要旨
- 6月調査短観では、緊急事態宣言発令後の経済活動失速の影響を受け、リーマンショック後に匹敵する急激な景況感の落ち込みが示されると予想する。大企業製造業では海外でのロックダウンに伴う輸出の減少、外出自粛による国内製品需要の落ち込み、サプライチェーン混乱による部品の調達難などを受けて景況感が大幅に悪化すると見込まれる。非製造業も、入国規制に伴う訪日客の途絶に加え、外出自粛や休業に伴う売上の急減などから景況感が大幅に悪化すると予想される。
- なお、既に国内外で経済活動が段階的に再開されており、今後の景気回復が見込まれるため、大企業の先行きの景況感は持ち直しが示されるだろう。ただし、景気回復は緩慢との見方が一般的であるほか、感染第2波への警戒もあり、改善は小幅に留まるだろう。
- 2020年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比3.0%減(前回調査時点では同0.4%減)に下方修正されると予想している。例年、6月調査では計画の具体化に伴って上方修正される傾向が極めて強い。しかし、今回は新型コロナの感染拡大に伴う収益の大幅な悪化や、事業環境の強い先行き不透明感を受けて、企業の一部で設備投資の撤回や先送りの動きが台頭し、この時期としては異例の下方修正になると見ている。
- 今回の短観は、緊急事態宣言発令後の経済活動失速が企業にどの程度の悪影響を与えたかを計る大きな材料と位置付けられる。全体的に悪化が見込まれるが、業況判断D.I.の足元の低下幅、先行きにかけての方向感、設備投資計画の下方修正状況など注目すべき点は多い。そうした中、とりわけ注目されるのが資金繰り判断D.I.の下落幅だ。前回調査以降、休業や売上の急減に伴って企業の資金繰りは逼迫度を増したとみられる。政府・日銀は資金繰り対策を打ち出してきたが、その効果が問われることになる。