人間の触感を、システムで再現できるデジタル技術「ハプティクス」が注目されています。ハプティクスは、ロボットの正確な遠隔操作やエンターテインメントの可能性を大きく広げています。そして将来的には医療や介護分野でのさらなる活用が期待されています。
ハプティクスという技術は触覚情報を人工的に再現するもの
ハプティクスとは、人間の触覚情報を人工的に再現する技術やシステム自体を指します。触覚は、視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚の5感の1つですが、人間の感覚はとても優れており、感覚をテクノロジーによって再現することはとても困難なことです。
従来、5感のうちで情報を人工的に再現できているのは、視覚と聴覚でした。視覚はテレビやカメラ、ビデオカメラによって、人間が見ているものを他の人に人工的に再現して伝えることが可能となりました。
聴覚は、電話やラジオによって、いまそばにいるような感覚で、人間の声を他の人に伝えることが可能となっています。さらに、スマートフォンでビデオ通話を利用することで、リアルタイムで視覚と聴覚を満たした感覚を感じられるようになっています。
そして、今回のテーマであるハプティクスは触覚を再現する領域なのです。現在、視覚や聴覚を、スマートフォンをとおして人工的に再現されることに対して、特別な意識を持っている方はいないでしょう。いずれ、ハプティクスが普及すれば、人工的に再現された触覚に対しても違和感を持たない時代が来るかもしれません。
応用範囲はエンターテインメント、作業ロボットの遠隔操作、教育など幅広い
ハプティクスの技術やシステムは、エンターテインメントや作業ロボットの遠隔操作、教育など幅広い活用が進んでいます。すでに研究開発が実施され、実用化されているシステムもあります。
たとえば、iPhoneなどのスマートフォンの中には、平面である画面を押したのに、まるでボタンを押したような触覚情報を人工的に再現するハプティクスの技術を実用化しているモデルが存在します。
もう少し複雑な触感を実現するためのハプティクスでは、人間の手や指の先など、触感を感じさせたい場所にデバイスを装着し、触覚情報を伝えます。デバイスには、触覚と同様の感覚を再現するための振動を起こすモーターや、特殊素材が掲載され、微妙な形状や感触をコンピューターによって情報化し、調整しながら人間に伝えていきます。さらに、高度なハプティクス技術として、超音波を使うことで、空間に圧の感覚を創り出すシステムも開発されています。
注目は慶応大学・大西教授の「リアルハプティクス」
ハプティクスの中でも注目されているのが、慶応義塾大学大西浩平教授の「リアルハプティクス」です。リアルハプティクスは、人間が日常的に行っている作業における触感を、人工的に再現できるシステムです。
たとえば人間が物をつかむときの触感には、物の置かれている位置を制御する感覚と、物を上手につかむ力加減を抑制する感覚が必要です。リアルハプティクスは2つの制御が両立できるシステムなのです。
リアルハプティクスのデバイスによって、物をつかむだけではなく、押したり、撫でたりすることで、実際に自分の目の前にない物体を実際に触れているように感じることができます。リアルハプティクスによって実現できる事例の1つが、ロボットの遠隔操作です。ロボットに装備されたリアルハプティクスのデバイスが、作業に必要な触感を人間の手に伝えることで、作業の確実性を高めます。
リアルハプティクスは、特殊なスキルや経験を必要とする医療分野の遠隔手術や、介護分野の遠隔作業への応用が進んでいます。
医療分野など中心に、5兆円の市場規模が見込まれている
リアルハプティクスの市場規模は、2025年時点、日本国内だけで5兆円の規模になるであろうと予測されています。応用が期待される医療や介護分野においてはより精密なシステムの開発が必要でしょう。また、リアルハプティクス普及のスピードアップのためには、費用対効果を考え、企業が導入して投資対効果を得られる程度の低コスト化の実現も課題となります。(提供:JPRIME)
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