グローバルで不動産サービスを展開するCBREが実施した「オフィステナント緊急アンケート調査」は、新型コロナ下におけるテナント企業の先行き予測を知るうえで非常に役立つレポートです。本記事ではこの調査の中でも特に気になる部分にフォーカスし、補足説明を交えながら今後のビル経営のヒントを考えます。
2020年下期は「経営環境がさらに悪化する」という企業が大半
2020年3月31日〜4月10日にCBREが行った「オフィステナント緊急アンケート調査」は317社を対象にしたもので、回答企業の所在地は東京23区が約6割、地方都市が約4割です。はじめに、オフィステナント企業の経営環境の先行き予測に関するアンケート結果から見ていきましょう。「2020年上期と比較して2020年下期の事業環境はどうなると予想していますか?」の質問に対しては、以下のような回答結果となっています。
- 悪くなる64%
- 良くなる12%
- ほぼ同じ24%
「悪くなる」と「良くなる」の比率はほぼ5:1で悪くなるという意見が圧倒的大多数を占めています。新型コロナウイルスの感染が世界的に流行した2020年上期も経営環境が厳しい企業は多数ありましたが、「厳しさが本格化するのはこれから」という見方が多いことが分かります。
「厳しい経営環境は2021年後半以降まで続く」と見るエコノミストが大半
テナント企業の厳しい経営環境は今後どれくらい続くのでしょうか。2020年5月に内閣府がエコノミスト23名に対して「GDPが消費税前までの水準に持ち直すのがいつになるか」のヒアリングを行いました。ヒアリングの中では「2021年後半以降」という意見が最も早く2022~2023年まで厳しい経済状況が続くと予測しているエコノミストも約6割います。
テナント企業の経営環境が厳しいということは、当然ビル経営にとっても苦しい局面になる可能性があるということになります。今後、テナント企業の倒産や移転の増加などが発生することを想定しながら経営計画を練ることが大切でしょう。
テナント企業の約半数が2020年は減収すると回答
冒頭で解説したCEREのアンケート調査では、テナント企業の分野別の分析も行っています。こちらも今後のビル経営を先読みするのに役立つ情報です。「2020年通年で売上高は前年に比べて何%の増収または減収を予想されますか?」の設問に対して全体の51%が「減少する」と回答しました。ただし分野別に見るとかなりの差がある部分も見逃せません。
最も悲観的な予測の「サービス」分野では増収13%・減収58%です。一方最も楽観的な予測の「テクノロジー・通信」分野は増収19%・減収41%と見込まれています。また「卸売」「運輸・物流」分野は前年よりも増収する企業の割合が0%、つまり「1社もいない」という大逆風の状況です。こういった結果に基づくと先行きの予測は分野によってかなり変わってくることが分かるでしょう。
そのため「所有するビルのテナント企業はどんな分野が多いか」という点も、今後のビル経営を考えるうえで参考になりそうです。
「アフター家賃支援給付金」を意識した資金繰り・経営計画を
2020年度第2次補正予算で「家賃支援給付金」が成立したため、直近ではテナント企業の家賃滞納リスクは低いと考えてよいでしょう。この制度では、売上が急減した企業に対し直近の家賃の最大6ヵ月分(法人は最大600万円、個人事業主は最大300万円)が給付されます。ただし展開する店舗数が多い場合や新型コロナウイルスが長期化した場合はテナント企業の倒産・家賃の滞納リスクが高まるでしょう。
本記事の前半で触れた通り、テナント企業およびエコノミストともに大半が今後の経済(経営)環境は長期的に悪化すると予測しています。そのため「アフター家賃支援給付金」を意識した資金繰りや経営計画を早めに準備しておくのが賢明です。(提供:ビルオーナーズアイ)
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