新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにビジネスやライフスタイルが大きく変わるといわれおり賃貸経営も例外ではありません。新型コロナ後の賃貸ニーズの変化に影響を与えそうな要素は「テレワークの増加・浸透」です。具体的にどのようにニーズが変わりどんな具体策があるかを考えます。

中小企業の67.3%、大企業の97.8%がテレワークを採用

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(画像=Girts/stock.adobe.com)

2020年6月17日に東京商工会議所が公表した「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」によると緊急事態宣言発令期間のテレワーク実施率は67.3%(前回調査同年3月比+41.3ポイント)となりました。新型コロナによってテレワークが一気に普及したことが分かります。一方経団連が2020年4月に実施した調査によると2020年4月中旬ごろのテレワークや在宅勤務の導入割合は97.8%でした。

新しい働き方に合わせて雇用形態を改革する大企業が相次いでいます。テレワークの高い普及率を見る限りテレワークの普及は一過性ではなく長期的な潮流となる可能性が高そうです。次項からは「テレワーク浸透」という時代の流れを賃貸経営に活かす方策を考えていきます。

テレワーカーの最大の不満は仕事に集中できるスペースがないこと

株式会社リクルート住まいカンパニーが2020年4月に行った「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態調査」でテレワーク実施者に対して不満を聞いたとところ以下のような結果でした。

不満の内容単身者既婚(※)
オンオフの切り替えがしづらい37%30%
仕事専用スペースがない32%39%
仕事用のデスク/椅子がない28%28%

これらは別々の回答になっていますが、その根底にある共通点は「仕事に集中できるスペースがないこと」です。この不満を賃貸経営に生かす具体策を考えてみましょう。例えば築古でも部屋数がある物件は仕事部屋を設けやすいため、今後見直されるか可能性があります。テレワーカーのニーズを取り込みやすいよう和室の部屋をオフィススペースとして利用しやすいようフローリングに変更したりマイソク(不動産広告)に「テレワークにもおすすめ!」といったキャッチフレーズを打ち出したりするのも一案です。

また納戸のある賃貸住宅であればそこを仕事場に使えるようリフォームをして競合物件と差別化する手もあります。さらに部屋数の少ない物件やワンルームでも工夫次第でニーズの取り込みが可能です。リビングや居室の一角に間仕切りを設置するだけで仕事とプライベートの切り替えがしやすくなります。同調査では「今後も引き続きテレワークを行う場合、今の家から住み替えを検討したいか」という問いもありました。

「はい」と回答した人は賃貸在住者の3割という点も見逃せません。「テレワークがしにくいから退去する」といった考え方の人が一定数いることは賃貸経営をしていくうえで覚えておきたい事実です。

無料Wi-Fiの設置もテレワーク需要にプラス ただし注意点も

他の不満としては「ネット環境が悪い」が18%であったため現在無料Wi-Fiを設置していないアパートやマンションはこれを機に採用をする選択もあります。ただしせっかく無料Wi-Fiを設置しても通信速度が遅ければ入居者の満足にはつながりません。設置を検討するときは、契約料の安さだけでなく一般的なWi-Fiと比較して十分な通信性能があるかについてもチェックしたいところです。

都心とアクセスの良い郊外のニーズが高まる期待

テレワークの普及は、賃貸住宅の仕様だけでなく立地のニーズにも影響を与える可能性があります。テレワーカーはオフィスに毎日通う必要がありません。そのため豊かな自然環境があり広めの部屋が借りやすい郊外が見直されてきそうです。この流れは、郊外に賃貸住宅を所有しているオーナーにとってもチャンスといえます。

ただしすべての郊外がテレワーク需要に応えられるわけではありません。定期的に都心の会社に通う必要があるビジネスパーソンにとっては「都心とアクセスの良い郊外が条件」となるでしょう。首都圏のテレワーカーに人気のエリア例として三菱UFJ信託銀行グループが運営する「住まい1(ワン)プラス」のレポートでは以下の3駅などを挙げています。

  • 流山おおたかの森駅(千葉県流山市)
  • 春日部駅(埼玉県春日部市)
  • 長津田駅(神奈川県横浜市)

これらの3駅に共通するのは複数路線が利用できるターミナル駅ということです。いずれにせよテレワークの普及は賃貸ニーズの転換点でもあります。特にメイン入居者がビジネスパーソンの物件を所有するオーナーは、この変化にアンテナを張って次の時代も安定経営ができる環境を作っていきましょう。(提供:YANUSY

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