◉富裕層が移住する理由② 財産の安全保障


富裕層が投資移住を実行・検討する2番目の理由ですが、「財産の安全保障」を挙げる富裕層が43%いました。
現在中国内の資本市場が低迷しており、国内資本のフローが制限されています。また中国内での地域間の投資政策が不透明などの要因が重なり、多くの資産を保持している企業は、投資の方向性と目標にズレが生じており、理想的な発展速度と利益を維持することが困難な状況にあります。

よって、海外に目を向けて、資産を増やす方法を模索する企業オーナーが増えているようです。

参考: SHSZ300:IND 上海/シンセン CSI300指数(Bloomberg)


◉富裕層が移住する理由③ より高い生活水準


現在、中国は経済発展著しいですが、社会や人文的な環境は未だ発展途上であり、経済力のある人は法律制度が整った環境の中でより高い生活水準を求めています。

それは例えばきれいな空気、安全な食品、健全な社会保障制度、公共サービスの向上、移動の制限なく便利な観光旅行などを享受できるということです。
また、一人っ子政策の影響もあり、より多くの子供が欲しいという理由で海外に移住している富裕層も存在します。


◉投資移住について中国内での意外な受け止められ方


中国の富裕層と知的エリート層の投資移住によって、大量の資産が海外に流出しました。2009年だけでも3000人の富裕層がアメリカやナダに投資移住をし、彼らの総投資額が80億元(約1270億円)を超えています。

(編集注:参考までに、外務省の 海外在留邦人数調査統計 によりますと2009年の日本人の海外居住者増加数は約6000人になります。)

また2009年に統計した人民元が人気の地域の投資額を加えれば、移民によって流出した資金は100億元(約1588億円)を超えています。このような「人」と「資産」の海外入出の現象によって、多くの人々が中国の持続的な発展力を心配しています。

しかし、その一方で、「富裕層が移住したからと言って、全ての資産が海外へ流出するわけではない。」という見方も中国内には存在します。すなわち、富裕層と知的エリート層の潜在的な投資能力が、海外で力を発揮しより大きな力となって中国内へ回帰するだろうという予測です。また、多くの企業の経営者が移住を行い外国籍になろうとも、彼らの企業は依然として中国国内にあります。従来より、海外在住の中国人は“華僑”と呼ばれ、海外で稼いだ資金を中国に還流させてきたという話は聞いた事がある方も多いと思いますが、いま海外に移住している中国人、すなわち新しい華僑たちも同じように海外で稼いだ資金を中国に還流させる可能性が高いと、中国本土では考えられているということです。
これらにより、中国富裕層の移民は資金の流出と必ずしもイコールであるとは言えないという意見もあるのです。

実際に、以前とは異なる名義で新たなチャネルを通じて、移住した富裕層の内の3分の2の近くが再び中国国内に投資を行っているという統計も存在します。中国の経済成長率は依然として高く、移住先国家での投資と中国国内への投資の善し悪しを再分析し、多くの移住者が中国内への再投資を行っているようです。

以上、中国での富裕層の海外移住と中国内での受け止められ方についての記事をお届けしました。
読者の方からのご要望を伺いつつ、中国関連の話題をお届けしたいと思います。

BY S.T

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