結果の概要:1-3月期はやや減速
6月18日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
・2020年1-3月期の前年同期比伸び率は+1.6%、予想(1)(同+1.6%)と同じで、前期(同+2.1%)から減速した(図表1・2)
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(1)bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
結果の詳細:多くの産業でブレーキがかかった公算大
今回の結果は、5月19日に公表されていた予備推計値からも変化がなかった。
同時に公表された産業分類別(2)の伸び率を見ると(図表3)、「金融」セクターが前期に引き続き最も伸び率が高く前年同期比+9.8%となった。また、「小売・卸売」が+4.9%、「製造業」が+3.6%と高い成長率を記録した。一方で、「水道」「事務サービス」「運輸」は前期に引き続き前年同期比でマイナス成長となった。
需要別の伸び率や季節調整系列については、6月18時点でロシア連邦統計局のウェブサイトから入手できなかったが、昨年度までの需要別の動向をみると(図表1・4)、年末での輸出減少が目立っており、コロナ禍による原油需要低迷の影響を受ける前から輸出が伸び悩んでいたことがわかる。季節調整系列については、1-3月期を簡易的に試算するとGDP伸び率は前期比でマイナスとなり、多くの産業で成長にブレーキがかかった公算が高い(図表5)。
ロシアでは、プーチン大統領が非労働期間として住民への外出自粛を要請したのが、3月28日以降であり、モスクワで厳しい外出制限がなされたのが30日以降であるため、1-3月期の成長率に対する新型コロナウイルスの影響と封じ込め政策の影響は限定的とみられるが、減速の兆しもわずかにみられる。
1-3月期のコロナ禍のロシア経済への影響は限定的だったと言えるが、その後はコロナ禍の影響を大きく受けている。感染者は米国・ブラジルに次ぐ規模となり、4月以降は封じ込め政策によって、消費活動や生産活動も急停止を余儀なくされた(図表6)。
足もとでは5月11日に非労働日が解除され、産業再開が段階的に実施されていることや、原油価格が、OPECプラスで協調減産を続けていることもあり、下げ止まりの兆しが見えているため、経済減速の最悪期は脱したと言えるが、コロナ禍による内需・外需の落ち込み影響は長期化すると見られ、経済活動は低い水準での推移が続くと言える。
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(2)自家利用の財・サービスについては便宜的に第三次産業(その他)に含めた。
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高山武士(たかやま たけし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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