不動産投資は収益の安定性が魅力ですがすべてのケースで大成功を収めるわけではありません。中には現金収支が赤字になり他の収入から補てんせざるを得なくなることもあるでしょう。空室対策や賃料の値上げなどの対策をしても改善しない場合は、物件を手放すことも有力な解決策の一つです。

本記事では通常の売却が困難な状況で用いられる「任意売却」の流れについて説明します。

任意売却とは

不動産投資,任意売却,流れ
(画像=ngad/stock.adobe.com)

任意売却とは、担保不動産を売却する方法の一つです。売却予定額がローン残高を下回ったときなど金融機関の承諾を得たうえで担保物件を売却する手続きです。物件の市場価格がローン残高を上回っていれば任意売却にはならず一般的な売却手続きになります。またローンの返済に行き詰まったとき最後に行き着くのは競売です。

競売は裁判所を通じた特殊な市場で売却するため、売却価格が低くなりがちな問題があります。任意売却のメリットは、一般的な売買市場を通すため競売よりも高い価格かつ早く完了しやすいところです。大まかには以下のような流れになります。

  • ローンの返済を滞納すると金融機関から一括返済を迫られる
  • その前後に不動産会社に物件の売却価格を査定してもらう
  • 次に金融機関と交渉して承諾をもらい不動産会社の仲介によって売却する
  • 最後に残債(残ったローン)を処理する

資金不足を金融機関に相談する

一般的に不動産投資の収益が悪化したときオーナーは空室対策や賃料の値上げなどの対策を行います。それでも効果が出ずローンの返済が苦しい場合は、返済計画の見直しを検討してみましょう。売却を考える前に金融機関へ現金収支が赤字となっている現状を相談します。うまくいけば毎月の返済額を無理のない範囲に変更してくれる可能性があるでしょう。

このように返済の猶予や返済計画の見直しをリスケ(リスケジュール)といいます。返済を延滞して督促を無視し続けるよりも金融機関から見れば誠実な態度といえるでしょう。任意売却を考えている際にも事前にしっかりと相談しておいたほうがよい印象を与えるはずです。収益悪化の原因は一時的な退去の続出かもしれません。

近い将来に開発などで需要の増加が見込まれることもあるでしょう。収益が回復する見込みがあればリスケはその場しのぎではなく長期的に有効な対策となります。

ローンを滞納する

「リスケをしても回復の見込みがない」「リスケに対応してもらえない」といった場合、売却が有力な選択肢になります。給料収入などで赤字を補てんしても近い将来に行き詰まる可能性が高いでしょう。売却の決断は早いほうが浅い傷で済みます。売却を考えるのであればこの時点で任意売却の実績を持つ不動産会社に相談することがおすすめです。(もっと早くても構いません)

不動産会社は金融機関への対応など経験にもとづいて指導してくれるでしょう。もし不動産会社に査定してもらいローン残高を上回る価格で売れる可能性が高いのであれば問題なく売却できます。任意売却を前提にする場合は、まずローンを滞納することが必要です。多少の家賃収入があるからといって一部を支払うことはしません。

なぜなら金融機関に「(売却するまでもなく)まだ返済が可能である」と判断されてしまうからです。

競売の手続きが行われる

ローンを数回滞納すると金融機関から督促状だけでなく「期限の利益喪失通知」が送られてきます。簡単にいうと「ローンを一括返済してください」というお知らせです。ローン契約には「期限の利益喪失条項」があり滞納など一定の条件に当てはまると一括返済を求められるようになっています。この契約内容を実現するための通知が「期限の利益喪失通知」なのです。

金融機関によって異なりますが約3~6ヵ月滞納すると通知されます。期限の利益喪失通知は競売の下準備といえる手続きです。滞納によって分割返済という期限の利益は失われ不動産オーナーは多額の支払いをしなければなりません。しかし競売をするような状態ですので支払うお金がない状況です。

そこで金融機関(一般的には保証会社ですが、以下金融機関と記します)は不動産に付けた担保権を実行することで物件を売却し返済資金にあてます。これが競売です。競売による売却が決定するまでが任意売却のタイムリミットです。以下のような流れを経て約半年後に第1回入札が行われます。

  • 金融機関による申し立て
  • 物件の調査
  • 競売を行う旨の発表(公告)
  • 入札期間

一棟もののマンションは部屋数が多いので調査に時間がかかりさらに長いスケジュールになる可能性があります。

不動産会社と協力して金融期間に任意売却の許可をもらう

ローン滞納の前後に話を戻します。相談を受けた不動産会社は査定を行い売却価格の見当を付けこの金額をもって金融機関に交渉をします。なぜなら不動産に付いている担保権を解除してもらえなければ売却できないからです。第2順位、第3順位の抵当権者がいればすべて承諾をもらいます。このときに「ハンコ代」と称していくらかのお金を支払うことになるでしょう。

売却予定価格と残債のバランスや金融機関の方針によっては、承諾を得られないこともあります。しかし任意売却は競売よりも高く売れやすいため、金融機関にとってもメリットがあり断る理由は基本的にないといえるでしょう。

売却が成立する

任意売却は通常不動産が売買されるときと同じように売り出されます。少し違うのは瑕疵担保(2020年4月からは契約不適合責任)免責を条件とすることがほとんどという点です。「困窮して売却せざるを得なくなった売主に責任を追及するのは酷」ということでしょう。

残債の処理はどうなる?

任意売却をすると担保を外されたローンの一部が残り処理方法は状況によって異なります。収入や資産が十分あれば引き続き分割して返済することになるでしょう。返済先が金融機関から債権回収会社(サービサー)に移り返済額も数%程度に圧縮されることもあります。なぜならサービサーが回収困難と思われる債権を金融機関から格安で買い取るからです。

自己破産という手段もあります。申し立ては誰でもできますが免除される金額は裁判所が決定するため、必ずしも借金がすべてなくなるわけではありません。破産すると「一定期間、弁護士や保険会社の外交員になれない」などデメリットもあります。また自己破産しても税金は免責されません。固定資産税や住民税などの滞納があると破産後も支払いに苦しむことになります。

そのため税金は払えるときにできる限り払っておくべきでしょう。

任意売却を考えているなら早く不動産会社に相談すること

任意売却は物件の市場価格がローン残高を下回るときに競売よりも迅速かつ高額に売る手続きです。ローンを滞納してから競売が成立するまでに売却を完了しなければならないためスピード勝負となります。不動産投資の収益に不安を感じたらなるべく早く不動産会社や金融機関へ相談するとよいでしょう。(提供:YANUSY

【あなたにオススメ YANUSY】
副業ブームの日本!サラリーマン大家になるなら覚えておきたいこと
2019年以降の不動産投資は「コミュニティ」が欠かせない
賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
不動産所得での節税に欠かせない必要経費の知識
賃貸管理上でのトラブル対応術とは?