をじっくりと検討できる。

選定を行う際に大切なのは、子会社化の目的をしっかりと定めておくことだ。どのような会社を買収すると自社にとってメリットがあるのかを、目的と照らし合わせながら慎重に検討しよう。

【STEP2】専門業者と委託契約を結び、具体的な戦略の策定

子会社化の計画を進める意向が固まったら、M&A仲介会社などの専門業者と委託契約を締結する。また、買収は秘密保持が重要になるため、秘密保持契約の締結も同時に行われる。そのうえで、買収のプロから的確なアドバイスやサポートを受けながら、会社買収成功に向けて具体的な戦略を立てていこう。

【STEP3】買収先候補企業と面談のうえ、会社買収の手続きを行う

専門業者と契約を結んだら、いよいよ買収先候補企業にコンタクトを取ることになる。その際には買収先候補企業とも秘密保持契約を締結し、ノンネームシートよりも細かな内容の企業概要書を提示してもらって精査を進めていく。

企業概要書をチェックしてそのまま買収を進める意向が決まったら、買収先候補企業の経営者と面談を行うケースが一般的である。書類ではわからない双方の企業への理解を深め、買収への思いを確かめ合うことが大切だ。

ここまでのプロセスによって子会社化に関する合意を得たら、会社買収の基本的な条件について定めた「基本合意書」と呼ばれる契約書を締結する。すると「独占交渉権」が買収する側に付与され、買収先は一定期間ほかの会社とM&Aに関する交渉ができなくなる。

【STEP4】デューデリジェンスを踏まえた条件交渉

基本合意書の締結後は、買収先企業に対して「デューデリジェンス」と呼ばれる企業調査を実施する。デューデリジェンスは主に以下の4種類があり、税理士や会計士などに依頼をしてしっかりと内容を把握することが望ましい。

○デューデリジェンスの主な種類
1.財務状況を調査する「財務デューデリジェンス」
2.納税状況を調査する「納税デューデリジェンス」
3.コンプライアンス状況を調査する「法務デューデリジェンス」
4.業務状況を調査する「業務デューデリジェンス」

上記のデューデリジェンスによって買収先企業の状況を把握したうえで、最終的な条件交渉を行う。なお、デューデリジェンスを実施して大きな問題が発覚した場合には、基本合意契約を破棄することが可能である。

【STEP5】クロージング

最終的な条件交渉によって取り決め内容や買収取引額に問題がなければ、最終契約書の締結を行う。この契約書には買収に関するすべての事項が記載されるため、専門業者のアドバイスを受けながら慎重に作成していこう。

なお、最終契約書は基本合意書とは異なり、締結後に内容を破棄することができない点に注意したい。

子会社化(買収)を成功させる3つのポイント

ここまでの内容を踏まえて、次からは子会社化を成功させるポイントを3つ紹介する。

1.デューデリジェンスは入念に

デューデリジェンスを徹底して行うことは、子会社化に伴うリスクの回避につながる。もし、買収先企業が負債やトラブルを抱えている場合、それが原因で自社が大きな損害を被る恐れがある。

そのような最悪の事態を回避するために、デューデリジェンスは時間や費用をかけてでも、入念に取り組んでおきたい。

2.買収先と友好的な関係を築く

子会社化は、双方の企業が協力し合って計画を進めることが成功の秘訣である。場合によっては、取引先や顧客による反発や紛争といったトラブルを招くリスクがあるためだ。

そこで、経営者同士のトップ面談の際には、相手企業と友好的な関係を築くことを心がけよう。一方的な交渉ではなく、相談やアドバイスといった形を意識するとwin-winの結果につながりやすい。

3.専門家に頼る

M&Aの専門家に頼ることも、子会社化を成功へと導くために効果的な方法だ。買収には財務や税務、法務など専門的な知識が必要であり、自社の経営陣だけですべてのステップを実行することはリスクが大きい。

M&Aの専門業者を選ぶ際は、「自社と同規模のM&A実績が豊富かどうか?」という点に注目するとよいだろう。また、総合型よりも業界特化型の業者のほうが情報量や知識量が多く、よりスムーズな買収成立を期待できる。

子会社化の成功例

最後に、子会社化の成功例を3つ紹介しよう。

【成功例1】スムーズな規模拡大を目指した子会社化

ネット関連サービスを展開する「楽天」は、スムーズな規模拡大を目指して以下のような株式買収を行っている。

・国内最大の宿泊予約サイトを運営していた「マイトリップ・ネット」を買収(2003年)
・2004年に「あおぞらカード」を買収し、カードローン事業へと参入(2004年)
・楽天銀行の足がかりとして、「イーバンク銀行」を連結子会社化(2009年)

現在の楽天を見ると分かるように、同社は子会社化によって築いた地盤を活かす形で経営にあたっている。このことから、楽天はしっかりと将来を見越した上で買収を行っていることが分かるはずだ。

楽天はほかにも子会社化を実現させているため、他社の買収を検討している場合はぜひ参考にしたい。

【成功例2】TOB価格が決め手になった子会社化

株式買収による子会社化は、必ずしも成功するわけではない。ホームセンター事業を手がける「DCMホールディングス」は、事業拡大を目指して同業種である「島忠」の買収を計画していた。

当初は友好的なTOB(株式公開買付)が実施されていたが、しばらくするとインテリア事業を営む「ニトリホールディングス」が買収に参入してきた。同社はDCMホールディングスよりも高いTOB価格を設定し、2020年12月にTOBを成立させた。

子会社化では両社の関係性が重要になるものの、この事例のように株式の買取価格が決め手になることもある。

【成功例3】売り手側から相手企業を探した事例

最近では事業承継を目的として、売り手側から相手企業を探すケースも珍しくない。例えば、カジュアルシャツの製造を行っていた中小企業A社は、会社を存続させるためにM&A仲介会社を利用した。

その結果、アパレル業界の買収先を探していたB社が見つかり、B社はA社を完全子会社化。A社の経営者は代表取締役を辞任したものの、大きな混乱を招くことなく事業承継を成功させた。

このように、子会社化は会社を守る手段としても活用できるため、後継者不足などで悩んでいる場合はぜひ選択肢として検討したい。

子会社化(買収)は「リスク回避」を重点的に

子会社化は、事業の発展や拡大に向けた経営戦略として非常に効率的な手法である。しかし、負債やトラブルを引き継ぐ恐れや、期待通りの効果が得られないなどのリスクが大きいことも事実だ。

もちろん、本記事で紹介した手順に沿って慎重に計画を進めれば、買収を成功させて目的を達成できる可能性は十分にある。しっかりと情報を精査したうえで買収を実施できるよう、まずは信頼できる専門業者に相談することから始めるとよいだろう。

子会社化に関するQ&A

Q1.なぜ子会社化するのか?

A.ほかの会社を子会社化すれば、迅速な事業拡大が可能だ。新エリアへの参入や事業の多角化など、中長期的に取り組む必要がある計画も、低リスクで短期間に実現しやすくなる。事業拡大の手間やコストを削減できるのも、親会社にとっては大きな魅力だ。また、子会社化によってノウハウや技術力、優秀な人材をはじめとした経営資源を獲得できるのもメリットといえるだろう。

子会社化される会社にとってのメリットは、経営資源の提供・支援を受けられることだ。親会社のブランドや信用力を活用できる、資金援助で商品・サービスの開発が加速する、従業員の福利厚生を充実させられる、といったメリットが挙げられる。

Q2.子会社化すると何が変わる?

A.子会社化することで、子会社の経営権を獲得できる。子会社化とは、ほかの会社の経営権を獲得して自社の傘下に入れることだ。親会社は子会社を支配する立場となり、ノウハウや技術力、優秀な人材など、経営資源を獲得できるのもメリットだ。

Q3.子会社化されるとどうなる?

A.子会社化されると、経営権は親会社が持つことになるが、会社は存続する。子会社化とは、ある会社がほかの会社の経営権を獲得し、傘下に入れることを指す。子会社化された場合、現場の独立性はある程度保たれるが、最終的な経営の意思決定は親会社が担うことになる。

具体的に現場のオペレーションや従業員の福利厚生がどのように変わるかは、親会社の判断によって変わることとなる。通常、買収で子会社化を実現する前に、十分な協議を重ねておくことがほとんどだ。

Q4.子会社化の議決権は何割?

A.親会社の議決権割合が50%超なら、その会社は子会社となる。親会社の議決権割合が50%以下の場合、議決権以外の要件を満たすことで、子会社と判定される。親会社の議決権割合が100%の子会社は、完全子会社と呼ばれ、この場合の親会社は完全親会社と呼ばれる。

Q5.子会社になると株や株価はどうなる?

A.上場企業が完全子会社になる場合、最終的には上場廃止となる。親会社はまず、子会社の株式をより多く取得するため、TOB(公開買付け)を実施し、その後株式を100%取得するため、株式交換を実施することが多い。

株式交換では、株主総会の同意を得た上で、子会社の株式を取得するため、対価として株主に親会社の株式を割り当てる。一人ひとりの株主と交渉して株式を取得する必要がなく、簡易的な取引で完全子会社化が実現することから、この手法がとられることが多い。株式交換の比率は、親会社と子会社の間で決めることになる。

完全子会社ではなく、通常の子会社になる場合、子会社化されても上場は維持される。親会社は、子会社の株式を一定割合取得するため、大規模な買付を実施する。それにより、子会社化される会社の株価は上昇することが多い。子会社化されて以降の株価は、他の会社と同様、景気動向や業績によって変動することとなる。

投資家の立場で、自分が株を保有する会社が子会社になることが決定した場合、公表される情報にしっかり目を通し、チャンスを逃さないようにしたい。

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文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)

(提供:THE OWNER