コロナ禍において、自宅で料理をする人が増えているという。食べものは健康を構成する基本要素であり、健康は経営者にとっても大きな関心事だ。
今回は『アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事 高脂質・低糖質食で、みるみる腹が凹む』出版記念企画として、監訳者の金森重樹(かなもりしげき)氏に話を伺った。
金森氏自身、多くの企業オーナーであり、歯科医院を経営していたことから健康分野にも造詣が深い。ダイエットに関するTwitterアカウントのフォロワー数は12万人を超え、そこでダイエットonlineサロンを主催している。
「経営者のための健康的なダイエット」をメインテーマに全5回のインタビューを実施。
連載第4回目は、脂肪で痩せるメカニズムについて伺った。(聞き手:山岸裕一、編集構成:上杉 桃子)※本インタビューは2020年4月に実施
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オメガバランスを逆転させる
―前回は野菜植物毒と穀物牛の問題について伺いました。穀物牛がなぜ問題なのか、詳しく教えてください。
フォアグラとは、ガチョウに無理に穀類を食べさせて「脂肪肝」を起こさせる食品です。穀物牛はいわば、それを牛で行っていると考えてください。
グラスフェッドビーフといって、草を食べて育った牛はオメガ3という抗炎症性の脂肪酸を多く含み、それは人間の体にいいんです。一方、穀物牛はほとんどがオメガ6です。草を食べて育った牛はオメガ3が多くて炎症を抑制するんです。ここでオメガバランスを逆転させたい。 (参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0753332202002536)
食べ物自体、野菜もダメ、穀物牛の肉もダメ、となるとサプリの摂取が必須になります。そうしないと自然界に存在するバランスに擬似的に近づけることさえできない。
脂の取り方自体も私は著書と同じ考えです。サプリの摂取については、TCA回路と電子伝達系を動かすのに必要なものはほぼ同じです。著者はおそらく食道楽なんだと思います。だから、植物毒とか野菜の糖質の多さに目をつぶって野菜も栄養ぐらいにみている。
本当に本来の人間の食事に近づけようと思うと、生まれてから死ぬまで一切野菜をとらないアラスカのイヌイットやマサイ族が理想だと考えています。イヌイットはお肉と魚でほぼ全てのエネルギーを摂ります。
イヌイットは肉と魚以外では落花生を食べるようです。このように、一切、野菜を摂らないパターンの人たちのほうが健康だったりするんです。地域によっては魚やアザラシが獲れない場所では当然、塊茎をしょうがなく食べてきた。
人間は完全な高脂質食で生きていけるんですが、この著者はもともとビーガンだったためか、野菜をやめられない。オメガバランスを逆転するとどれだけいいことがあるか。
私の場合、今は新型コロナウィルス禍の感染リスクを避けて葉山に疎開していたのですが、サバ缶を毎日食べていました。オメガ6はサラダ油やゴマ油、揚げ物で使われる油に多く含まれるだけでなく、先述した通り穀物牛にも多く含まれています。ですので、通常の食事ではオメガ3とオメガ6の摂取量は、オメガ6をオメガ3よりも6倍程多く摂ってしまいますが、サバ缶の場合はオメガ3がオメガ6の5倍あるんです。
サバ缶生活を始めてから、もともと57キロ台だったのに、さらに一気に1.5キロも落ちて56キロ台になりました。
これまでほぼ穀物牛しか食べていなかったものが、いきなりサバ缶でオメガ3を大量に摂るようになってから、炎症が確実に治まったと思います。痩せている状態からさらに痩せた。一般的に見たら、「脂ばっかり食べて太るじゃないか」って思われるかもしれませんが、実施してみれば一般的な想像とは全く逆です。
肉を食べてもインスリンは出る
―ただ、正しい知識がないと、野菜をゼロにして、毎日脂質と肉だけを食べていいんだというメッセージになりそうなので、そこは書籍を読んでくださいということですよね。
はい。TCA回路や電子伝達系などの代謝の仕組みを理解して、れまでほぼ穀物牛しか食べていなかったものが、いきなりサバ缶でオメガ3を大量に摂るようになってから、炎症が確実に治まったと思います。それらを動かす補酵素、補因子のサプリを完璧に揃えてオメガバランスを整え、炎症物質を除く。これが基本です。
炎症物質については、例えばMSG(グルタミン酸ナトリウム)とか乳化剤などは体内の炎症の原因になります。プロセスチーズにはナチュラルチーズとは違って乳化剤などが入っているため、体内に炎症を起こし、結果、太ってしまう。
一方、インスリン制御はどういうことかというと3食を規則正しく同じ量を食べることは危険なので、1食だけドガ食いをしなさいという話なんです。これについては同一摂取量を日に3分割して食べた場合と、1回で食べた場合を比較した論文があります。なぜかというと、年単位で標準体重ではない人、つまり肥満の人はインスリン抵抗性(インスリンが正常に働かなくなる状態)が発生しています。 (参考:https://academic.oup.com/ajcn/article/85/4/981/4648934)
血糖値を調整するインスリンは、糖質とタンパク質を食べることで出まくるんです。タンパク質は血糖値が上がりにくいものの、インスリンが出る事が最近分かって来ています。ですので、タンパク質も1日に3回も食べるとインスリンが1日中出る。1日1食にすることで、24時間ファスティング、インターミッテントファスティングという、24時間断食になる。
要するに、インスリンを1日1回しか出さない状況にすればいいということです。ここで注意することは肉を食べてもインスリンは出るんです。肉でも、です。つまり、肉は太らないという根っこの常識自体が間違いなんです。そこがポイントだったりします。
旧石器時代の骨を食べる食事が理想
―金森さんは、本来あるべき人間のあり方に沿った考えを持っているんですね。
自分自身が旧石器時代食を体験したことで、そのほうが人本来の食性にかなっているんじゃないかなと思ったんです。プライス博士という人が、食生活と身体の退化をテーマに全世界的に農耕文化以前の狩猟採集民を調査しました。
狩猟採集民はどういう身体的な特徴があるのか。それは、純粋な狩猟採集民で野菜を一切食べない民族は歯も顎もしっかりしているということでした。ところがやがて、西洋文明と交流することで野菜とか小麦などを食べ始めると歯がガタガタになって奇形になっていくんです。現代人はたぶん今から400万年前の人からみると顎の形が小さいんですよ。
また、矯正が必要なヒトはサバンナでは死ぬんです。歯並びが完璧ではなく親知らずの歯も完璧ではない―−食生活と進化ということでプライス博士が全世界を旅する中で発見したんです。
もともと、人は何を食べてきたのかという話で、要は本来、農耕文明で存在しなければ農業を行っていないから、野菜なんて食べなくても生きていけていたのです。骨が主食なんです。骨猟仮説、骨髄主食仮説などといいます。
かつては人間は骨が主食だったんです。肉が主食だとライオンに襲われるし、ハイエナは残りの肉を食べる。だから全てが食べられたあとの骨を石で砕いて、食べるというのが主食だったんです。骨というのは缶詰と思ってください。
石で骨を割って中の骨髄を食べます。骨髄主食仮説というんですが、石が出てきたから骨髄主食でまず間違いないと思います。 (参考:https://phys.org/news/2019-10-prehistoric-humans-ate-bone-marrow.html)
その骨の中の骨髄を食べるために骨を保存しておけばいい。実際、最近でてきた証拠で旧石器時代の初期の人々が動物の骨を最大9週間保存してから食べたことが分かっています。
それが缶詰のように9週間も骨髄を保存してくれるからからそれを割って食べればいい。骨は肉より栄養があるかという問題が今度出てきますよね。結論からいうと、肉より骨は栄養があります。では、人間にはなんで奥歯が臼歯なんだと。よくマクロビ(穀物や野菜をペーストしたもの)派の人たちが「野菜を食べるための臼歯だ」というけど、そうだとしたら犬歯が必要ないんです。
結局、歯では結論がつかない。ではなぜ臼歯があるかというと、骨を食べてみるとわかりますけど、20分ぐらいすりつぶしたら海苔状になるんです。どんな骨でも海苔状になります。普通に臼歯で食べられます。
島泰三という人類学の先生が出した骨猟仮説、ボーンハンティング仮説、骨髄主食仮説についても興味のある方は調べてみて下さい。結論、骨は肉よりも栄養もあるし、カロリーもあるんです。(※中公新書『親指はなぜ太いのか』 島泰三著(2003)を参考)
―次回は、腸の観点から、人間が食べるべきものを伺います。
※個人の感想であり、効果・効能を示すものではありません。
(提供:THE OWNER)